剣舞踊子伝

のす

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第二章

17話(R18)

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明後日には皆、文官としての持ち場を離れ、それぞれの軍に従属して行動することになる。
軍として最前線に身を置くと言うことは、もしかしたら、これが最後の宴になるかも……そう思うと、春蕾はこの賑やかな席さえもどこか楽しめずにいた。



「春蕾、災難だったな。まさか飛龍がお前を選ぶとは。結局、司家の者である限り、戦場から逃れられないのかも知れぬな」

「私もなぜ選ばれたのか…ですが、兄上と共に戦える事、誇りに思っております」

「私もだ。春蕾が戦に出る日が来るとは思いもしなかったが…そう言えばここに来る前、父上と話をしてきた。とても喜んでいたぞ」

「父上が…」

「蓮花も春蕾に会いたがっていた。いつも春蕾を可愛がっていたからな」



兄上との会話に少しだけ平穏な時間が流れていたのに、突然飛び出した一言で、場の空気は一変することになる。



「今宵は、かの有名な“剣舞の踊り子”は来ないのですか?」



その声に皆が一斉に龙仔空の方を見た。
この男はいついかなる時も冷静沈着で表情ひとつ変えず、何を考えているのか分からない男だ。




「剣舞の踊り子は、太子殿下の妃になられたお方。こんなむさ苦しい席には来ないよ」

「剣舞の踊り子…妃?」



劉帆が苦笑いを浮かべながらそう言うと、兄上はキョトンとした顔で春蕾の様子を伺っている。
王の宴の時には父上も兄上も戦の後で治療をしていた為に出席していなかったのだ。
確かに春蕾は剣舞を舞ってくれと頼まれていたはずだが、“剣舞の踊り子”が妃になったと言うことは、他に舞手がいたと考えるのが筋だ。何しろ春蕾は男だ。

つまり、あの夜、王にみそめられ太子の夜伽に呼ばれた“剣舞の踊り子”が春蕾であるなどとは、知る由もないのだ。



仔空は淡々と言葉を続ける。



「あの妃は他の妃とは違うと聞いています。後宮に籍を置かず、どの家の者かも分からず、名すらも知らされていない」

「それがどうかしたのか」



盃を煽りながら興味なさそうに言う飛龍にも怯むそぶりを見せず、さらに続けて言う。



「あの女は縁国の密偵ではないかと考えています」


バンッ

「何だって?!」


机を叩くように手をついて立ち上がる兄上。それを横目に見つつ、また酒を煽りながらありえないと否定する飛龍。


「王が直々に選ばれた妃を否定するのか?首が飛ぶぞ。」

「なぜ否定できるのですか。あの女について誰も知らないではないですか。」


仔空の言うことも理解できないわけではない。太子の妃など簡単になれるものではないが、踊り子はたった一夜で成し遂げた。
剣舞の腕が一流だったと言うことを考慮したとして、そんな逸材がこの国にいたのなら、なぜ今まで噂にもならなかったのか。

何よりどこの誰なのか、後宮や王宮を知り尽くしている官僚たちさえも知らないとなれば、怪しいこと極まりない。



「太子殿下。一度、妃殿下への謁見をお許しいただけませんか」



太子は少し考えた後、ゆっくりと頷いた。


「良いだろう。妃の潔白は早めに証明した方が良いからな。明日にでも私の部屋へ来るが良い。妃と共に出迎えよう」


太子は仔空に向けて言葉を放つが、その視線は先の春蕾を捉えている。つまり、明日は太子の元にいろと言うわけだ。

どうしてこうも話が拗れていくのか。




あぁ、もう。こうなったら浴びるほど酒を飲んで全て忘れてやるんだ。
明日は明日の風が吹く。














月が天高く登った頃、宴会はまだまだ続いていた。
机の上の豪華な食事は食い散らかされ、酒瓶の多くは空になっている。



そろそろお開きかと思われた時、完全に酔っ払っている劉帆が机に突っ伏したまま切り出した。



「れい~」

「は、はい!」

「私がなぜ君を選んだか分かるか~」



突拍子もない質問に磊は頭を悩ませる。
正直な所、未だになぜ自分が選ばれたのか分かっていない。
文官としてもまだまだ未熟で、何の取り柄もない自分が将軍と並んで盃を交わしていることすら不思議だと言うのに。



磊は恐る恐る答える。



「ちょうど良い…駒だから、でしょうか…?」



その答えを聞いた劉帆はブンブンと首を横に振り、ハズレだと笑う。
そして、酒で崩れた顔でふにゃっと笑い答える。



「私は君に惹かれてるんだ~」

「なっ、何を言ってるのです!私は春蕾様のように美しくもなければ、家柄も」

「君は賢くて、勇敢で、礼儀正しい。そんでもって可愛い~」

「なな何を言うのです!//私は男ですよ!//」



磊がそう言うと、すかさず飛龍が口を挟む。



「劉帆は男色家で有名だが、知らないのか?」

「し、知ってます…けど…っ」

「春蕾を守ろうと飛び出した君の姿に惚れたのさ。あぁ、この子を守ってやらなきゃって」

「劉帆将軍…」

「余興はそこまでで結構です。男色など悍ましい。明日に備えて私はこれで」




2人の雰囲気が一瞬変わったのを見逃さなかったのか、割って入るように口を開いた仔空は無表情のまま席を立ち、太子に深く一礼すると、そのまま振り返らずに部屋を出て行った。

