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7.妹がいる場所
しおりを挟む「まだ君と話をしたいが、一旦中断しよう。暗くなってきたから今晩はここで野宿だ。取り敢えず準備をしようか」
「えっ!? 私、野宿の用意なんて持っていません……!」
予定では、遅くても夜までに隣町に到着する計画だったのだ。
「心配ない。俺が一人分を持っている」
へっ!? いやいやっ、『一人分』じゃ駄目でしょうっ!? 人数の計算間違ってませんかっ!?
直接ツッコミが出来ない気弱な私が心の中でツッコんでいる間、彼は野宿の準備をテキパキとしていく。そして枯れ木と葉っぱをササッと集め、そこに火打石で火を点けた。
すごい、かなり手慣れている……。
「夜は冷える。こっちに来てくれ。毛布を掛けよう」
「あ、……ありがとうございます」
私は言われるがままに彼の傍まで歩く。そして彼は私の腕を引っ張り、自分の膝の上に私を乗せた。その状態のまま、彼ごと毛布を掛けられる。
「っ!?」
「一人分しかないから、こうするしかないだろう? 二人共風邪をひかない為の得策だ。なのでこれは“浮気”ではないから安心してくれ。俺達が病気にならないようにする、必要不可欠の行動だからな」
「え? は……はい……?」
彼の両腕が私のお腹に回されお互いが密着し、私の肩に彼の顎が乗せられる。
――ちょっ、近いんですけど!!
しかも何か首筋の匂い嗅いでません!? 鼻が当たってるんですけど!? ただでさえ美形がすぐ近くにいて緊張しているのに止めて下さいっ!
「……さっきの話の続きなのだが」
「っ!! うわっ、はいっ!?」
後ろからすぐ耳元で低く囁かれ、私の身体がビクンと跳ね上がる。
その反応に、彼が可笑しそうにクッと笑った。
この人……! 絶対ワザとやってるよね!?
見掛けによらずイタズラ好きですかっ!?
「~~っ。そ、その前にお互い自己紹介をしませんか? お互いに名前も知らないですし……。私はフィンリー・ルバロと申します。ルバロ子爵家当主、エンディニオの妻です」
「あぁ、そう言えばまだしていなかったな。俺はレクサール。歳は二十六。しがない旅人だ」
ご丁寧に年齢まで教えてくれました。
旅人、か……。彼らは一つの場所に留まらないから、プリヴィはこの人に付いていくのかな……。
……あぁ……でも、エンディニオ様と浮気しているし……。
――あ、このことはレクサールさんに言わない方がいいかな……。ショックを受けるよね……。
でも、早めに知っておいた方がいいかな……どうしよう……。
「質問なのだが、君は夫を愛しているのか?」
「へっ?」
突然の問い掛けに、私は悩む思考を中断され思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
「……え、えっと、その……?」
「そうか、分かった。夫と離婚したいと思うか?」
「え!? あ、あの、その――」
「そうか、分かった」
先程から続く無遠慮な質問に、開いた口が塞がらない。しかも何も答えていないのに、勝手に納得して頷いている。
一体何なのっ!?
「君はどこに行こうとしていたんだ?」
あ、やっと答えられる質問がきた……。
「夫が、この森の先にある町に視察に出掛けてるんです。三、四日で戻ると言っていたのに、一週間経っても戻って来ないので、休暇を取って様子を伺いに向かうところなんです。レクサールさんはどうしてここに……?」
私の問いに、レクサールさんは深い溜め息をついた。
「俺に付きまとっていた女に、隙を突かれて命と同等の“大事なモノ”を盗られてしまってな。自分と恋人にならないと返さないと言われ、渋々付き合っていたんだが、ある日突然俺の前に姿を見せなくなったんだ」
えぇっ!? あの子ってば、脅迫してレクサールさんを無理矢理恋人にしていたの!?
それに彼の“大事なモノ”を盗ったって……。立派な【窃盗罪】じゃない!!
「その“大事なモノ”が俺の側にないと、俺の身体は激痛と苦しみに苛まれ、咳が止まらなくなり血を吐き続け、やがては死に至ってしまう。君が来なければ俺は確実に死んでいたな。どのくらいの離れた距離で、どのくらいの時間が経ってからそうなるのか経験もないし分からなかったから、判断を誤ってしまった」
「ひぇ……っ」
あ、あれはかなり大事な状態だったのね……! 間に合って本当に良かった!
「“大事なモノ”の居場所は何となく感じるから、それを取り返しにこの先にある町に向かっていたんだ。あの女はどうやら、その町にいるみたいだからな」
「……え……」
“大事なモノ”のとんでもない重大さに驚いたけれど、それよりもレクサールさんの言う“あの女”が今いる場所に引っ掛かった。
“あの女”とは、十中八九プリヴィのことだろう。
……妹が……私がこれから向かう町に……?
エンディニオ様が視察に行っている、その町……に……?
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