《用無し》と放り出された私と、過保護な元《聖騎士》様の旅路

望月 或

文字の大きさ
46 / 134

46.告白




「…………」

 私は呆然として、ただイシュリーズさんを見つめます。
 そんな私の様子に何かを感じ取ったのか、イシュリーズさんは我に返ったように瞳を瞬かせると、顔を伏せ、小さく頭を振りました。

「……すみません、柚月。言葉が間違っていました。訂正させて下さい」
「は、はい……」

 そ、そうですよね。――びっ、ビックリしたあぁ!
 いきなり、え、え、エッチさせろだなんて、流石にありえませんよね?
 いくらイシュリーズさんでもそんなこと――


「貴女を愛しています、柚月。抱いてもよろしいでしょうか?」


 ヒェッ!? 更に直球来たあぁーーっっ!?

 私の頭はもうグルングルンのグワングワンです。――って、何だその頭の状態は。自分でも何を言ってるのか分かりません。

 ……というか、今、愛の告白もされました!?
 あ、愛してる、って……! 告白の最上級の言葉で!

 え、ちょっと待ってちょっと待って!? 脳が現実に追いつかない! 顔がものすごい熱いっ!


 私の真っ赤な顔と挙動不審な態度で、かなり混乱していると分かったのでしょう。
 イシュリーズさんはクスリと笑うと、私の額にそっと唇を落としました。

「大丈夫ですよ、ゆっくりで……。待ってますから、ずっと。貴女の返事を」

 そう言って、私を優しく抱きしめました。
 私の耳の位置が、丁度イシュリーズさんの心臓の場所にあって、彼の鼓動が聞こえてきます。

 鼓動が、早い……? イシュリーズさんも緊張している?

 それに気付くと、少し気持ちが落ち着いてきました。
 イシュリーズさんは、素直に自分の気持ちを伝えてくれました。それなら私も勇気を出して、自分の気持ちを正直に伝えなくては。


 ……例え彼に嫌われようとも――


「私、は……」
「はい」
「私は日本で、仕事が上手く出来なくて、その仕事を辞めて……家に引きこもっていました。人に会うのが怖くて、人の目が怖くて、顔も合わせられなくて……。母に甘えて、家事だけして、ダラダラと家で過ごしていました」
「……はい」
「今もまだ、人と目を合わせるのが怖いです。特技もないし、長所もない。私はそんな、駄目駄目な人間なんです」
「…………」


 イシュリーズさんの相槌が無くなりました。呆れているんでしょうか。それとも軽蔑したでしょうか。怖くて顔が見れません……。
 それでも私は、下を向いたまま、最後まで自分の気持ちを伝えます。

「イシュリーズさんは、とても立派です。《聖騎士》になって、皆を守って、ヒーローのようで。すごく強くて、優しくて。しかもイケメンで、格好良くて。背が高くて、細いのに意外に力持ちで、料理もかなり上手で、家事も出来て、その上――」
「柚月、――柚月」
「寝て――は、はい?」

 喋りを遮られ、私は思わずイシュリーズさんを見上げてしまいました。
 彼は私から目を逸らし、口に手を当てています。
 その顔全体が赤く染まって……?

「褒め過ぎです。もう……十分ですから、次へ……」

 イシュリーズさん、照れてらっしゃる!
 この後、「寝てる時ヨダレも出さないでイビキも掻かないで白目にもならないで……」って続く予定だったのですが、本人がそう仰るなら仕方ないですね……。

「だから……あの、そんなすごく立派な方と、駄目駄目な私となんかじゃ全然釣り合わないですし、そんな方に守って頂けるのも、大変おこがましいですし」
「柚月」

 またもや言葉を止められてしまいました。
 あの、返事をゆっくり待ってくれるんじゃなかったんですか……。
 イシュリーズさんは、視線を下げていた私の顎を指で持ち上げると、強引に自分の方に向かせます。


「あっ……」
「肝心な事を聞いていません。貴女は、俺の事をどう想っているのですか?」


 綺麗なエメラルド色の瞳が、私の顔を見据えます。
 急いで目を逸らそうとしても、顎に掛かっている指がそれを許してくれません。

 ……仕方ありません。ここまで言ってしまったのなら、これも正直に言いましょう。
 もっと勇気を出せ、私っ! 勇気は私の友達っ!


「……好き、です。――大好きです」
「…………っ!」
「《聖女》があなたのことを恋人にすると言った時、あなたを取られたくないって思ったし、魔物に殺されそうになった時も、あなたにもう会えないなんて嫌だって強く思いました。そんな気持ちは、その人のことを好きじゃないと生まれないと思いますし、私はいつの間にか、あなたのことが好きになってました。でも――」


 あなたと私とじゃ全然釣り合わない、あなたに見合った人が他にきっといるはず――と続けようと動かした唇は、イシュリーズさんの唇によって動きを妨害されてしまいました。
 すぐに舌が入ってきて、濃厚にそれらが絡み合います。

「んん、ふっ……」

 口からの息継ぎを許してくれず、次第に息が苦しくなり、慌ててイシュリーズさんの胸を手でトントン叩くと、ゆっくりと唇が離れました。
 透明な糸が唇同士を繋ぎ、静かに切れていきます。

 こ、この人は何故いつも突然キスをしてくるのか……っ!

