五里霧中

クロム

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兆し

陰湿なお茶

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 放課後、沙耶高も公園に来ることになった。沙耶高は放送部だったが今日は仕事が無いらしい。僕ら五人も当然、部活は無かった。

 僕は帰宅部だ。部活に入る気など毛頭ない。部活に入らなくとも上下関係は身についていると思うし連体感もこの五人と過ごしているのでわざわざ学ぶことはない。僕には部活に入るメリットなどないし、そもそも入ろうと思ったこともなかった。
 アキも同様だ。でも、こいつは家に帰るとギターの練習を一人でしている、ちょっと洒落たやつだ。
 グンマはボランティア同好会に入っている。活動はほとんど祝日や日曜で平日は昼休みに少し集まる程度だそうだ。
 マアナは美術部。といっても絵は家で描いているので美術室に顔を出すことはほとんど無い。両親が芸術家ということもあり家の設備も環境も申し分無いらしい。一度彼女の作品を見せてもらったこともあるが、抽象的すぎて、ただ、すごい、という言葉しか出なかった。
 カミさんは元放送部。現帰宅部だ。放送部に入っていたらしいが男子部員の激しい求愛行動に愛想を尽かし、退部したらしい。その男子部員の中には沙耶高の姿もあったらしい。
    
 公園に着くと僕らは草原に座り込む。円になるよう集まると一人一人1日の感想を言ったり、あるテーマについて議論したりすることになっている。

 今日は沙耶高の紹介から始まりそうだ。グンマが議長を務める。
「今日は沙耶高について話そう。彼について詳しく知っている人はいるか?」
「自分で紹介させたらいいじゃないの?」
「そうだな、沙耶高、頼んだ。」
 沙耶高は少し間を置くとハキハキした声で自己紹介を始めた。
「俺の名は沙耶高。放送部に入っている。あとは特に無いなー。好きな食べ物は唐揚げ、とか?嫌いな教科は・・」
「いや、もういいわ。そんなことよりもっと深いエピソードが聞きたい。」
「カミさんは沙耶高に冷たいね。なんかあったの?」
「別に。」
「分かったよカミさん。もっと深い話ね。それは小学校の頃の話だ。俺には一人の彼女がいた。とても小さくて可愛かったよ。でも、ある日彼女は俺の前から姿を消したんだ。探しても探しても見つからない。どこへ消えたのだろう。ある日、俺はとうとう彼女を見つけた。彼女は僕の友達の手に収められていた。僕の愛した彼女は消しゴムでしたー。」
「えっ。そういうオチかよ。」
「微妙すぎるな。面白くもないけどつまんんくもない。」
「えーっちょっと、みんなもっと笑ってよ!あー悔しい。」
 そのあと、しばらくして解散した。

 家に帰るとカミさんから電話がかかってきた。

「沙耶高っていうやつ危険よ。近づかない方がいいわ。あいつ中一の時、放送部で私に告ってきたんだけど、きっぱり断ったの。なのに、まだ諦めていなかったみたいだわ。」
「それは考えすぎじゃないかな。だって僕がカミさんと一緒に昼ごはん食べてるの知らなかったんじゃ。」
「そうかしら。あなたの後をついていけば、普通に中庭にたどり着くじゃない。それに、あいつ、グンマは初対面のくせにやけに余裕ぶっていたじゃない。」
「でも、あいつクラスでハブられているらしぜ。一緒に昼ごはん食べるくらい、いいんじゃないの?」
「昼ごはん食べるぐらい、ねー。あなた、何にもわかってないのね。私は本当はあなたと二人で食べたいのよ?」
「はは、冗談はよせよ。まあとにかく、沙耶高は様子見だな。そんな大きな問題には発展しないと思うんだがなー。」
「そうだといいわね。ところでさあ、トッシー。今度の日曜二人でデートに行かない?」
「え、二人で?五人じゃないの?」
「もちろんよ。私とあなただけ。カラオケとか映画とかさ。」
「ふーん、分かった。開けとくよ。」
「楽しみに待ってるわ。」
 電話がやっと切れた。
 一体何だったんだろう。沙耶高に気をつけろ、って忠告か。確かにあいつはちょっと乱暴な面もあるけど、そんな悪いやつとは思えないな。
 
 僕は宿題をきちんと終わらせるとベッドに潜り込んだ。そして、そのままぐっすり眠ることができた。
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