前略陛下、金輪際さようなら。二度と私の前に姿を見せないで下さい ~全てを失った元王妃の逃亡劇〜

望月 或

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15.上書き *

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 「……め……て……」


 イシェリアの微かな呻き声に、ユーリはすぐに目を覚ました。
 彼の腕の中で、イシェリアは額から脂汗をダラダラと流しながら眉を顰め、何度も同じことを呻いている。


「へ……いか……。止め……くだ……い……。ぶたな……で……。かま……いで……。お……ねが……」
「っ!?」


 そしてイシェリアはきつく閉じた瞼から、透明で綺麗な涙をポロポロと流し始めた。
 ユーリはすぐにベッドの脇にあるランプを点ける。


「イシェリア……イシェリアッ!!」


 ユーリの鋭い呼び声に、イシェリアはハッとして涙に濡れた両目を開けた。


「……あ……。え……わ、私……?」
「……イシェリア。少し身体を見せて下さいね」
「えっ!? や……ちょ、待っ――」


 イシェリアの制止に構わず、ユーリは彼女のシャツを膝下の裾から首元まで大きくめくり上げ、勢い良く頭から脱がせる。


「……っ!!」


 イシェリアの身体のあちこちに、何かで打たれたような、くっきりとした朱色の痛々しいみみず腫れがあり、噛まれて歯型が残った裂傷も無数にあった。
 それはどれも、ドレスを着ていると見えない箇所にあって。
 二の腕の裏側や太腿の付け根など、痛みを酷く感じる場所にもビッシリとつけられていた。
 桃色の乳首にも裂傷の跡があって――

 王城を離れて数日も経っているのに、こんなにクッキリと痣が残っているのは、恐らく痣が暫く消えないような特殊な物で打たれたのだろう。
 噛み跡も、歯を立て深く噛まれたに違いない。


「…………」


 ユーリの唇が、血が滲むほど強くきつく噛み締められる。


「う……。み、見ないで下さい……。こんな……こんな醜い身体――」


 イシェリアが涙目で自分を抱きしめて身体を隠そうとしたのを、ユーリは彼女の両手首を片手で掴み、頭の上で優しく押さえ付けた。


「醜くなんて決してありません。とても……すごく綺麗です。いつまでも見ていたいくらいに。――嘘ではありません、僕の本心です」
「え……」
「この二年間、酷く辛く……苦しい思いをされてきたのですね……。助けることが出来ず、本当に申し訳ありませんでした……」
「えっ!? いえっ、そんな――貴方が謝ることでは……っ!」


 ユーリが余りに辛そうな声で謝ってきたので、イシェリアは慌てて首を横に振る。


「痛みは……?」
「あ、いえ……。今はもう大丈夫です……」
「そう……良かった。……せめてものお詫びとして、“上書き”してもよろしいですか?」
「う、“上書き”……?」
「貴女をうんと気持ち良くさせたい」


 ユーリはハッキリとそう言うと頭を下げ、イシェリアの首筋に唇を這わせ始めた。
 イシェリアは彼の突然の行動に目を白黒させる。


「え、あ……えっ!?」
「大丈夫、決して痛くしません。約束します。ですので、どうか僕に身体を委ねて下さい」
「……っ」


 ユーリはイシェリアのすぐ耳元でそう囁くと、彼女の上半身に唇と舌を這わせていく。
 特に、朱くミミズ腫れになっている部分と噛み跡の部分を優しく口付けされ舐め上げられ、イシェリアは耐え切れず喘ぎ声を漏らしてしまった。


「ふふ……いいですよ。我慢せずに声を出して下さい。貴女の可愛い声を、僕はもっと聞きたい。……聞かせて欲しい」
「う……あ……」


 クスリと笑うユーリに、イシェリアは顔全体を赤くさせて口をパクパクさせる。

 そして、ユーリの口がイシェリアの胸の先端を軽く咥えると、彼女の身体がビクリと跳ねた。
 咥えながら舐め、優しく吸い上げる度、彼女はピクピクと身体を震わせる。もう片方の乳首にも同じことをし、彼女から甘い声を出させた。

 ユーリは大きく息をつくと一旦頭を上げ、イシェリアの脚を開かせた。そして、太ももの内側にも唇と舌を這わせる。
 ミミズ腫れと噛まれた部分は念入りに舐める。嫌な思い出を塗り替えられるようにと願いを込めて。


「――イシェリア」
「あ……。は、はい……」
は、何もされてない……ですよね?」


 ユーリは下着で隠されている場所を指で優しく撫でると、彼女の微かに息を呑む音が聞こえてきた。


「……っ。脱がせますよ」
「えっ!? やだっ、だめ――駄目です……っ!」


 慌てたイシェリアの阻止より早く、ユーリは一旦脚を閉じさせてスルリと下着を取り除くと、再び大きく開かせる。


「っ!!」


 性交していないのは一目で分かった。そこは綺麗な桃色のままだったからだ。
 しかし、その柔らかい部分にもいくつか深い歯型の跡があり、頭を覗かせているプックリとした小さな芽にも、噛み跡のような赤い一筋の傷があって――


 ユーリの前髪の隙間から、紅く輝く鋭い光が発せられたのをイシェリアは見た。


 それは、背筋が凍るくらいの、凄まじい憤怒の紅い光で――


 イシェリアの身体が、本能的に殺気を感じ取り、ブルリと大きく震えた。


「……“上書き”、しますね。遠慮せずに声を出して構いませんから」


 ユーリは何度も深く息を吸って吐くと、イシェリアの秘所に顔を埋め、そこを丹念に舐め始めた。
 半分隠れている小さな芽は、口に含ませ、舌で転がしながら優しく吸い上げる。決して噛んだりはしない。
 何度もそれを繰り返され、イシェリアの内側からグングンと何かが迫り上がってきて。


「あっ、ああぁッッ!!」


 やがてそれが頭の中で真っ白になって弾け飛び、身体がビクビクと波打った。
 コザックの“お仕置き”の時にいつも感じていた激痛とは全く違う、激しいけれど酷く心地良い快感だった。

 グッタリとベッドに身体を沈ませて乱れた息を整えていると、溢れてきた愛液を舐め終わったユーリが、イシェリアの身体を優しく抱きしめてきた。
 そして、彼女の頭を静かに撫でる。


「イシェリア、もう一度おやすみなさい。今度はきっと、良い夢が見られると思いますよ」
「……ユーリ、さん……」
「はい……?」
「ありがとう……ございま……す――」


 イシェリアは重くなった口を開き何とか言葉を出すと、すぅっと瞼を閉じて意識を手放した。



「……イシェリア……。イシェリア、本当に……ッ」



 ユーリは切なそうに眉根を顰め、唇をギュッと噛み締めると、眠るイシェリアの額と頬に何度も唇を落とし、彼女の華奢な身体を守るように包み込んだのだった――



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