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三
イスヒス帝国(2)
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岩トカゲの肉体を加工して建つ城の内部、その中でもひときわ寂れた雰囲気のある牢はかつて王立魔法騎士団が保持していた敷地内にある。土塗の壁が背中を刺すように冷たい。エルストとベルは羽織っていたローブやマントを、イスヒス兵によって没収された。ついでに言えば、ベルの杖やアギが入ったナップサックも押収された。エルストも丸腰である。ベルは黒いワンピース姿である。開く気配のない鉄格子製の檻にエルスト、ベル、それから赤毛の少女が投獄されている。三人の手足にはいかにも頑丈そうな鎖が填められ、土壁から身動きが取れないように接続されている。
エルストが魔法使いでないことはすでにイスヒス兵へ伝わっている。エルストが羽織っていたローブはただの布きれだったからだ。そのかわりエルストと一緒にいたベルへと魔法使いの容疑が向けられ、ベルはみごとアギという加工済みドラゴン一式を奪い取られたという始末である。かれこれ小一時間は、この三人は同じ体勢のままだ。手首から続く鎖は頭上から垂れ下がっているため、三人はやむなく棒のように立っている。
「はあ~……」
ベルは盛大に溜め息をついた。ベルは可能な限り腕を振り回したりしながら鎖で遊んでいる。
「ここに入れられてから考えてたんですけど……エルスト様ってそーゆーとこあるタチっぽいですよね」
するとエルストが隣のベルを見た。
「そういうとこって?」
ベルは答える。
「見境がないっていうか、勢いだけっていうか」
「ねえ、それ僕に対する悪口だよね。そうだよね。それにさあ、じゃあ、だよ、ベル。ねえ。じゃあ、そこの女の子が殴られてるのに黙って放っておけたっていうの、ベルは?」
エルストはベルの頭の向こうに見える赤毛の頭を見た。ベルはエルストと赤毛の少女のあいだに挟まれている。
「それとこれとは話が違うじゃーないですか」
ベルは両足を浮かせ、手首を吊る鎖に体重をかけたりしながら反論する。
「放っておけないからといってむやみに飛び出せばいいってもんじゃないって言ってるんです。そりゃあ助けたいですよ、私だって。助けたいとか許せないって気持ち、知ってるもん。でも……計画って言葉、ほら、あるじゃないですか?」
「だいたいこんなところに連行されるなんて聞いてないよ!」
「誰が住んでた城だって思ってるんてすか、もー! こんなとこ作るほうも悪いです!」
ベルは思い切り床に足を打ちつけた。
「あーもうウルサイなっ。賑やかなアギがいないからって君がかわりに騒ぐことないだろ!」
「そう……そこなんですよ……アギ~! どうしてさらわれちゃったの! 今どこにいるのー! もう一緒にお料理できないなんてさびしい! アギも絶対さびしがってる! 絶対助けてあげるからねー!」
「しずかにしろ!」
ベルを牽制したのは三人を連行したイスヒス兵だった。いつのまにか三人の入る檻の前に立っている。
「イスヒス兵だ……ふーんだっ。ベロベロベー! 私たちをここから出しやがれ! べろべろ!」
ベルは舌を出しながら挑発している。
「おまえ! 僕たちをここから出せ!」
すぐさまエルストも怒鳴りつけた。
「ああ出してやる」
イスヒス兵は答えた。
「えっ、意外にあっさり……自分で言っておいてなんだけど、意外すぎる……あ、わかった! 何か企んでるでしょ! ねえ、アイツそうに違いありませんよ、エルスト様」
「おい、何を企んでるんだ?」
ベルの忠告を受けたエルストがイスヒス兵を睨みながら尋ねた。
「出すのは貴様だけだ」
「エルスト様だけ? なんで? 私たちは?」
ベルは不服そうだ。
「小娘たちはそこにいろ。じきに命令が下される」
