私から何でも奪い取る妹は、夫でさえも奪い取る ―妹の身代わり嫁の私、離縁させて頂きます―

望月 或

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10.尾行開始

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 二人は仲睦まじく腕を組み、笑顔で会話をしている。
 まさにデート中の恋人同士だ。


 ……そう言えば、エンディニオ様と一緒に、一度も外出したことなかったな……。誘われたことなんてなかったし、最初に「ワガママも口答えも許さない。従順で大人しくしていろ」と約束させられたから、私の方から何も言えなかった……。

 妹とは、こうやって普通にデートするんだ……。

 …………。


「……どうした? フィンリー」


 私の顔色に目敏く気付いたレクサールさんが、小さく声を掛けてきた。


「あ、いえ……。夫とあんな風に出掛けたことなんて、一度もなかったな、って――」
「俺で良ければ幾らでも付き合うぞ。君となら大歓迎だ」
「……ふふっ、ありがとうございます」


 即答したレクサールさんに、思わずクスリと笑ってしまう。
 エンディニオ様とプリヴィは、町の高級衣料品と服飾品を売る店へと入って行った。
 窓からそっと中を見ると、妹があれこれ服や装飾品を見回している。手に取っては実際に付けてみたり、試着してみたり……。
 エンディニオ様はこちらに背を向けていたけれど、その横顔は微笑んでいて、腕を組み妹の様子を見守っているようだった。

 そう言えば、こういうお買い物も一緒にしたことなかったな……。
 エンディニオ様も……楽しそう……。

 …………。


「……どうした? フィンリー」


 何も言っていないのに……。
 レクサールさん、目敏過ぎです……。


「いえ……。こんな風に一緒にお買い物することも一度もなかったな、って――」
「俺で良ければ一緒に選ぼう。勿論金は俺が出す。君と買い物が出来たら、きっと楽しいだろうな」
「……ふふっ。お心遣い、本当にありがとうございます」


 レクサールさんは、私の今欲しい言葉を言ってくれる。まるで心を読んでいるかのように……。
 お蔭で、何度も奥深くに沈みそうになる私の気持ちを浮き上がらせてくれた。
 本当にレクサールさんには感謝だ……。


 ……それにしても、こんな高級なお店でお買い物だなんて……。
 妹に払えるはずがないから、エンディニオ様に買って貰うのだろう。


 ……待って? エンディニオ様、まさか視察資金から払うんじゃ……。
 まさか……ね……? 流石に彼はそんなこと……。でも、私財を持ってきているとは思えないし――


 そんな愚かな考えを必死で打ち消していると、色々と買って貰ったプリヴィが、上機嫌でエンディニオ様と外に出てきた。
 そして、また腕を組み今度は賑わっている民衆食堂に入って行く。どうやらお昼ご飯をとるようだ。

 ………………。


「今度、一緒に飯に行こうか。勿論俺の奢りだ」


 あ、とうとう「どうした?」が省略されてしまった……。
 私、表情に出やすいのかな……?


「フィンリー。この食堂は旅人も多く利用する。フードを被って食事をする者も大勢いる。ここなら中に入って、二人の席の近くに座って会話を聞くことが出来そうだ。会話の内容によって、浮気を確定する要素があるかもしれない。どうする? 君が辛いようなら、俺一人で中に入るが……」


 私はレクサールさんの提案に一瞬躊躇したけれど、唇を噛み締め首を横に振った。


「いえ、私も一緒に入ります……」
「……分かった。辛くなったら、すぐにここから出よう」


 レクサールさんは私の頭をポンと優しく叩くと、食堂に向かって歩き出す。それに私も続いた。


「いらっしゃいませー。お二人様ですね? 空いているお席にどうぞー」


 中に入ると、店員さんが元気良く声を掛けてくれた。

 席が結構埋まっていたけれど、丁度あの二人の斜め後ろの席が空いていたので、鼓動を鳴り響かせながら静かに席につく。
 ガヤガヤと賑わい、フードを被る旅人も何人かいたので、こちらに気付くことはまずないだろう。


 注文を取りにきた店員さんに、早く提供出来そうな料理を選んでメニュー表を指さして頼み、私とレクサールさんは口を閉ざす。
 声を出すと、もしかしたら二人に気付かれるかもしれないので、それを警戒してだ。

 そして、私達は耳を澄ませ、二人の会話に神経を集中させた。


「お義兄様ぁ、素敵なお洋服とネックレスを買ってくれてありがとうございますぅ♡」
「いいんだ、これは礼だし気にしないでくれ」
「じゃあ遠慮なく貰いますね♡ お姉ちゃんも、まさかお義兄様の視察にあたしが一緒に付いて来てるなんて思ってないだろうなぁ……ふふっ。お姉ちゃん、まだ気付いてないんですかぁ? お義兄様の首の後ろにキスマーク残したのにぃ」
「なっ……!? そんな危ないことはしないでくれ! 最近フィンリーも何か感じたのか、『誰かと一緒だったか』と聞いてくるんだ。誤魔化してはいるが、もし君との関係がバレてしまったら――」
「うふっ、大丈夫ですよぉ♡ お姉ちゃんなら、お義兄様が一言謝れば赦してくれますからぁ」
「あぁ……ははっ! そうか、そうだな。アイツはボクのことを愛しているからな。ボクと離れたくないだろうし、簡単に赦してくれそうだ」



 ……私は、その会話を唇を強く噛み、震える拳を固く握り締めながら聞いていた――





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