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1話 林檎の木
シーラ、あなたも幸せに生きてね。
私のおばあちゃんが最期に私に言ってくれたことでした。私の名前はシーラ。おばあちゃんの後を継ぐ形で王妃様のサミラ様の侍女をしている者です。
王妃様の元で働くのは楽しいです。私の仕事はおばあちゃんの後を継いでいるおかげでかなり重要なもので、サミラ様の秘密の話を聞いたり、サミラ様の御着替えを手伝ったりと、王妃様のかなり近いところの役割を担っています。
サミラ様はおばあちゃんの2つ下の歳ですので、お年を召しています。以前よりお一人で出来ることは減って、歩くときも杖をついています。だから私は最近、サミラ様のお隣にずっといさせてもらっています、が……
(これって幸せなんでしょうか、おばあちゃん……)
いいや、幸せです。お金もたくさんもらっているし、私はどんくさくて先輩の皆さんもたくさん私に教えてくれるし、サミラ様は本当に優しくって大好きです。
だけど、だけどなんで涙が出てくるんでしょうか。今日は私の誕生日だから、サミラ様が、私の仕事をお休みにしてくださりました。
おばあちゃんもおじいちゃんも亡くなってしまって、私の両親はなんだかとても自由で、おばあちゃんが残してくれた屋敷には全然帰ってきませんので、私は広い屋敷で一人ぼっちです。私が小さいときは、小間使いがいましたが、私は一人になったので、もう辞めてもらったし。
「おーい、シーラさん! おいってば!」
二階の自室にいるのに、声が聞こえてきました。すごく大きな声。さっきまで、目のあたりがツーンと痺れていたのに、自然と口角が上がって背筋がまっすぐになります。
「チハル様。ありがとうございます。……あれ?」
エントランスの扉を開けたのに、閑古鳥。誰もいません。あれ、絶対にチハル様の声がしたのになあ、と辺りを見渡すと、二階の私の部屋の窓の近くの、クラブアップルの木の上で怯えているチハル様を見つけました。
「ふっ、ふふ、チハル様、ふふっ、また変なことをして降りれなくなったのですか?」
「う、うん。そうです……」
チハル様は長い足をジタバタさせてて何だか面白い。なんで木なんか登ったんでしょう。チハル様は知り合ったころはとても静かな方だったのに、どんどんユニークになっていって謎です。
「待っててチハル様。とりあえず私の部屋の方が貴方に近いから、二階から迎えに行きますね」
「……はい、待ってます。すみません」
私はついさっきまでの落ち込んだ私とは全然違います。軽やかに私の部屋に戻ると、カーテンをすぐに開いて、綺麗な顔に涙がにじむチハル様に手を伸ばしました。
「ごめんなさい、本当に助かりました……。シーラさんってば、全然出ないから、こうして林檎の木に登ってしまいました……」
「チハル様はいつも面白いですね。それに、私の誕生日の日に来て下さるのが嬉しいです」
「さっきから、様、様って……。やめてください、シーラさん。俺達ってそんな仲なの?」
「そんな仲ですよ。チハル様は国王の息子ではないですか」
「養子ですよ。それにね、俺。もうやめることにしたんです」
「やめるって……? どういうこと? 死ぬつもりなの?」
「いいえ、自由になろうと思うんです。俺だって、今の王の養子という立場が良いと思うけれど、異端になってしまったら俺みたいなのは反逆者だと思われるだろうけれど、俺はそれでも、やりたいことができたのですよ」
チハル様は、この国では珍しい、真っ黒でまっすぐな綺麗な長い髪を耳にかけながらこちらを見て、しまいにはウィンクまでしました。
「それでね、シーラさん。誕生日なのに、俺から2つお願いがあるんです」
「2つですか」
「ええ、そうです。まず1つ目は……あ、そうだ、準備をさせてください。シーラさんのお屋敷にはお風呂がありましたよね。お借りしてもよろしいですか?」
そういえば、チハル様は有無を言わせない所があるのでした。まだ「お願いを聞きます」なんて言っていないのに、チハル様は私の手を握ってお風呂場に向かうのでした。
