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ヒーラーと言うお仕事

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「ヒーラーでございますか?えーと私も実際にお会いしたことは無いですが、一般的には治癒能力を持っていてそれを使って治癒するお仕事をしている人……ですかね。確か王宮にいると思いますが。」

お医者さんみたいな事かな?
確か……そうだ!思い出した!
夢で私にヒーラーになれって綺麗なお姉さんが言ってたんだよね。
妖精の加護だかなんだか…ってか私元の世界に戻れないって言われたよね?
となると…この世界でなんとか生きてく方法を見つけなきゃよね?
って事は…
「ユーリ様?大丈夫ですか?」
「え?あっ大丈夫よ。ごめんなさい。」
急に黙り込んでしまったから心配したみたい。

「私ヒーラーになれるかな?」
小さくつぶやく。
「ユーリ様?」
サリーには聞こえなかったみたい。
多分サリーの反応だとヒーラーは稀な存在みたいだし…出来ればもう一度妖精に会って聞きたいわね。



「お勉強続きお願いします!」

思考に一区切りつけたところでサリーに次をお願いする。
そうしてサリーに学ぶ。
この国には王様がいて王位継承権を持つ王子が3人いる事。
アルは王立騎士団所属で時々王子の護衛などをされている話。アルの剣さばきは有名らしい。
イケメンで剣も強くて爵位もあって…全て持ってるのね…。


そうその爵位!
貴族には爵位が与えられていて公爵伯爵子爵男爵の順だそう。因みにアルのお家は伯爵だって!
この辺一帯を管理しているそう。改めて……凄いお家に拾われたのね。
そして地の力が強いアースは緑豊かで食べ物が美味しいと言うこと。これ重要ね!

いくつか鉱山があってそこからは金鉱、銀鉱、鉄鉱が採掘されているとか……すごいね。
アルの家は銀鉱を1つ管理しているらしい。

数年前までその鉱山を巡って隣の国と争いがあったんだって!
去年やっと平和条約を結び安定した治安だそう。
ただ、まだ争いの影響は全て無くなったわけではないらしい。
国境付近はまだ復興しきってないとか。
怪我人もいるのかしら?
「サリー、怪我人の治療とかは充実しているのかしら?」
「治療ですか?多分王宮からヒーラーも行ったと思いますが…私はスタンリー家領地から出ていないので詳しいことは……」
「ごめんなさいね。つい気になってしまっただけよ。」
「ユーリ様、今日はこの辺にしておきましょうか。お昼の用意をしてきますね。」
「ありがとう。サリー。わかりやすく解説してくれてよかったわ。」
そう言うとサリーは笑顔で部屋を出ていった。
部屋に1人になるととりあえず精油が気になる私。
今日は何を作ろうかしら?
そう言えば、アルは剣さばきが有名って言ってたような……って事は、剣の練習とかするって事よね?
筋肉痛とかにならないかしら?
疲労した筋肉に効くマッサージオイルを作ってみようかしら?
ひまし油に老廃物を排出してくれるジュニパーベリーと筋肉疲労にローズマリーかな?
「うん!香りもいい感じね。」