それに続いて太子と兄上も席を立つ。



「では私も休むとしよう」

「太子殿下がお休みになるのであれば、私も」

「兄上」

「春蕾。明日にでも蓮花の元へ顔を出してやってくれ。」

「はい。兄上は…」

「私は仔空と共に戦略を練る予定がある。私には構わず屋敷へ寄るといい」

「はい」



部屋に残ったのはベロベロに酔った劉帆と、それに捕まっている磊。そして飛龍と春蕾。


「わ、私もこれで」


春蕾も早く部屋に戻ろうと立ち上がったその時…



「っ!」



ぐわっと視界が揺れて、地面が傾いたのが見えた。



「危ないだろ!急に立つ奴があるか!」



春蕾の体は飛龍に受け止められていた。顔は険しく言葉には棘があるが、抱き止める腕は妙に優しくて混乱する。

慌てて離れようとするも、力が入らずへなへなと飛龍の胸に傾れ込むしかない。
そんな春蕾を見て、大きなため息をついた後、飛龍はヒョイと肩に担いで部屋を出る。


「春蕾様!大丈夫ですか?!」


磊の心配そうな声が聞こえた気がしたが、それに返事をする余裕もない。


「こいつの事は心配しなくていい。劉帆はお前に任せるぞ」




飛龍の肩に布切れのようにぶら下がる春蕾は、何かできるほどの力も残っておらず、自分の状況が危険だと言うことも察知できずにいた。
当然連れて行かれる先は自分の部屋ではないのに。







「うっ…気持ち悪い…」

「おい。そこで吐くなよ」

「ぅぅ…で、出る…」

「お、おい!!春蕾!」







……






















「ん……」

「起きたか」

「んん……って、な、なんで裸っ//」

「黙って入っていろ」



目が覚めるとそこは湯船の中だった。
頭の後ろ、至近距離から聞こえる低い声。
おそらく今、湯船の中に座った飛龍の足の間に自分が座っていて、後ろの飛龍に体を預けている状態だ。
いつからこんな…なんでこんな状況になっているんだ?!


「な、なんで…//」

「散々飲んで酔っ払った挙句、私の肩で吐いたのだ。」

「ぇ………」



将軍の肩に…吐いた……?
普通の文官なら今頃天国、いや地獄行きだ。呆れたようなため息に背筋が凍る。それにしても、さっきから何か背中に当たってる気が…



「……あの…」

「なんだ」

「さっきから背中に何か当たって…」

「当てているのだが?」

「も、もうあがります!助けていただいてありがとうございました!あっ!!!!」



飛龍の方に向き直りバサっと水飛沫をあげて立ち上がるが、またぐらっと視界が揺れ、今度はそのまま飛龍の胸の中に倒れ込んだ。



バシャーーーン



ポタ…ポタ……ポタ…



「あ、ご、ごめんなさ…ぃ…」



目を開くと、目を閉じたまま眉間に皺を寄せている飛龍がいた。
いつも頭の上で一纏めにしている黒髪は下ろされ、そこから水が滴り落ち、鍛え上げられた肉体が惜しげもなく晒されている。



「…」

「へ、ぁ…ぇ…と…//」



いつの間にか開かれていた目は春蕾を捉えており、慌てて目を逸らすが、目のやり場に困って目を泳がせていると、フッと鼻で笑って腰に手を回してきた。



「私の身体に見惚れていたのか?」

「ち、違う//」



引き寄せられ、唇が触れそうなほど近くでクイっと顎を押し上げられる。
それをふいっと顔を背けて振り払うと、今度は腰を抱いていた手が体の線を撫で、尻を掴んだ。


「ぁっ…は、離してください!」

「なぜだ?」



ニヤリと笑う顔は、風呂の湯気の中で見たからか、まだ自分が酔っているからか、とても妖艶で大人の色気が溢れて見える。このままじゃまた流されるっ!



