前略陛下、金輪際さようなら。二度と私の前に姿を見せないで下さい ~全てを失った元王妃の逃亡劇〜

望月 或

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16.暗殺者の粗相 *

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 イシェリアは、ユーリの隣で身体をカチンと固めていた。
 彼はまだ眠っているようだ。相変わらず前髪に隠れて目は見えないが、軽く半開きになった口からは静かな寝息が聞こえている。
 そして、イシェリアの身体はユーリの腕にガッシリと捕らえられていた。彼女は昨夜脱がされたままで、毛布の中はしっかりと全裸だ。
 互いに密着し、少しでも動こうものなら彼が起きてしまう可能性があるので、本当は抜け出したいのを我慢している。
 

(ううぅっ、会って初日の“初めまして”な暗殺者さんに裸をバッチリと見られてあんなコトされるなんて……っ。そんなの前代未聞ですよね!? 誰も皆経験したこと無いですよねっ!?)


 昨晩のことを思い出し、イシェリアは顔を真っ赤にさせて心の中で頭を抱える。


(……でも……。『綺麗』って言ってくれて、嬉しかった……)


 ユーリの声音と表情で本気で言っていることが分かったので、イシェリアは何だか無性にくすぐったい気持ちになり、彼の胸に熱くなった顔を埋めた。
 そして、ふと太腿に違和感を感じる。


(ん……? 何か硬くて大きくて熱いものが太腿の間に入ってきて擦り付けられているんですけど……? えっ、もしかしてソレって……。えぇっ、ズボンから出してるんですかっ!? 無意識に動かしているんですかっ!? ええぇっ、こんなの一体どうすればいいんですかぁっっ!?)


 イシェリアが心の中で助けの叫びを上げている間も、太腿の間にあるソレの動きは止まらず、徐々に早くなっていく。
 ユーリの息も、動きの早さに比例して「はっ、はっ」と淫らに上がっていった。
 それだけでは足らなかったのか、何とイシェリアの小さな胸に手を伸ばし、迷いなくしっかりと揉み始めたのだ。


「イシェリア……」


 と、ハッキリ呟いて。

(ちょ、えっ!? 本当に寝てるんですか!? ちゃんと瞼を閉じて寝てるんですよねっ!? 目を瞑りながら胸の場所を把握出来るなんて器用ですね!? そんなヘンなところでも器用さを発揮しなくていいんですよ!? 今すぐ逃げていいですかぁっっ!?)


 その時、「くっ、出る――」と低音の呻きと共に、太腿に大量の温かいモノが飛び散った。
 そこでようやく、ユーリが目覚めたようだった。


「……ん、夢……? 何て幸せな――」
「……おはようございます。夢じゃないですよ……」
「っ!?」


 すぐ傍で聞こえてきたイシェリアの声にユーリは驚き、彼女の胸の上に置いている自分の手にも驚き、自身をスラックスから出し彼女の太腿を使って射精をしてしまっていることにも驚き、三重の驚きで身体が硬直してしまっていた。


「……何と……。これは……現実、でしたか……。――いやぁ、過去一で最高な朝の目覚めですね。気持ち良過ぎて昇天するところでした。はははっ」
「えぇっ!? あっけらかんとし過ぎじゃないですかっ!? 私は非常に居た堪れない気持ちで胸が一杯で溢れそうなんですが……!」
「ふむ。こうなったら最後まで致しましょうか」
「はいぃっ!? 『ふむ』じゃないですよっ!? 『こうなったら』って何ですかっ!? その場のノリで人生に大きく影響されるコトをやろうとしないで下さいよっ!?」
「僕は貴女なら大歓迎ですよ。ちゃんとしっかり責任を取りますから安心して下さいね? ちなみに僕は二人以上欲しいです。貴女との子なら絶対に可愛いに決まってますしね。男の子でも女の子でも溺愛する自信がありますよ」
「二人以上言われましてもっ!? 初めてお会いしてまだ二日目の朝ですよねっ!? 何か色々と盛り沢山で間違っていませんかぁっっ!?」
「ふふっ、良かった。朝から元気で何よりですよ」
「それはどうもっ!?」


 イシェリアの勢いのままの返事に、ユーリは可笑しそうにクスクス笑う。そして彼女の額と頬に当たり前のようにキスをすると、自身をスラックスに仕舞い起き上がった。

「はぁ……シーツと毛布を全部洗わなくては」

 とボヤきながらベッドから出る。


「貴女の太腿を勝手に使って汚してしまってすみません。今すぐにタオルを持ってきますね。洗濯した服はもう乾いていると思うので、それも持ってきます。着替えたら朝食にしましょうか」
「あの、シャワーを浴びてきても……?」
「駄目です。僕の“痕跡”を消さないで下さい。昨夜のことを隅々まで鮮明に思い出して、僕のことを一日中ずっと考えながら過ごして下さいね」


 その言葉に、頭の上からプシューッと湯気を噴き出したイシェリアに、ユーリは楽しそうに笑うと寝室から出て行った。


(あの人は本当にもう心臓に悪いです……っ)


 イシェリアは、ユーリがタオルと着替えを持ってくるまで、毛布を頭まで被ってゴロゴロと身悶えていたのであった……。



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