作ったオイルの香りを確認する。
そして顔を上にあげた時に、視界にヒラヒラする布が目に入った。

「えっ?あっ夢で見た妖精?」
「そうよ。あなた私をすっかり忘れていたでしょ?フィーリーよ!」
妖精はちょっと拗ねたような顔をしている。
夢では神々しい感じだった気がするけど…今はちょっと可愛らしい雰囲気です。
「フィーリー、ごめんなさいね。疲れきっていたから寝入ってしまっていたみたい。さっき思い出したところよ。」
「思い出してくれてよかったわ。じゃないと話が進まないじゃない。せっかくエルフの加護を与えたのに、気付いてないんじゃ宝の持ち腐れよ!」
フィーリーは意外とキツいこともおっしゃるのね。
「そうそう、その加護だけど、具体的な事がサッパリわからないのよね。」
「ユーリあなた……もう気付かずに使ってるわよ。その精油を使ってね。」
精油?あ~そう言えば精油の効能が思ったより強いって感じたっけ?
「知らないで使ってるから大した事してないけど、これからは違うわよ!ちゃんと理解して使うと治癒効果も全然違うから。」
「え~それって凄いことじゃないですか!」
「今気付いた?」
フィーリーはちょっと得意そうに言う。
「でもさ、私これからこの世界でどうしたらいいのかな?あなたに間違って召喚されて、治癒能力を与えられたけど…そもそもあなたは私にどうなって欲しいの?」
「間違って……って表現はちょっと痛いけど…元々この国に一定数のヒーラーが必要なことは確かなんです。今いるヒーラーはエルフの長の加護を受けた方たちなんですが、先の争いで疲弊してしまっているんです。エルフの長も同様です。私は長の娘ですが…まだ力が不安定なんです。それでも何か力になりたくて……召試しに喚魔法でヒーラーの素質がある者を召喚しようとして召喚されたのがあなたです。違う世界に呼ぶ訳ですから、変化を求める心の持ち主と言うキーワードがあってあなたが召喚されたというのが今回の召喚の流れです。」
と言うと……私は来るべくしてここにいるのかしら?
「これから私は治癒能力を使って働けばいいの?でも……公表してしまうと王宮に行かなければならないのでは?」
ふと浮かぶ疑問を口にする。
「そうですね。公式に私が召喚したならそうなのですが…私も秘密裏に行った召喚ですので…しばらくは内緒にしておきましょうかね?」
ニコニコしながらフィーリーが提案する。
「つまり今回の召喚はフィーリーにとっても都合が悪いのかしら?」
フィーリーはちょっとバツが悪そうだ。
「私も状況がわからない中ここから離れるのは嫌だし、アルやサリー、マリーと今離れるのは望んでいないから。お互いこの状況のまましばらくいましょう?」
そう言うとフィーリーは安心したようだった。
「あなたのことをアルやサリー、マリーには話してもいいかしら?私色々助けられているから出来れば話したいんだけど。」
フィーリーは少し考えてから
「あなたにも協力者が必要よね?ただ、多くの人に知られるということは…王宮に行かなければならなくなるリスクが高いってことだから……慎重にね。」
「大っぴらには出来ないけど、その、ヒーラーとしての仕事はして欲しいってのはフィーリーの希望?」
意思確認は必要よね?
「そうですね。まだ慣れていないでしょうから徐々に加減を覚えていってください。ユーリの場合精油との融合で治癒する特殊な能力ですので、普通のヒーラーよりも疲労は少ないようですが…無理はし過ぎないようにお願いします。そろそろ行きます。」
そう言うとフィーリーが光だした。
「わかった。気を付けます。フィーリーと会いたい時はどうしたらいいの?」
「次は名前を呼んで下さい。頃合いを見てまた来ますわ。」
そう言って光の中へ消えていった。

