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永久に囚われた元娘と、永遠に逃さない元義父のお話〜if ending〜【メリバルート】
8.帰ろう、我が家へ
「……ははっ、怒ったユティは久し振りで新鮮だ。そんなお前もすっげー可愛いなぁ……最高だ。王女に嫉妬してんのも堪んねぇな……。ユティ? 一人でなんて、そんなわけないだろ。お前はオレがいないと生きていけないくせに。……どこに行くんだ? ――あぁ、鬼ごっこをしようってか? ははっ、まだまだガキだなぁユティは。そこも可愛いんだけどさ。いいぜ? 付き合ってやるよ。もう二度とオレから逃げられると思うなよ……?」
ゼノの低く笑いを含んだ台詞を、ドッと冷や汗が流れる背中に受けながら、私は必死になって走った。
食堂に駆け込み、用事が出来たから先に上がらせて貰う旨を謝罪と共にルイゼさんに伝えると、そこから飛び出してまた走り出す。
何度か振り返り、左右を見回し、ゼノがいないことを確認しながら自分の家に飛び込み、玄関の鍵をしっかりと閉めた。念の為、家の全部の窓も閉めて鍵を掛ける。
そこまでして、ようやく私はダイニングテーブルの椅子に座ると上半身をテーブルに突っ伏し、長い長い溜息をついた。
「はぁ……。もう本当にわけが分からない……。ゼノ、一体どうしちゃったの……? 全然話が噛み合わなかった……。……やっぱり、私と意図せず会っちゃって混乱しちゃったんだよね……。ゼノが元の国に戻るまで、家から出ないで隠れていよう。それならルイゼさんに、少しの間食堂をお休みすることを伝えなきゃ――」
「――鬼ごっこで隠れるのはルール違反だぜ、ユティ?」
「――ひッッ!?」
不意にダイニングの入口から男性の声が飛んできて、私は心臓が飛び出るほど驚き、思わず短い悲鳴を上げてしまった。
勢いで椅子をガタンッと引っくり返して立ち上がってしまう。
「…………っ」
恐る恐る、ギギギと軋む音がしそうなくらいゆっくりと後ろを振り返ると、入口に背をもたれ掛けて腕を組んでこちらを見ている、そこに絶対にいるはずのないゼノの姿があった。
彼はフードを外していた。鮮やかで綺麗な、肩まで伸びたサラサラな紅の髪の色と、見惚れるほど美麗で端正な顔立ちは半年前と全く変わらない。
しかし瞳の色は紅黒く淀んで、以前と違う鈍い光を放っていた。
「な……んで……」
何とかそれだけ口にすると、ゼノは唇の端を持ち上げ、組んでいた片方の手を軽く持ち上げた。
チャラリと小さな音を鳴らし、彼の指に掛けられ、小さな鍵が左右に揺れぶら下がっている。
私はその鍵の形に、すごく見覚えがあった。
毎日見ている、それは――
「……そ、それ……。この、家の――」
「そ。同じカギ。『合カギ』ってヤツ?」
ゼノはその鍵をポケットに仕舞い、ニヤリと笑う。
「……ど、どうして――」
「――さぁて、可愛い可愛いオレの奥さんに質問。このカギを使って、オレはお前に何をしていたと思う?」
私は呼び方よりその質問が酷く引っ掛かり、暫く考えハッと思い当たったが、すぐさまそれを否定したい感情で一杯だった。
まさか、まさか……そんな……。
あの夢が現実だった、なんてこと――
確かにいつも感覚が生々しいとは感じていた。
けれど、ゼノが実際に私を抱いていたなんて、絶対に思うわけがないじゃないか。
ゼノは、元いた国で王女様と仲良く暮らしていると信じ切っていたのだから――
だからこれは夢だと、気持ちいいからと、素直に甘えて抱かれて――
……あの姿を、ゼノにずっと見られていたなんて……!!
……待って。じゃあゼノは、私がここに住み始めた頃から同じ場所にいたってこと……?
何で? どうして?? 王女様は……?
「……ぶはっ! くくっ……。お前さぁ、赤くなったり青くなったり面白過ぎ。ったく、超絶可愛過ぎだろー? 今すぐ抱き潰したくなるから止めろよなぁ?」
ゼノは私の蒼白の顔を見て盛大に吹き出し、こちらにゆっくりと歩いてくると、小刻みに震える私の手を取って自分の指を絡めてきた。
「――はい、捕まえた。オレの勝ち、お前の負ーけ。楽しかったか? オレは久し振りに童心に戻れて楽しかったぜ? たまにはいいな、こういう遊びも。ははっ」
「…………」
ゼノは彫刻のような美麗の顔に微笑を貼り付けると、石像のように固まっている私の手を自分の口元に持っていく。
そして、愛おしそうに唇を這わせながら、こう言った。
「じゃ、帰るか。――オレ達の家に」
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