私から何でも奪い取る妹は、夫でさえも奪い取る ―妹の身代わり嫁の私、離縁させて頂きます―

望月 或

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26.三文字 *

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 城下町の探索を楽しんだ後、お城に戻り夕食を戴いたのだけど、それがどれも美味しくて、気付けば残さず食べていた。
 全て薄味なことが、私の好みに合っていたのだ。


「龍人は五感が敏感だからな。この位の薄さが丁度良い。人間の世界の料理は皆味が濃いから、正直苦手だった」
「ふふ、実は私もです」
「この国の味が口に合って良かった。君はもう少し太った方がいい。この城に滞在する間に、十キロは太らすつもりだ」
「う、えぇっ!? それは勘弁して下さいっ! どれだけ食べさせるつもりですかっ!!」
「はははっ」


 こんな冗談も普通に言い合えるようになって、最初に会った頃と比べて、私達は随分と仲良くなれた気がする。
 レクサールさんも沢山笑顔を見せてくれるようになったし、嬉しいな。


 夕飯を食べ終わり、入浴もさせて貰って、後は眠るだけの段階で、私はレクサールさんのお部屋にお邪魔していた。
 私の為に来賓の部屋を用意して貰ったけれど、まだ何となく一緒にいたくてレクトールさんについてきたのだ。

 彼のお部屋はスッキリと整頓されていて、無駄な物が一切置いていない、彼の性格が表れた空間だった。

 ソファに二人並んで談笑し、話題が途切れたところで、徐ろにレクサールさんが立ち上がった。


「そろそろ寝る時間だな。明日は今日見て回れなかった場所に行くか。来賓の部屋まで送ろう」


 歩こうとしたレクサールさんの服の裾を、私は思わず掴んでしまった。
 振り向いたレクサールさんは、首を傾げ私に尋ねる。


「……どうした?」
「あ、あの……。――今朝、教会に提出してきたんです……。その、『離婚届』を……」
「『離婚届』? 持っていたのか?」
「はい……」


 休暇前にサイノさんが渡してくれた、一切れの紙が付いた小さな鍵は、あの人の名前と拇印が押された『離婚届』が入った、金庫の暗証番号と鍵だった。


 サイノさんは知っていたんだ。
 あの人が浮気をしていることを。諌めても止めないであろうことを。

 そして……私を“解放”しようと、金庫の鍵を渡してくれた――


 サイノさん、ありがとう……。


 『離婚届』を手に入れた私は、それを自分の荷物の中に忍ばせた。
 使われないことを願っていたのに、その願いは無残にも打ち砕かれて。

 あの人の言葉と態度を見て、一刻も早く縁を切りたかった私は、『離婚届』に署名をし、教会に提出したのだ。


「無事に受理されまして……。だから私は、今日から独り身のフィンリー・ウィンザルに戻りました。この苗字も好きじゃないんですが……」
「なら、フィンリー・ディバインになればいい」
「えっ?」


 レクサールさんを見上げると、穏やかな表情で微笑んでいた。
 冗談? それとも本気……?
 返事を待っているわけではないようだけど……。

「……っ」

 町にいる時もうるさかったけど、今はもっと周りに響くくらい心臓の音がドクドクとうるさい。

 身体全体がムズムズして止まらない――


「……あ、あの……レクサールさん……」
「ん?」
「私、……だから……、その……」
「あぁ」


「…………抱いて……?」


 ……ああぁっ! 恥ずかし過ぎて「下さい」まで言えなかった!
 三文字言うので精一杯だった! これが私の限界っ!!

 耳まで赤くなっているであろう、熱過ぎる顔を俯かせ、掴んでいた裾をギュッと強く握り締めていたら、ハァ、と息を吐く音が聞こえた。

 溜め息!? やっぱり……嫌だった……?

 泣きそうになりながら恐る恐る顔を上げると、レクサールさんが片手で顔を覆って横を向いている。


「……俺が誘導したんだが……こんなにも……。想像以上に……クるな……」


 何やら小さくブツブツ言ってる……。
 よく見ると、レクサールさんの耳と首が赤くなってる……?


「あ、の……」


 状況がよく分からず、声を掛けようとした時、突然レクサールさんが私を抱え上げ、彼のベッドの上に押し倒された。


「え……っ?」
「いいのか? 手加減は出来ないが」


 欲情の熱を秘めた黒曜石色の瞳が、私を至近距離でジッと見据えている。
 私はそれに見惚れながらも、小さく頷いた。


「その……。今日、ずっと心臓がドキドキして……。身体がムズムズして……。今は、その……すごく――」
「あぁ、分かってる。辛いな。すぐに楽にさせる――」


 そう言うと、レクサールさんは私に唇を重ねてきたと思ったら、すぐに舌を差し込んで濃厚な口付けを始めた。

「んっ……」

 キスだけで、痺れるほどの快感が身体を支配していく……。
 レクサールさんは私の口内を音を立てて貪りながら、ネグリジェと下着を脱がせ取っていく。
 私を全裸にさせると、彼は一旦起き上がり、自分も服を脱ぎ始めた。

 その裸を見て、私はハッと息を呑む。
 細身だけれどしっかりと引き締まった身体のあちこちに、剣で斬られたような傷跡があるのだ。古いものもあれば、最近付けられたであろうものもあった。


「……レクサールさん、この傷は――」


 私が彼の傷跡にそっと触れると、レクサールさんは小さく苦笑した。


「殆どが兄上に付けられた傷だ。本当に容赦無く斬り掛かってくるからな」
「あ……」


 お兄さん、本気でレクサールさんを殺そうとしてるんだ……。
 ……そこまでお母様のことを想って……。


「……フィンリー、兄上のことは考えるな。俺だけを想え。俺だけを見てろ」
「……っ」


 少しムッとした表情になったレクサールさんから唇を塞がれ、再び濃厚で濃密な口付けを受けた。
 キスをされながら胸を揉まれ、その先端も捏ねくり回される。
 先端を弄るものがレクサールさんの指から口に代わり、甘咬みされて吸われる。もう片方の乳首は指で弄ばれて。
 その度に感じたことのない強烈な快感が身体を駆け巡り、喘ぎが止まらない。胸と口だけで何度も達してしまった。

 あの夢の時と気持ち良さが遥かに違う……っ!

 気が付くと、レクサールさんが私の脚を大きく開き、その間に身体を滑り込ませていた。

「あぁ、トロトロだな。美味そうだ……」

 彼は妖艶に笑い私の膣を二本の指で撫でると、その指に付いた透明な液体を私に見せる。
 指から滴るソレに、私の頭から足の爪先までが赤く染まった。


「やっ……。みっ、見せないで……っ」
「君が気持ちが良くなっている証拠だ。俺は嬉しいが?」
「……っ」
「龍人族は、自分の子を産んでくれる“番”をとても大切にする。そして、最大限に気持ち良くさせてやりたいと、常に強く思う。その願いを神が聞き入れたのか、龍人族は“番”をもっと気持ち良くさせる手段を持っているんだ」
「……?」


 私は何度もイッて回らない頭でレクサールさんを見上げると、彼は妖美に口の端を上げて私を見つめた。





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