《用無し》と放り出された私と、過保護な元《聖騎士》様の旅路

望月 或

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44.まるで他人ごとのよう




「…………っ!?」

 リュウレイさんの言った言葉に、私はますます混乱します。

「……な、何を仰っているのでしょうか。わ、私は日本生まれの日本人で、母も日本人で……。ち、父は小さい頃に亡くなって、ずっと母と二人暮らしで――」

 口に出して、私の中の自分を整理します。

「……私の両親から聞いた話だが、シデン殿の奥方である蕾殿も、今から二十五年前に、異世界からこの世界に来たらしい」
「えっ!?」

 母さんが、シデンさんの奥さんっ!?
 しかも、こちらの世界に転移したことがあったなんて!?

「蕾殿は見たことのない服を着て、イーファス王国の門の前に倒れていたらしい。それを見回りをしていた、当時は二十七歳だったシデン殿が最初に発見したのが出会いだそうだ」

 今から二十五年前と言ったら、母は十七歳で、高校生です。見たことのない服なら、恐らくブレザーかセーラー服を着ていたんでしょうか……。


 ……あれ?
 ちょっと待って下さい、“二十五年”前って……。


「確か《勇者》も、初めて会った時の自己紹介で、『二十五年間《勇者》をやっている』と言ってました。そして、さっき会った時もそう言って……」
「そうなんだよ。《勇者》が召喚された時期が、蕾殿が発見された時期と被るんだ。恐らく、《勇者》召喚時に何らかの事故があり、蕾殿は巻き込まれて飛ばされてきたんだろうとシデン殿は言っていたらしい」
「そんな……。母が――」


 母さんは、一言もそんなことを言っていなかった……。
 もし母さんがそれを私に伝えていたら、何か状況は変わっていたでしょうか?

 ……けれど、もしも伝えていたとしても……。


「わたし、異世界に行ったことがあるのよ? そこでお父さんと出会ったのよ~」

 なんて説明されても、

「あーそうなんだ。ふーんすごいね~」

 と、面白い作り話だな~って受け流して、全く信じなかったと思います。


 ――結論。
 言っても言わなくても状況は変わらなかった!
 

『そうか、ユヅキがツボミの娘か。声が似ているとは思ったが、気付かなかったよ。娘の名前も知らなかったしな』
「ウインさんは、子供の頃の私に会ったことが……?」
『一回だけな。君が生まれた頃、私達【聖なる武器】と前世代の《聖騎士》達は、《勇者》と共に魔界に繋がる穴を塞ぐ旅に出た時だからな。君を見たのは、旅が終わって広場に全員集まっている時だ』
『……あの“知識の水”を、「なかなかイケる」ってニコニコしながら飲んだのもツボミだよ』


 うーさんが、可愛い声で衝撃の事実を教えてくれました。

 かっ、母さぁーーーんっ!!


 飲んだのはうちの母みたいなタイプだとは思っていたけど、まさかの当の本人とは!?
 成敗してくれるわっ! なんて思ってごめんなさい!!
 でもホントすっっごく不味かったんですって!!


「そして悲劇が起こったのは、二十年前だ。旅を終え、帰ってきた《聖騎士》達……私達の親を出迎える為に、風の国にある広場で皆が集まっていた。再会を果たしている時に、突然大きな角を持った魔物が現れて、蕾殿と柚月を同時に串刺しにしたんだ。それを間近で見てしまったシデン殿は、【闇堕ち】してしまった……。しばらくして、二人は消えていった。魔物が死んで身体が魔界に還るのと同じく、二人も亡くなり元の世界に還ったと皆思っていたんだ」


 リュウレイさんが話し終えても、しばらく誰も口を開かず、静寂が続きます。


「……柚月。何か、思い出しましたか?」

 イシュリーズさんが、気遣わし気に私に訊いてきました。
 その問いに、私はフルフルと首を横に振ります。

「すみません……。聞いても、全く実感がなくて。正直、他人ごとみたいと申しますか……」
「そうだよね~。人から自分のコト聞いても、本人が思い出さない限りは他人ゴトだよねぇ」

 ホムラさんが、寝転びながら私の言葉に同意します。

「あっ、でも、リュウレイさんが作ってくれた“知識の水”を飲んだ後、寝込んでいる時に少しだけ記憶が戻りましたよ! 父と幼い頃の私が遊んでるだけの光景ですけど……」

 もう一つの美少年と遊んでいる光景のことは、ここでは言わないでおきます。
 まだあの男の子がイシュリーズさんだって確証がないですし……。
 後でコッソリとイシュリーズさん本人に伺いましょう……。

「ふぅん、そうなんだ~? もしかしたら、《聖騎士》に関係する何かで刺激や衝撃を与えれば記憶が戻るのかな~? もう一回“知識の水”を――」
「謹んで断固拒否させて頂きます」
「まだ喋ってる途中なのに~。よっぽど不味くて衝撃的だったんだねぇ」


 あんな不味いもの、もう二度と飲むもんかぁっ!!


「あの水は一回飲むのが限度だ。脳への負担が大き過ぎるからな」
「そっか~。じゃあ、ボク達の技を柚月ちゃんに喰らわすとか? う~ん、でもそんなコトしたら、今度こそ柚月ちゃん死んじゃうだろうしなぁ――って、冗談だよ冗談ジョーダン。イシュちゃん、そんな怖ぁ~い顔で睨みつけないで。またゾクゾクってしちゃうから♪」


 や、やっぱりホムラさんは変態だった!!


「じゃあアレだ! 死なないで刺激的や衝撃的な気持ちになれる、オマケに気持ち良さもプラスされるアレ、その名はセッ――」
「ホムラ、貴様もう黙れ。未来永劫口を閉ざしていろ。そのいらん口を糸でキツく縫い付けてやるから」
「あっ、痛い痛い痛い……♪ リュウちゃん、頭そんなにグリグリしないで。頭割れそう。粉砕しそう。ボクも何か記憶が蘇りそう……♪」


 ……。ホント何なんですかこの人は……。顔は美形なのに……。残念過ぎるイケメンですね……。


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