イスヒス兵が檻の中に入るや否やエルストの両手足に填められた鎖を解いた。そしてエルストに檻を出るよう顎で促す。エルストはベルと顔を見合わせる。どちらも不安げな面持ちだ。エルストは次に、心配そうに視線をよこす赤毛の少女を見た。少女はミントのような色のワンピース姿である。少女のまとっていた黄色のストールもまた没収されていた。少女はおびえた様子だ。
「ベル、その子のこと、よろしく」
エルストはふたたびベルと目を合わせる。
「ひとりで大丈夫ですか、エルスト様?」
ベルが言うと、エルストはおかしそうに口角を上げた。大丈夫ではなかった。
「がーっ! ごーっ。ごごごーっ」
同じころ、エルストやベル、赤毛の少女が囚われていた牢とは別の部屋にてアギもまた捕えられていた。今は木製のテーブル上で豪快にいびきをかいている。
「こいつ、うるさいな……加工済みドラゴンって、いびきかくのか?」
武装した見張りの兵士はひとり首をかしげている。
「ムニャムニャ……ベルぅ、ステ~キ! んごご……ねばー・えんでぃんぐ……ぴゅるるるる」
「寝言まで……」
アギの周囲にはエルストや赤毛の少女から没収したローブやストール、それからエルストの武器が乱雑に置かれていた。イスヒス兵は苛立った顔でアギを見ていた。
王立魔法騎士団の拠点である本部内は薄暗く、石造りの内装は物々しい雰囲気を漂わせている。いや、今はもう帝国軍の本部なのだろう。エルストの見慣れない制服を着た兵士たちがみな剣を装備した格好で巡回している。ひとりの兵士に連れられて歩くエルストに、巡回の兵士たちは嫌疑の目を向けている。橙色のオイルランプがエルストの不快に満ちた表情を照らしていた。二年前までこの城に暮らしていたエルストの勘が正しければ、エルストは今、謁見の間に連行されている。
石の階段をのぼる。岩トカゲと同化するように建てられた城はどこもかしこも石造りだ。エルストは途中、二年前の誕生日に会食していた広間の横を通りすがった。
立ち止まり、広間の中を確認したかった。だがイスヒス兵はエルストに歩を進めることを強制した。あの広間の中に、もしかするとまだ家族がいるかもしれない! それは夢や幻想だと知りながら、エルストは目の奥を熱くさせるのだった。
やがて寒気がする中、エルストは、やはり謁見の間へ繋がる扉の前に立たされた。扉の両端にはイスヒス兵がいる。見張りなのだろう。
「テレーマ陛下。例の者をお連れいたしました」
エルストを連行してきたイスヒス兵が謁見の間奥へと語りかけた。
すると扉の奥から、まだ若そうに思われる男の声が聞こえてくる。
「入れ」
「失礼いたします。ほら、入れ」
ここまでエルストには鎖はおろか縄すら縛られていない。エルストには不思議だった。ふつう罪人は、常時捕らえておくべきものだとエルストは認知していたからである。重い扉を開けたイスヒス兵はエルストを謁見の間内部へ押しやった。エルストの背後で扉が閉まる。エルストの目の前には、真紅の絨毯の先に、玉座に乗っかる黒髪の男の姿がある。
「おまえが皇帝とやらか?」
エルストは黒髪の男をじっと見つめる。紫色のコートを羽織った長い黒髪の男は、うつむきがちに玉座にいたかと思うと、エルストの声に反応してその顔を上げた。
「まず、てめえの名前を聞こうか」
黒髪の男は若そうだった。エルストよりも少し歳上だろうか。ランプの明かりが男の顔を照らし出す。
「おまえに名乗るような名前はないね」
己が丸腰であることも忘れ、エルストは威圧的に出た。すると黒髪の男は鼻で笑い、玉座の上で足を組み替えた。
「殺す前にせっかく名前を聞いてやろうと思ったんだが。残念だな」
「殺す……僕が水色の目をしているからか?」
エルストは赤毛の少女が言っていたことを忘れてはいない。
「お? なんだ、我が帝都の情勢は知ってるようだな」
黒髪の男は愉快げに口角を上げている。
「我が帝都だって? おい。いま、王都が誰のものって言ったんだ、おまえ?」
エルストは水色の瞳を細め、黒髪の男を睨みつける。
「この俺様のものだって言ったんだよ。この都をいまだ王都なんぞと呼ぶ、古臭い風貌したおぼっちゃんよ」
