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第3章「ジョニー、お見舞いに行く」
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パトカーが停車すると同時に、空き地に停まっていた二台の車がヘッドライトを点灯した。
手に手に銃を持った十名程の男たちの黒い影が、ヘッドライトに照らされて闇の中に浮かび上がった。
「彼らはフィフスストリートの暗殺部隊の精鋭だぜ!」
運転席の警官が、少し興奮して自慢げに言った。
「やれやれ、人気者はつらいねぇ」
俺はペドロ刑事を落ち着かせるために、わざとうんざりした表情で軽口をたたいた。
「ジョニー?お前、いつからそんな肝の据わった男になったんだ?」
「俺は余命いくばくもない不死身の男だからね」
「何、言っとる!冗談を言ってる場合じゃないんだぞ!」
俺としてはハリウッド風の気の利いたジョークを言ったつもりだったが、ペドロ刑事は眉をしかめ、蒼ざめた顔で怒鳴った。
と、車内に銃声が響いた。
助手席の警官が、不意打ちで運転席の警官を撃ち殺したのだ。
「な……な………!?」
ペドロ刑事は驚きのあまり言葉が出てこない。
助手席の警官は、ペドロ刑事に向かって肩をすくめた。
「仕方ないだろ?分け前が減るじゃねぇか」
助手席の警官はパトカーから降りて、待ち構えていた集団に愛想笑いを浮かべながら手を振った。
「エリックさん!約束通り、ジョニーを連れて来ましたよ!」
エリックと呼ばれたリーダーらしき男は、全体に金メッキが施され、宝石が埋め込まれたケバケバしい拳銃を取り出すと無言で警官を撃った。
警官は愛想笑いを浮かべたまま、地面に崩れ落ちた。
「な……な………!?」
ペドロ刑事は再び目を丸くして驚くだけで、言葉も出てこなかった。
「仕方ないだろ?分け前が減るからな」
俺は皮肉を込めて、吐き捨てるように言った。
しかし、ペドロ刑事が殺されてしまったら、仕方ないではすまない。
速攻で奴らを倒さないといけない。
爬虫類のように冷たく薄気味悪い顔をしたエリックが、銃をかまえたまま無表情でこちらに近づいて来た。
「セラベラム!サポートを頼む!」
俺は後部座席のドアから飛び出し、地面を転がった。
エリック達が一斉に俺に銃口を向けた。
「かしこまりました!」
セラベラムも翼を広げ、パトカーの屋根をすり抜けて出てきた。
俺は待ち構えているギャングの一団に向かって、駆け出した。
「パパ!声を出さなくても、頭の中で考えるだけでよろしいのですよ。私たち、心で通じ合っていますもの」
セラベラムは付かず離れず、俺のすぐ横を浮遊している。
「右前方にジャンプして下さい」
俺が地面を思い切り蹴ると、一気に四メートル程の高さまでジャンプした。
まるで靴の裏にバネがついているような感触がした。
ギャング達は驚いて、俺を見上げた。
だが、さすがに精鋭部隊なだけあって、全員がすぐに俺に照準を合わせると銃の引き金を引き、銃声が闇を切り裂いた。
「手前の赤いシャツを着ている男にキックして、カラシニコフを奪って下さい」
「カラシニコフって何だ?」
「失礼しました。AK-47自動小銃のことです。もっとも、あれはAK-47のコピー品ですが……」
俺はセラベラムの指示通り、赤シャツの男を蹴り倒し、そいつが持っていた自動小銃を奪った。
「連射モードに切り替えて下さい。これで射撃のヘタなパパでも当たります」
「余計なお世話だ!」
俺がもたもたと自動小銃の切り替えレバーをいじっている間も、エリック達は銃弾の雨を俺に向けて降らせたが、当然俺には一発も当たらなかった。
「撃てえッ!もっと撃つんだ!!」
エリックが必死の形相で部下に命令し、自分でも何度も金ピカのピストルの撃鉄を起こしては引き金を絞った。
「その位置ですと、流れ弾がペドロ刑事に当たる危険があります。もう三歩、右へ移動して下さい」
俺は場所を移動してから自動小銃の引き金を引いた。
「銃身をもっと下げて、全体にばらまくようにして下さいね」
自動小銃の銃弾が、花火のような音を立てて撃ち出され、ギャング共は次々と地面に倒れていった。
この間、わずか数秒の出来事だった。
唖然としてペドロ刑事がパトカーから出て来て、地面に倒れているエリック達と俺の顔を交互に見つめた。
「――――ジョニー!お前ひとりでこいつらを倒したのか!?」
「いえ。セラベラムもお手伝いしました」
セラベラムが異議を唱えたが、もちろん、彼女の声はペドロ刑事には聞こえなかった。
