8 / 8
兆し
陰湿なお茶
しおりを挟む
放課後、沙耶高も公園に来ることになった。沙耶高は放送部だったが今日は仕事が無いらしい。僕ら五人も当然、部活は無かった。
僕は帰宅部だ。部活に入る気など毛頭ない。部活に入らなくとも上下関係は身についていると思うし連体感もこの五人と過ごしているのでわざわざ学ぶことはない。僕には部活に入るメリットなどないし、そもそも入ろうと思ったこともなかった。
アキも同様だ。でも、こいつは家に帰るとギターの練習を一人でしている、ちょっと洒落たやつだ。
グンマはボランティア同好会に入っている。活動はほとんど祝日や日曜で平日は昼休みに少し集まる程度だそうだ。
マアナは美術部。といっても絵は家で描いているので美術室に顔を出すことはほとんど無い。両親が芸術家ということもあり家の設備も環境も申し分無いらしい。一度彼女の作品を見せてもらったこともあるが、抽象的すぎて、ただ、すごい、という言葉しか出なかった。
カミさんは元放送部。現帰宅部だ。放送部に入っていたらしいが男子部員の激しい求愛行動に愛想を尽かし、退部したらしい。その男子部員の中には沙耶高の姿もあったらしい。
公園に着くと僕らは草原に座り込む。円になるよう集まると一人一人1日の感想を言ったり、あるテーマについて議論したりすることになっている。
今日は沙耶高の紹介から始まりそうだ。グンマが議長を務める。
「今日は沙耶高について話そう。彼について詳しく知っている人はいるか?」
「自分で紹介させたらいいじゃないの?」
「そうだな、沙耶高、頼んだ。」
沙耶高は少し間を置くとハキハキした声で自己紹介を始めた。
「俺の名は沙耶高。放送部に入っている。あとは特に無いなー。好きな食べ物は唐揚げ、とか?嫌いな教科は・・」
「いや、もういいわ。そんなことよりもっと深いエピソードが聞きたい。」
「カミさんは沙耶高に冷たいね。なんかあったの?」
「別に。」
「分かったよカミさん。もっと深い話ね。それは小学校の頃の話だ。俺には一人の彼女がいた。とても小さくて可愛かったよ。でも、ある日彼女は俺の前から姿を消したんだ。探しても探しても見つからない。どこへ消えたのだろう。ある日、俺はとうとう彼女を見つけた。彼女は僕の友達の手に収められていた。僕の愛した彼女は消しゴムでしたー。」
「えっ。そういうオチかよ。」
「微妙すぎるな。面白くもないけどつまんんくもない。」
「えーっちょっと、みんなもっと笑ってよ!あー悔しい。」
そのあと、しばらくして解散した。
家に帰るとカミさんから電話がかかってきた。
「沙耶高っていうやつ危険よ。近づかない方がいいわ。あいつ中一の時、放送部で私に告ってきたんだけど、きっぱり断ったの。なのに、まだ諦めていなかったみたいだわ。」
「それは考えすぎじゃないかな。だって僕がカミさんと一緒に昼ごはん食べてるの知らなかったんじゃ。」
「そうかしら。あなたの後をついていけば、普通に中庭にたどり着くじゃない。それに、あいつ、グンマは初対面のくせにやけに余裕ぶっていたじゃない。」
「でも、あいつクラスでハブられているらしぜ。一緒に昼ごはん食べるくらい、いいんじゃないの?」
「昼ごはん食べるぐらい、ねー。あなた、何にもわかってないのね。私は本当はあなたと二人で食べたいのよ?」
「はは、冗談はよせよ。まあとにかく、沙耶高は様子見だな。そんな大きな問題には発展しないと思うんだがなー。」
「そうだといいわね。ところでさあ、トッシー。今度の日曜二人でデートに行かない?」
「え、二人で?五人じゃないの?」
「もちろんよ。私とあなただけ。カラオケとか映画とかさ。」
「ふーん、分かった。開けとくよ。」
「楽しみに待ってるわ。」
電話がやっと切れた。
一体何だったんだろう。沙耶高に気をつけろ、って忠告か。確かにあいつはちょっと乱暴な面もあるけど、そんな悪いやつとは思えないな。
僕は宿題をきちんと終わらせるとベッドに潜り込んだ。そして、そのままぐっすり眠ることができた。