黒髪の男にそう言われるなり、エルストはこぶしを握り、悔しげに奥歯を噛み締めた。エルストにとって、もうここには王国の気配などさらさらないことを突きつけられた気分であった。だが、エルストはまぎれもなく、あの王国の王子だ。
「いいさ……名乗ってやる。僕がここで名乗ることには意義がある」
やがてエルストは高らかに叫ぶ。
「僕の名はエルスト・エレクトラ・エルオーベルング! この王国の王子だ!」
エルストのそばで、イスヒス兵は、こいつまさか本当にあの王国の、などとのたまった。その隙にエルストはイスヒス兵の腰から剣を奪い抜き取る。一方黒髪の男はどうだろうか。黒髪の男はやけに落ち着き払っており、にやついた顔を崩してはいない。
「それが、俺がてめえを殺す理由だ、クソ王国のクソ王子!」
黒髪の男は立ち上がった。エルストが握る剣の切っ先は、この黒髪の男に向けられていた。
エルストが魔法使いでないことはすでにイスヒス兵へ伝わっている。エルストが羽織っていたローブはただの布きれだったからだ。そのかわりエルストと一緒にいたベルへと魔法使いの容疑が向けられ、ベルはみごとアギという加工済みドラゴン一式を奪い取られたという始末である。かれこれ小一時間は、この三人は同じ体勢のままだ。手首から続く鎖は頭上から垂れ下がっているため、三人はやむなく棒のように立っている。
「はあ~……」
ベルは盛大に溜め息をついた。ベルは可能な限り腕を振り回したりしながら鎖で遊んでいる。
「ここに入れられてから考えてたんですけど……エルスト様ってそーゆーとこあるタチっぽいですよね」
するとエルストが隣のベルを見た。
「そういうとこって?」
ベルは答える。
「見境がないっていうか、勢いだけっていうか」
「ねえ、それ僕に対する悪口だよね。そうだよね。それにさあ、じゃあ、だよ、ベル。ねえ。じゃあ、そこの女の子が殴られてるのに黙って放っておけたっていうの、ベルは?」
エルストはベルの頭の向こうに見える赤毛の頭を見た。ベルはエルストと赤毛の少女のあいだに挟まれている。
「それとこれとは話が違うじゃーないですか」
ベルは両足を浮かせ、手首を吊る鎖に体重をかけたりしながら反論する。
「放っておけないからといってむやみに飛び出せばいいってもんじゃないって言ってるんです。そりゃあ助けたいですよ、私だって。助けたいとか許せないって気持ち、知ってるもん。でも……計画って言葉、ほら、あるじゃないですか?」
「だいたいこんなところに連行されるなんて聞いてないよ!」
「誰が住んでた城だって思ってるんてすか、もー! こんなとこ作るほうも悪いです!」
ベルは思い切り床に足を打ちつけた。
「あーもうウルサイなっ。賑やかなアギがいないからって君がかわりに騒ぐことないだろ!」
「そう……そこなんですよ……アギ~! どうしてさらわれちゃったの! 今どこにいるのー! もう一緒にお料理できないなんてさびしい! アギも絶対さびしがってる! 絶対助けてあげるからねー!」
「しずかにしろ!」
ベルを牽制したのは三人を連行したイスヒス兵だった。いつのまにか三人の入る檻の前に立っている。
「イスヒス兵だ……ふーんだっ。ベロベロベー! 私たちをここから出しやがれ! べろべろ!」
ベルは舌を出しながら挑発している。
「おまえ! 僕たちをここから出せ!」
すぐさまエルストも怒鳴りつけた。
「ああ出してやる」
イスヒス兵は答えた。
「えっ、意外にあっさり……自分で言っておいてなんだけど、意外すぎる……あ、わかった! 何か企んでるでしょ! ねえ、アイツそうに違いありませんよ、エルスト様」
「おい、何を企んでるんだ?」
ベルの忠告を受けたエルストがイスヒス兵を睨みながら尋ねた。
「出すのは貴様だけだ」
「エルスト様だけ? なんで? 私たちは?」
ベルは不服そうだ。
「小娘たちはそこにいろ。じきに命令が下される」