「こ、こんなことをする場所ではない!」

「お前が吐かなければこんなことにはならなかっただろう。恨むなら自分を恨め」



飛龍はもう一度春蕾を自分の足の間に座らせると、後ろから手を回して春蕾の胸を揉みしだき、片方の手で雄を掴んで上下に扱き始め、首筋から耳に舌を這わせてくる。

湯船に浸かって血行が良くなった体はなぜかいつもより快感を拾いやすくて、春蕾の体はすぐにビクビクと反応し始めた。



「ま、ぁっ…//待って//ぅぅ…ん//」

「誰かが入ってくるかも知れぬぞ。あまり声を出さない方が良いのではないか?春蕾」



そうだった。ここは誰でも入れる浴場だ。いつ誰が来るかわからない。ならばこんな事をしているなんてバレたら…



「離して…っ//ぁっ…だめっ//ぁぁ…」

「まさか賢いお前が湯の中に出すような事はないよな?」

「ぅ…ぁぁぁ…ん…//っっ~//」



悩ましげに眉を顰めて体を震わせながら快感に耐える春蕾を飛龍は楽しそうに煽る。
ビクビクと震えは全身に伝わり、額には汗が滲み、目には涙を浮かべて荒く呼吸を繰り返す。



「も、らめっ…ふ…ぅぅ…//離してっ…お願いっ!ヒグッ…ぅぅ…//ふぇぃろっぁぁっ…離してぇっぁぁっ!んっ~~~////」



欲を吐き出してクタッと飛龍の胸に倒れ込み、恥ずかしさやら悔しさやらで無抵抗になった春蕾を立たせて後ろを向かせると、細い腰を掴んで一思いに突き上げる。



「ぁぁっっ!!!//」


何度も後ろから腰を打ちつけて、春蕾の奥を抉るように中を探り、良いところばかりを攻め立てる。
水面が波打ち、バシャバシャと水が弾ける音と共に、激しく2人の肌がぶつかった。

湯に反射して光を放つ蒸気した桃色の肌の春蕾に、飛龍はさらにモノを大きくし、キュンっと春蕾が締め付ける。


「ぁっ…ぁっ…んんっ//ふ、ぁっ//」


何度も何度もしつこいくらいに奥を突かれ、春蕾は何度も絶頂する。
もう足に力が入らなくなっても、飛龍がその腰を支えて、また突き上げる。

そして、一層律動が早くなり、最奥を突き上げた後、ドクドクと春蕾の中で肉棒が波打って中を飛龍ので満たされる。

それを引き抜くとすぐにドプリ…と白濁が内腿を伝った。

その後飛龍の手で体を洗われ、また湯船に入れられる。
今度は水中で軽々持ち上げて膝の上に乗せ、柔らかくなった蕾にまた指を入れてきた。



「は、ぅ…//熱ぃ…//」

「湯が中に入ったか?」

「ん…ぁぁ…も、やめっ//」

「これほど柔らかければ、簡単に中に入れられる」

「っ!!もう無理ぃ…//」



飛龍はそう言うと、春蕾の抵抗も虚しく揃えた膝裏に後ろから手を入れて体を持ち上げ、そのまま自身の上にゆっくりと下ろした。



ズププ…


一度入り始めると後は体重でゆっくりと沈んでゆく体は、難なく飛龍の肉棒を飲み込んだ。



「はぅぅっ…//」



さっきまでの激しいそれとは違い、ギュッと後ろから包み込むように抱きしめられ、リラックスしたように肩に飛龍の顎が置かれ、顔を覗き込まれる。



「もう抵抗は終わりか?」

「ぅるさ…ぃ…//」

「ふ…生意気な奴め」

「…フン」

「綺麗な髪だ…」



濡れた春蕾の髪を指で優しく掬い上げて、何度か口付ける。



「…っ…夜鈴が手入れをしているからな!」

「肌も女のように滑らかだ」



今度は背中や肩や手の甲に口付ける。



「私はっ」

「女ではない。分かっている。…なぜこんなにも、私はお前に惹かれるのだろうな」



いつもの飛龍からは考えられないような甘い言葉や行動が次々に飛び出してきて、これは酔ったまま見ている夢なのかとも考えてしまう。そうでなければ…



「なっ//さては酔っているのか?!////」

「酔ってなどおらぬ。ただ…風呂で見るお前の色気に充てられたのだ」



それはこっちのセリフだと言い返そうとして、なんとか思いとどまった。
そんな事を言えば飛龍にまた揶揄われそうだったから。



「明日、太子のとこに行くのか?」

「はい。太子殿下の命令に背く事はできません」

「………明後日には、私の元に戻るのだな」

「軍に従属しますが、貴方のものになるわけではありませんからっ//」

「ふ…明後日が待ち遠しいな」

「私は明後日など迎えたくありません」



冷たく言い放つと、飛龍は春蕾の頬を片手で掴みマジマジと鋭い目に見つめられる。



「強気でいられるのも今のうちだぞ。司春蕾」

「そ、それはどうでしょう//」

「身体が私を求めるようになるまで毎晩お前を抱いてやる。遠征中にお前は私の手の中に落ちる」

「フン…あり得ませんね!!そんな事…//」








……


















「何があり得ない、だ。こんなに無防備な姿を晒すなど、危なっかしくて放っておけぬではないか…」


あの後、脱衣所で眠ってしまった春蕾に服を着せ、横抱きにして部屋まで運ぶ。
腕の中に抱かれた寝顔はどこか幼く、幸せそうで、とても戦場に向かう者とは思えぬほどに穏やかで美しい。

そんな春蕾の額にそっと口付ける口角は、わずかに上がるのだった。
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