私のおばあちゃんが最期に私に言ってくれたことでした。私の名前はシーラ。おばあちゃんの後を継ぐ形で王妃様のサミラ様の侍女をしている者です。
王妃様の元で働くのは楽しいです。私の仕事はおばあちゃんの後を継いでいるおかげでかなり重要なもので、サミラ様の秘密の話を聞いたり、サミラ様の御着替えを手伝ったりと、王妃様のかなり近いところの役割を担っています。
サミラ様はおばあちゃんの2つ下の歳ですので、お年を召しています。以前よりお一人で出来ることは減って、歩くときも杖をついています。だから私は最近、サミラ様のお隣にずっといさせてもらっています、が……
(これって幸せなんでしょうか、おばあちゃん……)
いいや、幸せです。お金もたくさんもらっているし、私はどんくさくて先輩の皆さんもたくさん私に教えてくれるし、サミラ様は本当に優しくって大好きです。
だけど、だけどなんで涙が出てくるんでしょうか。今日は私の誕生日だから、サミラ様が、私の仕事をお休みにしてくださりました。
おばあちゃんもおじいちゃんも亡くなってしまって、私の両親はなんだかとても自由で、おばあちゃんが残してくれた屋敷には全然帰ってきませんので、私は広い屋敷で一人ぼっちです。私が小さいときは、小間使いがいましたが、私は一人になったので、もう辞めてもらったし。
「おーい、シーラさん! おいってば!」
二階の自室にいるのに、声が聞こえてきました。すごく大きな声。さっきまで、目のあたりがツーンと痺れていたのに、自然と口角が上がって背筋がまっすぐになります。
「チハル様。ありがとうございます。……あれ?」
エントランスの扉を開けたのに、閑古鳥。誰もいません。あれ、絶対にチハル様の声がしたのになあ、と辺りを見渡すと、二階の私の部屋の窓の近くの、クラブアップルの木の上で怯えているチハル様を見つけました。
「ふっ、ふふ、チハル様、ふふっ、また変なことをして降りれなくなったのですか?」
「う、うん。そうです……」
チハル様は長い足をジタバタさせてて何だか面白い。なんで木なんか登ったんでしょう。チハル様は知り合ったころはとても静かな方だったのに、どんどんユニークになっていって謎です。
「待っててチハル様。とりあえず私の部屋の方が貴方に近いから、二階から迎えに行きますね」
「……はい、待ってます。すみません」
私はついさっきまでの落ち込んだ私とは全然違います。軽やかに私の部屋に戻ると、カーテンをすぐに開いて、綺麗な顔に涙がにじむチハル様に手を伸ばしました。
「ごめんなさい、本当に助かりました……。シーラさんってば、全然出ないから、こうして林檎の木に登ってしまいました……」
「チハル様はいつも面白いですね。それに、私の誕生日の日に来て下さるのが嬉しいです」
「さっきから、様、様って……。やめてください、シーラさん。俺達ってそんな仲なの?」
「そんな仲ですよ。チハル様は国王の息子ではないですか」
「養子ですよ。それにね、俺。もうやめることにしたんです」
「やめるって……? どういうこと? 死ぬつもりなの?」
「いいえ、自由になろうと思うんです。俺だって、今の王の養子という立場が良いと思うけれど、異端になってしまったら俺みたいなのは反逆者だと思われるだろうけれど、俺はそれでも、やりたいことができたのですよ」
チハル様は、この国では珍しい、真っ黒でまっすぐな綺麗な長い髪を耳にかけながらこちらを見て、しまいにはウィンクまでしました。
「それでね、シーラさん。誕生日なのに、俺から2つお願いがあるんです」
「2つですか」
「ええ、そうです。まず1つ目は……あ、そうだ、準備をさせてください。シーラさんのお屋敷にはお風呂がありましたよね。お借りしてもよろしいですか?」
そういえば、チハル様は有無を言わせない所があるのでした。まだ「お願いを聞きます」なんて言っていないのに、チハル様は私の手を握ってお風呂場に向かうのでした。
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