 しばらく私の荒い息を吐く音だけが聞こえ、呼吸が落ち着いた頃、イシュリーズさんが静かに口を開きました。


「俺達、両想いですね。とても嬉しいです」


 ……と、ニッコリ笑いながら。


「……え、ええぇっ!? 何故にそうなるっ!? 私の決死の告白聞いてました!? 耳栓なんてしてませんよね!? あなたと私とじゃ全然釣り合わないって! あなたには他に見合った人が……っ!」
「貴女がそれを気にするようなら、俺は《聖騎士》を辞めて、ただのどこにでもいる男になりますよ」


 うええぇっ!?
 それ絶対やっちゃ駄目なやつじゃっ!?
 それにこんな美形イケメンはどこにでもいませんーーっ!!


「い、イシュリーズさんっ!?」
「貴女を手に入れる為なら、俺は何でも捨てられます。貴女に対する俺の気持ち、舐めないで下さいね?」

 そう言って、イシュリーズさんは目を細めて笑います。

「さぁ、観念して俺に抱かれて下さい」

 ……あれ、いつの間にか強制的に……なって……る……?
 あれ、おかしいな、あれれぇ?


「……あ、の」
「はい」
「こんな私で……いいんですか? 本当に……?」
「貴女じゃなければ駄目です。特技や長所がなく、駄目な人間だと貴女は自分を過小評価していますが、俺は貴女の良い所を沢山、沢山知っています。他の誰かではなく、貴女だけがいいんです。生涯、貴女だけが俺に必要なんです」

 知らない内に、私の両目から涙が溢れていました。
 何の涙なのかは、様々な気持ちが交ざっていて、自分でもよく分かりませんでした……。

「……ふ……」
「はい」
「ふ、不束者で恐縮ですが、よ、よろしくお願いいたします……」
「ふふっ。はい、こちらこそ。喜んで」


 イシュリーズさんは嬉しそうに笑うと、私の涙を指で拭き、もう一度キスをしてきたのでした。


感想 21

あなたにおすすめの小説

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる

しおの
恋愛
家族に虐げられてきた伯爵令嬢セリーヌは ある日勘当され、山に捨てられますが逞しく自給自足生活。前世の記憶やチートな能力でのんびりスローライフを満喫していたら、 王弟殿下と出会いました。 なんでわたしがこんな目に…… R18 性的描写あり。※マークつけてます。 38話完結 2/25日で終わる予定になっております。 たくさんの方に読んでいただいているようで驚いております。 この作品に限らず私は書きたいものを書きたいように書いておりますので、色々ご都合主義多めです。 バリバリの理系ですので文章は壊滅的ですが、雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。 読んでいただきありがとうございます! 番外編5話 掲載開始 2/28

【完結】帳簿係の地味令嬢、商会の不正を見抜いて王宮に見出されました。

夏灯みかん
恋愛
王都の商工会議所で働く、地味な帳簿係エミリー。 真面目に記録をつけることだけが取り柄の彼女は、同僚から軽く扱われ、雑用を押しつけられる日々を送っていた。 そんなある日――エミリーは、孤児院への配給物資の記録に、わずかな“ズレ”があることに気づく。 数量は合っている。 だが、なぜか中身の重量だけが減っている。 違和感を覚えたエミリーは、自ら倉庫へ足を運び、現物を確認する。 そこで見つけたのは、帳簿では見えない“静かな不正”だった。 しかしその矢先――不正の責任を押しつけられ、職場から追い出されそうになってしまう。 それでもエミリーは諦めない。ただ一つ、自分が積み上げてきた“記録”を信じて。 「では、正式な監査をお願いいたします」 やがてその記録は、王宮の政務監査官リオンの目に留まり―― 隠されていた不正はすべて暴かれる。 そして、彼女を軽んじていた者たちは、その代償を支払うことになる。 これは、地味で目立たなかった一人の帳簿係が、 “正しく記録した”ことで不正を暴き、王宮に見出されるまでの物語。

婚約破棄された令嬢は騎士団長に溺愛される

狭山雪菜
恋愛
マリアは学園卒業後の社交場で、王太子から婚約破棄を言い渡されるがそもそも婚約者候補であり、まだ正式な婚約者じゃなかった 公の場で婚約破棄されたマリアは縁談の話が来なくなり、このままじゃ一生独身と落ち込む すると、友人のエリカが気分転換に騎士団員への慰労会へ誘ってくれて… 全編甘々を目指しています。 この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【番外編完結】聖女のお仕事は竜神様のお手当てです。

豆丸
恋愛
竜神都市アーガストに三人の聖女が召喚されました。バツイチ社会人が竜神のお手当てをしてさっくり日本に帰るつもりだったのに、竜の神官二人に溺愛されて帰れなくなっちゃう話。

田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」  十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。  弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。  お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。  七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!  以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。  その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。  一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。