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第1章「ジョニー、自殺する」
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俺は昼近くに目覚めると、数日ぶりに勤め先の製薬工場に赴いた。
タイムカードの置いてある事務所に入ると、すぐにネズミ顔の工場長が俺の姿を見つけ、いそいそとやって来た。
「これはこれはジョニー君、ずっと無断欠勤してたと思ったら、ランチタイムにご出勤かね。随分と君も偉くなったもんだな」
工場長が臭い息をまき散らしながら、いつものようにネチネチと、俺にイヤミを言い始めた。
「――クソ喰らえ!」
「はあ………!?今、なんと言った!?」
一瞬、工場長の顔が強張り、鼻息で白い鼻毛が揺れた。
「みんな、聞いたか?こいつは今、わしに向かってなんて言った?」
工場長は精一杯の虚勢を張って、俺をあざ笑いながら事務員たちの方を振り向いた。
「クソ喰らえって言ったんだよ、ボケ!頭だけでなく、耳まで悪いのかよ!」
「――ジョニー、貴様はクビだ!」
「言われなくても辞めに来たんだよ、バーカ!」
「で、で、で、出てゆけッ!!」
激怒のあまり、声を震わせながら、工場長が怒鳴った。
「ヤダね!まだ、用事が残ってるんだ」
そう言って俺が事務所を出てゆこうとすると、工場長が背後から俺の肩を掴んだ。
いや、掴もうとしたのだが、工場長の指は俺の肩の上を虚しく滑り、空を掴んだ。
「えっ……!?えっ………!?」
工場長は必死になって、両手で俺の腕や首や頭を掴もうとしたが無駄だった。
俺の身体はまるで滑らかな薄い粘膜が貼ってあるようで、ツルツル滑って掴むことができなかった。
「いい加減にしろ!!」
俺は振り向きもせず、背後でギャーギャー騒いでいる工場長の鼻っ柱に裏拳を喰らわせた。
工場長は鼻血を吹き出しながら、無様に床に尻餅をついた。
「ぼ、暴力を振るったぞ!け、警備員を呼べ!」
工場長は涙目で鼻を押さえながら喚いた。
事務所を出た俺は、社員食堂に向かって工場の中庭を悠然と歩いて行った。
彼の手の甲には工場長の鼻血がべっとりとついていた。
俺は顔をしかめ、サッと右手を一振りした。
まるでレインコートについた雨粒の様に、鼻血はきれいに地面に落ちて行った。
彼の手の甲には全く傷も痛みもなかった。
「よし、よし……!」
俺は手の甲をさすって、満足げにうなずいた。
社員食堂に入ると、大勢の作業服や防護服を着た行員たちが長テーブルに座り、トレイに入った豚のエサのようなランチを食べていた。
俺は周囲を見渡して、恋人のマリーの姿を探した。
マリーは他の女どもとは発するオーラが違っているのですぐに見つかった。
ブロンドの長い髪にブルーアイ、グラビアモデルのようなゴージャスなスタイル。
マリーはこんな工場で働くのは、場違いないい女だった。
二人はハイスクール時代からの付き合いで、お互い日本のアニメファンという共通の趣味もあり、不思議と馬が合った。
工場中の男どもがマリーを狙っている。
さえないひ弱な俺がマリーと付き合っていることを、工場中の人間が不思議に思っていた。
マリーは茶色の紙袋から昨夜の残り物を詰めたタッパー取りを出し、他の女子工員達と一緒に食事をしているところだった。
「マリー………」
俺が背後から呼びかけると、マリーは驚いて立ち上がった。
「ジョニー!?今まで、どうしていたの!?」
「………………………」
「何日も無断欠勤して!電話にも出ないし、アパートに行っても誰もいないし………」
「――今日はお別れを言いに来たんだ、マリー」
タイムカードの置いてある事務所に入ると、すぐにネズミ顔の工場長が俺の姿を見つけ、いそいそとやって来た。
「これはこれはジョニー君、ずっと無断欠勤してたと思ったら、ランチタイムにご出勤かね。随分と君も偉くなったもんだな」
工場長が臭い息をまき散らしながら、いつものようにネチネチと、俺にイヤミを言い始めた。
「――クソ喰らえ!」
「はあ………!?今、なんと言った!?」
一瞬、工場長の顔が強張り、鼻息で白い鼻毛が揺れた。
「みんな、聞いたか?こいつは今、わしに向かってなんて言った?」
工場長は精一杯の虚勢を張って、俺をあざ笑いながら事務員たちの方を振り向いた。
「クソ喰らえって言ったんだよ、ボケ!頭だけでなく、耳まで悪いのかよ!」
「――ジョニー、貴様はクビだ!」
「言われなくても辞めに来たんだよ、バーカ!」
「で、で、で、出てゆけッ!!」
激怒のあまり、声を震わせながら、工場長が怒鳴った。
「ヤダね!まだ、用事が残ってるんだ」
そう言って俺が事務所を出てゆこうとすると、工場長が背後から俺の肩を掴んだ。
いや、掴もうとしたのだが、工場長の指は俺の肩の上を虚しく滑り、空を掴んだ。
「えっ……!?えっ………!?」
工場長は必死になって、両手で俺の腕や首や頭を掴もうとしたが無駄だった。
俺の身体はまるで滑らかな薄い粘膜が貼ってあるようで、ツルツル滑って掴むことができなかった。
「いい加減にしろ!!」
俺は振り向きもせず、背後でギャーギャー騒いでいる工場長の鼻っ柱に裏拳を喰らわせた。
工場長は鼻血を吹き出しながら、無様に床に尻餅をついた。
「ぼ、暴力を振るったぞ!け、警備員を呼べ!」
工場長は涙目で鼻を押さえながら喚いた。
事務所を出た俺は、社員食堂に向かって工場の中庭を悠然と歩いて行った。
彼の手の甲には工場長の鼻血がべっとりとついていた。
俺は顔をしかめ、サッと右手を一振りした。
まるでレインコートについた雨粒の様に、鼻血はきれいに地面に落ちて行った。
彼の手の甲には全く傷も痛みもなかった。
「よし、よし……!」
俺は手の甲をさすって、満足げにうなずいた。
社員食堂に入ると、大勢の作業服や防護服を着た行員たちが長テーブルに座り、トレイに入った豚のエサのようなランチを食べていた。
俺は周囲を見渡して、恋人のマリーの姿を探した。
マリーは他の女どもとは発するオーラが違っているのですぐに見つかった。
ブロンドの長い髪にブルーアイ、グラビアモデルのようなゴージャスなスタイル。
マリーはこんな工場で働くのは、場違いないい女だった。
二人はハイスクール時代からの付き合いで、お互い日本のアニメファンという共通の趣味もあり、不思議と馬が合った。
工場中の男どもがマリーを狙っている。
さえないひ弱な俺がマリーと付き合っていることを、工場中の人間が不思議に思っていた。
マリーは茶色の紙袋から昨夜の残り物を詰めたタッパー取りを出し、他の女子工員達と一緒に食事をしているところだった。
「マリー………」
俺が背後から呼びかけると、マリーは驚いて立ち上がった。
「ジョニー!?今まで、どうしていたの!?」
「………………………」
「何日も無断欠勤して!電話にも出ないし、アパートに行っても誰もいないし………」
「――今日はお別れを言いに来たんだ、マリー」
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