僕は帰宅部だ。部活に入る気など毛頭ない。部活に入らなくとも上下関係は身についていると思うし連体感もこの五人と過ごしているのでわざわざ学ぶことはない。僕には部活に入るメリットなどないし、そもそも入ろうと思ったこともなかった。
アキも同様だ。でも、こいつは家に帰るとギターの練習を一人でしている、ちょっと洒落たやつだ。
グンマはボランティア同好会に入っている。活動はほとんど祝日や日曜で平日は昼休みに少し集まる程度だそうだ。
マアナは美術部。といっても絵は家で描いているので美術室に顔を出すことはほとんど無い。両親が芸術家ということもあり家の設備も環境も申し分無いらしい。一度彼女の作品を見せてもらったこともあるが、抽象的すぎて、ただ、すごい、という言葉しか出なかった。
カミさんは元放送部。現帰宅部だ。放送部に入っていたらしいが男子部員の激しい求愛行動に愛想を尽かし、退部したらしい。その男子部員の中には沙耶高の姿もあったらしい。
公園に着くと僕らは草原に座り込む。円になるよう集まると一人一人1日の感想を言ったり、あるテーマについて議論したりすることになっている。
今日は沙耶高の紹介から始まりそうだ。グンマが議長を務める。
「今日は沙耶高について話そう。彼について詳しく知っている人はいるか?」
「自分で紹介させたらいいじゃないの?」
「そうだな、沙耶高、頼んだ。」
沙耶高は少し間を置くとハキハキした声で自己紹介を始めた。
「俺の名は沙耶高。放送部に入っている。あとは特に無いなー。好きな食べ物は唐揚げ、とか?嫌いな教科は・・」
「いや、もういいわ。そんなことよりもっと深いエピソードが聞きたい。」
「カミさんは沙耶高に冷たいね。なんかあったの?」
「別に。」
「分かったよカミさん。もっと深い話ね。それは小学校の頃の話だ。俺には一人の彼女がいた。とても小さくて可愛かったよ。でも、ある日彼女は俺の前から姿を消したんだ。探しても探しても見つからない。どこへ消えたのだろう。ある日、俺はとうとう彼女を見つけた。彼女は僕の友達の手に収められていた。僕の愛した彼女は消しゴムでしたー。」
「えっ。そういうオチかよ。」
「微妙すぎるな。面白くもないけどつまんんくもない。」
「えーっちょっと、みんなもっと笑ってよ!あー悔しい。」
そのあと、しばらくして解散した。
家に帰るとカミさんから電話がかかってきた。
「沙耶高っていうやつ危険よ。近づかない方がいいわ。あいつ中一の時、放送部で私に告ってきたんだけど、きっぱり断ったの。なのに、まだ諦めていなかったみたいだわ。」
「それは考えすぎじゃないかな。だって僕がカミさんと一緒に昼ごはん食べてるの知らなかったんじゃ。」
「そうかしら。あなたの後をついていけば、普通に中庭にたどり着くじゃない。それに、あいつ、グンマは初対面のくせにやけに余裕ぶっていたじゃない。」
「でも、あいつクラスでハブられているらしぜ。一緒に昼ごはん食べるくらい、いいんじゃないの?」
「昼ごはん食べるぐらい、ねー。あなた、何にもわかってないのね。私は本当はあなたと二人で食べたいのよ?」
「はは、冗談はよせよ。まあとにかく、沙耶高は様子見だな。そんな大きな問題には発展しないと思うんだがなー。」
「そうだといいわね。ところでさあ、トッシー。今度の日曜二人でデートに行かない?」
「え、二人で?五人じゃないの?」
「もちろんよ。私とあなただけ。カラオケとか映画とかさ。」
「ふーん、分かった。開けとくよ。」
「楽しみに待ってるわ。」
電話がやっと切れた。
一体何だったんだろう。沙耶高に気をつけろ、って忠告か。確かにあいつはちょっと乱暴な面もあるけど、そんな悪いやつとは思えないな。
僕は宿題をきちんと終わらせるとベッドに潜り込んだ。そして、そのままぐっすり眠ることができた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる