私から何でも奪い取る妹は、夫でさえも奪い取る ―妹の身代わり嫁の私、離縁させて頂きます―

望月 或

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43.虚ろな瞳で ※エンディニオ視点

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「ほ……本当か……?」


 その言葉に、目の前にいる胡散臭かった男が、神のように見えてくる。


「えぇ、私は嘘はつきませんから。その契約が成立した場合、貴方はとある場所で働いて貰います。貴方の周りが落ち着くまでの間、どこかに身を潜めていなければならないでしょう? 隠れるのにうってつけな場所でもありますよ。なぁに、誰でも出来る単調作業ですよ。それに、働けばちゃんと“ご褒美”も貰えますから。宜しければ、この契約書の注意事項をお読みになって、署名をお願いします」


 男が差し出してきた紙とペンを受け取り、ボクは中身もあまり読まずに署名をした。
 この状況から抜け出せるのなら、少しの間働いたって構わないと思ったのだ。それで罪が全部無効になるのなら、多少働いたって容易いものだ。


「契約成立ですね。ありがとうございます」


 男が綺麗な顔にニッコリと笑みを浮かばせた瞬間、ボクの頭に強い衝撃が走り、意識が一瞬で闇に染まっていった――




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「おら、キビキビ動けよっ!! 少しでも動きを止めたら“お仕置き”だからなっ!!」


 親方の怒声が辺りに響き渡る。
 ボクは暑さで額からダラダラと流れる汗を拭い、大きく溜め息をついた。

 誰かに頭を殴られたような衝撃が走って意識を失い、気が付いたらどこかの建設現場にいた。
 どうやら、そこで働く契約だったらしい。

 そこの現場は、とても厳しかった。
 少しでも休めば怒鳴り声が飛んできて、“お仕置き”をされる。


「……おい、そこのお前、休んだな。――って、またお前かよ。余程この“お仕置き”を受けたいらしいなぁ。ま、お前の場合は“ご褒美”か。鞭で打たれるの、だーい好きだもんなぁ? お前の契約者から聞いてるぜ」
「ち、ちが――」


 親方の手には、鋼で出来た鞭が握られていた。
 その鞭には、小さなトゲが沢山付いてきて――


「じゃあ、遠慮なくこの鞭を皮膚に喰い込ませてやるよ。かなりの激痛な上にトゲが当たって血が噴き出すけど、お前、それがいいんだもんな? 心配すんな、傷薬はたんまりあるんだ。それで付いた傷キレイに無くしてやっからさ。何度でもこの鞭が受けられるぜ? 良かったなぁ、ガハハッ!」
「――ヒッ! 止め――」


 そして親方は、容赦なく鞭を振り下ろしてきた――


「ギャアアァァァッッ!!」


 鞭が身体をビシバシと叩く音と共に、ボクの絶叫が建設現場中にこだまする。


 こんなの“ご褒美”じゃない。最悪の拷問だ。地獄の痛みだ。
 けれど、泣き喚いても打たないでくれと懇願しても親方は止めてくれない。


「遠慮すんなよ。打たれて気持ちいいんだろ?」


 と、見当違いも甚だしいことを言い、更に激しく打ってくる。


 うがあぁ……痛い痛い痛いいぃっ!!

 違う……違うのにぃっ!!


 ……あぁ……どうして……どうしてこんなことに……。


 虚ろな瞳で振り上げられる鞭を見上げながら、もう数え切れないくらい思った言葉をまた思う。



 ボクの地獄の日々は、まだ始まったばかりだ……。




 そして――




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