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推す側
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ポケットに千円札をねじ込もうとする私と逃げ惑う高峯くんの攻防は、15分ほど経って疲れ果てた高峯くんの「ストップ」により終わった。
ハアハアと肩で息をしながら額から首筋に伝う汗を乱暴に拭いこちらを睨む彼は、なんというか、ごちそうさまです。存在が性的。
「なんで僕はこんな女の子をかわいらしいだなんて思ったんだろう。屈辱だ、こんな……男の僕が三井さんより息切れしてるのも嫌だ、クソ、なんなんだ今日は……」
「私は推しを眺めるために毎日走り込みをしてるし、栄養バランス完璧なご飯を自分で作ってるし、推しに何か聞かれたときのために全教科学年で10位以内には入ってるし、将来は弁護士になって法的に守ってあげるつもりだからね」
何の努力もせずに推しを推そうだなんていうのは推しへの冒涜だと思う。大事なことは、「この人が推してる人なら素晴らしいんだろうな」って言われるような、「推す者」としての心構え。そのために私は日々精進しているつもりだ。
「まあ表に出さずに「元からこれです」って言うスタンスが一番かっこいいんだけどね。自分で頑張ってるって言いたくなるうちはまだまだだなあ」
ああ、推しの時間を奪ってしまった。途端に申し訳なさがこみ上げる。お金はうけとってもらえなかったけど、しょうがない。
今日はごめん、ときちんと頭を下げて謝って、家に帰ろうと踵を返……すことはできなかった。推しが私の腕を掴み言葉を紡ぐ。
「今日色々話して、途中で正直もう関わるまいと思ったけど、ヤバいところいっぱいあるけど、でも三井さんの努力とか僕への想いは十分伝わったよ。僕にはやっぱりよくわからなかったけど、ありがとう。防犯ブザーとはいえちゃんとホワイトデー返すからね!」
そう言い終えると、高峯くんは恥ずかしそうに公園から足早に去っていった。傾いた夕日が彼を照らして神々しい。
かわいさでぶん殴られて少し泣いたし、その日の日記は12ページにもなった。
嗚呼、バレンタインとはかくあるべし。
ハアハアと肩で息をしながら額から首筋に伝う汗を乱暴に拭いこちらを睨む彼は、なんというか、ごちそうさまです。存在が性的。
「なんで僕はこんな女の子をかわいらしいだなんて思ったんだろう。屈辱だ、こんな……男の僕が三井さんより息切れしてるのも嫌だ、クソ、なんなんだ今日は……」
「私は推しを眺めるために毎日走り込みをしてるし、栄養バランス完璧なご飯を自分で作ってるし、推しに何か聞かれたときのために全教科学年で10位以内には入ってるし、将来は弁護士になって法的に守ってあげるつもりだからね」
何の努力もせずに推しを推そうだなんていうのは推しへの冒涜だと思う。大事なことは、「この人が推してる人なら素晴らしいんだろうな」って言われるような、「推す者」としての心構え。そのために私は日々精進しているつもりだ。
「まあ表に出さずに「元からこれです」って言うスタンスが一番かっこいいんだけどね。自分で頑張ってるって言いたくなるうちはまだまだだなあ」
ああ、推しの時間を奪ってしまった。途端に申し訳なさがこみ上げる。お金はうけとってもらえなかったけど、しょうがない。
今日はごめん、ときちんと頭を下げて謝って、家に帰ろうと踵を返……すことはできなかった。推しが私の腕を掴み言葉を紡ぐ。
「今日色々話して、途中で正直もう関わるまいと思ったけど、ヤバいところいっぱいあるけど、でも三井さんの努力とか僕への想いは十分伝わったよ。僕にはやっぱりよくわからなかったけど、ありがとう。防犯ブザーとはいえちゃんとホワイトデー返すからね!」
そう言い終えると、高峯くんは恥ずかしそうに公園から足早に去っていった。傾いた夕日が彼を照らして神々しい。
かわいさでぶん殴られて少し泣いたし、その日の日記は12ページにもなった。
嗚呼、バレンタインとはかくあるべし。
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