私から何でも奪い取る妹は、夫でさえも奪い取る ―妹の身代わり嫁の私、離縁させて頂きます―

望月 或

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11.『居場所』の転落

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「お義兄様ぁ? もしバレちゃったら、あたし達の関係も終わりですかぁ?」
「まさか! そんなことはないさ。君はボクの“秘密”を知っている者の中で、最高の女性なんだ。フィンリーにだけは、この“秘密”は教えられない……絶対に。だから、もし君とのことがバレても、ほとぼりが冷めたらまた君としたい。きっとボクが君のアレを欲しくて我慢出来なくなるだろうから。この快感を知ってしまったら、もう……。――な、いいだろ、プリヴィ?」
「ウフフッ。もう、しょうがないですねぇ。いいですよぉー? あたしもお義兄様とするのすっごくキモチイイですしぃ♡ でもぉ、レクサール様を優先しますからぁ、そこは分かって下さいねぇ?」
「それはボクも同じだから構わない。君も彼氏にバレないように気を付けろよ」
「あははっ、大丈夫ですよ、あたしは♡ だって、あの人の“大事なモノ”を持ってるしぃ。これがあれば、あの人はあたしに絶対に逆らえませんから♡」
「ははっ、ボクとフィンリーみたいだな。アイツはボクを心から愛しているから、絶対に逆らえないんだ」
「うふふっ、奥さんであるお姉ちゃんが知らないお義兄様の秘密をあたしが知ってるなんて、すっごい気分がいいですよぉ。あははっ!」
「キッカケはどうあれ、君に教えて良かったよ。この視察の間、君と毎日シて本当に最高だった……。でも、そろそろ戻らなきゃな……。流石にフィンリーが心配する。明日帰ることにするか。プリヴィ、ご飯を食べたらすぐに路地裏の宿屋に戻ろう。ここでの最後の“最高の快感”を、ボクに思う存分植え付けてくれ……」
「ふふっ♡ この数日は一日中シてたのに欲張りですねぇ♡ あたしにもお義兄様のを沢山注いで満足させて下さいね♡ レクサール様はそういうの全然してくれなかったから、あたしとっても寂しかったんですぅ」
「ははっ、利害の一致だな。アレをしながら君の中に出すのは、本当に堪らない快感が――」


「行くぞ。ここから出よう」


 いつの間にか届いていた料理を、持ち帰り用の容器に詰めて袋に入れたレクサールさんが、眉間に皺を寄せながら私に小さく声を掛けた。
 そして私の手を取って引っ張り、カウンターでお代を支払って外に出る。

 無言で私の手を引っ張って辿り着いた場所は、人気のない路地裏だった。
 レクサールさんは、そこでグイッと私を引き寄せると、腕の中に閉じ込めてきた。


「……レクサール、さん……?」
「……酷く不快な会話を聞かせてしまい、すまなかった」


 レクサールさんが、辛そうな顔つきで私の頬を指で拭う。
 そこで私は、自分が知らずにボロボロと涙を流していることに、ようやく気が付いたのだった。



 ……とても……とても悲しかった。
 すごく悔しかった。
 胸が苦しくて苦しくて堪らなかった。


 私の全てを奪って、私の夫でさえも奪い取った妹が。
 エンディニオ様が、私をあんなに軽く見ていたことが。
 彼の考えていた通り、謝ったら簡単に赦そうとしていた自分が。
 彼の“秘密”を、妻の私ではなく妹に打ち明けたことが。
 私には絶対に言えない、と言われていたことが。
 簡単に浮気をすることが。
 妹と確実に身体を重ねているという事実が。


 どれも悲しくて、悔しくて、胸が張り裂けそうなほど苦しくて……。


 「愛している」と言っていたのに……。
 やっぱりそれは嘘だったんだ……。


 あぁ……それは、私……も……。

 ………………。



 ……こんなの、“夫婦”の関係じゃない……。



 ――あぁ……そうだ。最初から分かっていたことなんだ……。
 『初夜』に、あの理不尽な約束をさせられた時から。


 まるで“奴隷扱い”のその約束を。



 ルバロ子爵家での、私の『居場所』が無くなるのがとても怖かった。

 その『居場所』は、細く長い棒の上にあって。
少しでも風が吹いて棒が揺れたりしたら、一瞬で転がり落ちていって。

 探せないほどに、暗闇が広がる地底に真っ逆さまに落ちていって……。



 ――もう、いいや。
 もうそれを探せないのなら。
 それを捨てて、私の『居場所』は、私自身で見つけよう。


 何にも取り柄のない、何も出来ない私は、これから絶対に辛く険しい思いをするに違いない。

 けれど、辛くとも苦しくとも、もう二度と失うことのない、私だけの『居場所』を見つける為に。


 
 私は、エンディニオ様と『離縁』する――



「……レクサールさん」
「ん?」
「私、エンディニオ様と『離縁』します。……決めました」


 もう躊躇わないように“決意”を言葉にした私に、レクサールさんは私の頭を優しく撫でてくれた。


「そうか。君がそう決心したのなら、それに向かって突き進めばいい。俺は君を全力で支援するから。……良い決断をしたと、俺は思うぞ」
「ありがとう……ございます……」


 レクサールさんの優しさと肯定が、ズタズタに傷付いた私の胸にじわりと染み渡っていく。
 我慢出来ず、彼の温かな腕の中で声を出して泣いていた私は、気付くことはなかった。



 レクサールさんが、黒耀石の瞳を輝かせながら私を見下ろし、口の両端を持ち上げていたことに――






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