そしてちょうど光が収まった頃、部屋のドアが開きサリーとマリーがお昼の用意を持って入ってくる。

「ユーリ様お待たせしました。今日はお野菜たっぷりのスープと焼きたてのパンです。」
とサリーが説明してくれる。
「ハーブティーです。」
マリーがティーカップに注いでくれる。
少し前の出来事が夢だったんではないか?とそんな気分になっていた。ハーブティーを1口飲む。
「消化を助けてくれるレモングラスね。」
「さすがユーリ様!すぐにわかってしまいますね。」
マリーがちょっと興奮気味に褒める。
「実は、実家に今朝帰らせてもらったのですが、帰りに先日ユーリ様が行かれたお店に寄ってハーブティーを購入してきたんです。え~とお礼を込めて……」
「マリーありがとう!嬉しいわ。今朝マリーの顔を見ないと思ったら実家に行っていたのね?もっとゆっくり行ければもっとよかったのにね…」
「いえ、ちょっと緊急で呼ばれたので…」
マリーの表情が曇っている。
「実家で何かあったの?」
「実は……原因不明の熱と腹痛で母が寝込んでしまったようなんです。それで弟が心配で来たので……」
「それは大変!お医者様には見てもらったの?」
「それが……母が大丈夫だからというので……」
マリーは困った顔をしている。
「お母様は水分は飲んでる?腹痛と言ってたけど吐いたり下痢は?」
「え~?言った時に何も口にしたくないと言っていました。」
それはちょっと不味いわね。お腹に効くオイルを調合して……経口補水液(もどきだけど)を作って……
「マリー、ちょっと支度したらお家に連れて行ってくれる?」
「え?ユーリ様を?
「そうよ。症状を聞く限りだと感染性胃腸炎じゃないかと思うけど、適切な処置をしないと危険なのよ。」

ホホバオイルにペパーミントとレモンを入れる。
経口補水液は……この世界に無さそうなので…お湯にお砂糖と塩とレモンを絞って混ぜる。
いくつか精油も持って支度完了!
「さて行きましょう!」
「マリー、ユーリ様のご好意に甘えましょう。」
サリーが声掛けしてくれる。
「馬車の用意、出来ていますので行ってらっしゃいませ。」
サリーったらそこまで動いてくれていたのね!

私たちは急いでマリーの実家へと急いだ。

マリーのお家は平屋のごく普通のご家庭のようだった。ちょっとほっとする。
家に案内されると……
「マリー!母さんが、母さんが声を掛けても目を開けないんだよ!」
血相を変えてマリーの弟らしい男の子が現れた。
「お母さんはどこにいるの?」
先に私が反応する。脱水で意識失ったのかしら?

部屋に入るとベッドに女性が蒼白な顔をして寝ている。
おでこを触るとかなりの熱が出ているよう。汗で服も濡れている。
「頭を冷やすものを持ってきて!それに体を拭くタオルと着替えも用意して下さい。」
お腹を触診する。圧迫知ると痛みがあるようで苦痛表情が確認される。
着替えとタオルが届けられる。
「マリーのお母さん、着替え失礼しますね。マリー、手伝って。」
服を脱がせて身体を清拭して新しい寝巻きに着替えさせる。
「ユーリ様上手ですね。」
マリーが驚いている。そりゃ、看護師ですから。
「ありがとう。マリー、私のポシェットとってくれる?」
中からオイルを取り出す。
手に垂らしてオイルをあたためたら、マリーのお母さんのお腹をゆっくりとマッサージしていく。
ゆっくりゆっくりのの字を書くように……
そして良くなるように心の中で願う。
しばらくすると蒼白だった顔色も赤みが指してきて血色が良くなってきたようだ。
呼吸も平静になってきた。
ゆっくりと目が開く。
「お母さん!気が付いた?」
マリーが声を掛けると
「マリー?さっき帰ったんじゃないの?」
と。多分もう大丈夫ね。
「はじめまして。マリーにお世話になっているユーリと申します。勝手に押しかけてしまってすみません。」
「お母さん、ユーリ様がお母さんを助けてくれたのよ!」
「あなたがユーリ様ですか!この度は大変お世話になりました。こんなところまで来ていただき感謝します!」
マリーのお母さんらしくテンションが似ているわ。
「何も召し上がっていないと聞いたので…このお水を少しずつ飲んで下さいね。」
と経口補水液もどきを渡す。
「ありがとうございます。」
お母さんの具合が良くなったようでほっとする。

これがきっと妖精の加護の力で、ヒーラーのお仕事なんだろうね。
改めて理解した。
元の世界に戻って看護師が出来ないなら……この世界でヒーラーも良いかもね!

部屋にはユーカリを芳香して置く。
「時々換気して下さいね。」

そう言ってマリーの実家を後にした。
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