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36.そこは楽園のような
しおりを挟む気が付くと、私は様々なお花が咲いた花畑の真ん中に立っていた。
「え……?」
キョトンとして辺りを見回すと、頭上で色んな色の小鳥達が可愛らしい鳴き声を響かせ、七色の空を飛び回っていた。
綺麗に咲き誇る花畑の向こうには、キラキラと虹色に光る小さな池があり、二本の樹の下にハンモックが掛かっている。
ハンモックの上には、毛並の艷やかな猫が数匹、気持ち良さそうに日向ぼっこをしていた。
そして、その近くに丸太で作られた小さな小屋があった。
「……ここは……楽園……? ――そうか……私、天国に来たんだ……。地獄じゃなくて……良かった、かな――」
様々な想いが頭の中を駆け巡り、動けずただボンヤリとその光景を眺める。
不意に丸太小屋の扉がパタンと開き、そこから一人の可愛らしい少女が姿を現した。
年は十代だろうか、ブラウン色の腰まで伸びた緩やかなウェーブの髪に、同じ色の大きな瞳は七色の光を受けてキラキラと輝いている。
「あはっ、いらっしゃい! 会えてすごく嬉しい!」
「え……?」
少女は満面の笑顔でタタッと駆け寄ると、ギュッと私の身体に抱きついた。
「え、え……っ?」
「あはっ! うん、驚くのもムリはないよね。まずはわたしのお家に入りましょ? わたし特製ケーキと紅茶をごちそうするから!」
「え……え?」
「さ、いきましょ!」
突然の出来事に、「え?」以外の言葉を失くしてしまった私の手を引いて、少女は笑顔のまま丸太小屋の中に入る。
中はお花や絵画等が飾られ、女の子らしい内装になっていた。
「さぁ、座って座って! 今、ちょうどケーキを焼いたところだったの! お口に合えばいいんだけど」
私は促されるまま木で出来た椅子に座り、少女がテーブルに置いた美味しそうなシフォンケーキと湯気が出ている紅茶を見る。
少女も自分の分を用意し、ニコニコと向かいの席に座った。
「ではいただきましょ? いただきまーす!」
「あ……はい、いただきます……?」
私は流されるまま食事前の挨拶をし、お皿の上のシフォンケーキをフォークで切って口に運ぶ。
「……わ、美味しいっ! フワフワでいくらでも食べられそう!」
「ふふっ、良かった! 沢山食べてね!」
少女は笑みを浮かばせながら、シフォンケーキを頬張っている。
そんな彼女に、私はおずおずと口を開いた。
「……あの、自己紹介が遅れてごめんね? 私はフィンリーっていうの。――ね、ここは一体どこかな? 楽園みたいな素敵な場所だし、目の前に天使みたいに可愛い子もいるし、やっぱり天国……だよね……?」
少女はシフォンケーキを頬張りながら、ブラウンの瞳をパチパチと瞬かせ、それからプハッと吹き出す。
「あはっ、違うよー! でもそう言ってくれて嬉しい! 頑張って一人でここまで作ったんだもの。ここはね、フィンリーの心の奥底。わたしはここに住まわせて貰ってるの。勝手に住んでてゴメンね? そしてこれからも勝手に住むけどよろしくね? フィンリーに会えたらこれを真っ先に言いたかったんだ!」
「え、ぇ、えぇ……?」
思考が追いつかない私に、少女はニッコリと可愛らしく笑い、言葉を続けた。
「あっ、わたしも自己紹介をするね。わたしはアーシア・ディバイン。ディバイン王国国王のライアンの妻で、ガーロッドとレクサールの母親だよ」
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