「ペドロさん。後始末、頼んますよ!俺、一人で家に帰りますから」
「いえ。セラベラムも一緒です」
手に手に銃を持った十名程の男たちの黒い影が、ヘッドライトに照らされて闇の中に浮かび上がった。
「彼らはフィフスストリートの暗殺部隊の精鋭だぜ!」
運転席の警官が、少し興奮して自慢げに言った。
「やれやれ、人気者はつらいねぇ」
俺はペドロ刑事を落ち着かせるために、わざとうんざりした表情で軽口をたたいた。
「ジョニー?お前、いつからそんな肝の据わった男になったんだ?」
「俺は余命いくばくもない不死身の男だからね」
「何、言っとる!冗談を言ってる場合じゃないんだぞ!」
俺としてはハリウッド風の気の利いたジョークを言ったつもりだったが、ペドロ刑事は眉をしかめ、蒼ざめた顔で怒鳴った。
と、車内に銃声が響いた。
助手席の警官が、不意打ちで運転席の警官を撃ち殺したのだ。
「な……な………!?」
ペドロ刑事は驚きのあまり言葉が出てこない。
助手席の警官は、ペドロ刑事に向かって肩をすくめた。
「仕方ないだろ?分け前が減るじゃねぇか」
助手席の警官はパトカーから降りて、待ち構えていた集団に愛想笑いを浮かべながら手を振った。
「エリックさん!約束通り、ジョニーを連れて来ましたよ!」
エリックと呼ばれたリーダーらしき男は、全体に金メッキが施され、宝石が埋め込まれたケバケバしい拳銃を取り出すと無言で警官を撃った。
警官は愛想笑いを浮かべたまま、地面に崩れ落ちた。
「な……な………!?」
ペドロ刑事は再び目を丸くして驚くだけで、言葉も出てこなかった。
「仕方ないだろ?分け前が減るからな」
俺は皮肉を込めて、吐き捨てるように言った。
しかし、ペドロ刑事が殺されてしまったら、仕方ないではすまない。
速攻で奴らを倒さないといけない。
爬虫類のように冷たく薄気味悪い顔をしたエリックが、銃をかまえたまま無表情でこちらに近づいて来た。
「セラベラム!サポートを頼む!」
俺は後部座席のドアから飛び出し、地面を転がった。
エリック達が一斉に俺に銃口を向けた。
「かしこまりました!」
セラベラムも翼を広げ、パトカーの屋根をすり抜けて出てきた。
俺は待ち構えているギャングの一団に向かって、駆け出した。
「パパ!声を出さなくても、頭の中で考えるだけでよろしいのですよ。私たち、心で通じ合っていますもの」
セラベラムは付かず離れず、俺のすぐ横を浮遊している。
「右前方にジャンプして下さい」
俺が地面を思い切り蹴ると、一気に四メートル程の高さまでジャンプした。
まるで靴の裏にバネがついているような感触がした。
ギャング達は驚いて、俺を見上げた。
だが、さすがに精鋭部隊なだけあって、全員がすぐに俺に照準を合わせると銃の引き金を引き、銃声が闇を切り裂いた。
「手前の赤いシャツを着ている男にキックして、カラシニコフを奪って下さい」
「カラシニコフって何だ?」
「失礼しました。AK-47自動小銃のことです。もっとも、あれはAK-47のコピー品ですが……」
俺はセラベラムの指示通り、赤シャツの男を蹴り倒し、そいつが持っていた自動小銃を奪った。
「連射モードに切り替えて下さい。これで射撃のヘタなパパでも当たります」
「余計なお世話だ!」
俺がもたもたと自動小銃の切り替えレバーをいじっている間も、エリック達は銃弾の雨を俺に向けて降らせたが、当然俺には一発も当たらなかった。
「撃てえッ!もっと撃つんだ!!」
エリックが必死の形相で部下に命令し、自分でも何度も金ピカのピストルの撃鉄を起こしては引き金を絞った。
「その位置ですと、流れ弾がペドロ刑事に当たる危険があります。もう三歩、右へ移動して下さい」
俺は場所を移動してから自動小銃の引き金を引いた。
「銃身をもっと下げて、全体にばらまくようにして下さいね」
自動小銃の銃弾が、花火のような音を立てて撃ち出され、ギャング共は次々と地面に倒れていった。
この間、わずか数秒の出来事だった。
唖然としてペドロ刑事がパトカーから出て来て、地面に倒れているエリック達と俺の顔を交互に見つめた。
「――――ジョニー!お前ひとりでこいつらを倒したのか!?」
「いえ。セラベラムもお手伝いしました」
セラベラムが異議を唱えたが、もちろん、彼女の声はペドロ刑事には聞こえなかった。
「ペドロさん。後始末、頼んますよ!俺、一人で家に帰りますから」
「いえ。セラベラムも一緒です」
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