イスヒス兵が檻の中に入るや否やエルストの両手足に填められた鎖を解いた。そしてエルストに檻を出るよう顎で促す。エルストはベルと顔を見合わせる。どちらも不安げな面持ちだ。エルストは次に、心配そうに視線をよこす赤毛の少女を見た。少女はミントのような色のワンピース姿である。少女のまとっていた黄色のストールもまた没収されていた。少女はおびえた様子だ。
「ベル、その子のこと、よろしく」
エルストはふたたびベルと目を合わせる。
「ひとりで大丈夫ですか、エルスト様?」
ベルが言うと、エルストはおかしそうに口角を上げた。大丈夫ではなかった。
「がーっ! ごーっ。ごごごーっ」
同じころ、エルストやベル、赤毛の少女が囚われていた牢とは別の部屋にてアギもまた捕えられていた。今は木製のテーブル上で豪快にいびきをかいている。
「こいつ、うるさいな……加工済みドラゴンって、いびきかくのか?」
武装した見張りの兵士はひとり首をかしげている。
「ムニャムニャ……ベルぅ、ステ~キ! んごご……ねばー・えんでぃんぐ……ぴゅるるるる」
「寝言まで……」
アギの周囲にはエルストや赤毛の少女から没収したローブやストール、それからエルストの武器が乱雑に置かれていた。イスヒス兵は苛立った顔でアギを見ていた。
王立魔法騎士団の拠点である本部内は薄暗く、石造りの内装は物々しい雰囲気を漂わせている。いや、今はもう帝国軍の本部なのだろう。エルストの見慣れない制服を着た兵士たちがみな剣を装備した格好で巡回している。ひとりの兵士に連れられて歩くエルストに、巡回の兵士たちは嫌疑の目を向けている。橙色のオイルランプがエルストの不快に満ちた表情を照らしていた。二年前までこの城に暮らしていたエルストの勘が正しければ、エルストは今、謁見の間に連行されている。
石の階段をのぼる。岩トカゲと同化するように建てられた城はどこもかしこも石造りだ。エルストは途中、二年前の誕生日に会食していた広間の横を通りすがった。
立ち止まり、広間の中を確認したかった。だがイスヒス兵はエルストに歩を進めることを強制した。あの広間の中に、もしかするとまだ家族がいるかもしれない! それは夢や幻想だと知りながら、エルストは目の奥を熱くさせるのだった。
やがて寒気がする中、エルストは、やはり謁見の間へ繋がる扉の前に立たされた。扉の両端にはイスヒス兵がいる。見張りなのだろう。
「テレーマ陛下。例の者をお連れいたしました」
エルストを連行してきたイスヒス兵が謁見の間奥へと語りかけた。
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「入れ」
「失礼いたします。ほら、入れ」
ここまでエルストには鎖はおろか縄すら縛られていない。エルストには不思議だった。ふつう罪人は、常時捕らえておくべきものだとエルストは認知していたからである。重い扉を開けたイスヒス兵はエルストを謁見の間内部へ押しやった。エルストの背後で扉が閉まる。エルストの目の前には、真紅の絨毯の先に、玉座に乗っかる黒髪の男の姿がある。
「おまえが皇帝とやらか?」
エルストは黒髪の男をじっと見つめる。紫色のコートを羽織った長い黒髪の男は、うつむきがちに玉座にいたかと思うと、エルストの声に反応してその顔を上げた。
「まず、てめえの名前を聞こうか」
黒髪の男は若そうだった。エルストよりも少し歳上だろうか。ランプの明かりが男の顔を照らし出す。
「おまえに名乗るような名前はないね」
己が丸腰であることも忘れ、エルストは威圧的に出た。すると黒髪の男は鼻で笑い、玉座の上で足を組み替えた。
「殺す前にせっかく名前を聞いてやろうと思ったんだが。残念だな」
「殺す……僕が水色の目をしているからか?」
エルストは赤毛の少女が言っていたことを忘れてはいない。
「お? なんだ、我が帝都の情勢は知ってるようだな」
黒髪の男は愉快げに口角を上げている。
「我が帝都だって? おい。いま、王都が誰のものって言ったんだ、おまえ?」
エルストは水色の瞳を細め、黒髪の男を睨みつける。
「この俺様のものだって言ったんだよ。この都をいまだ王都なんぞと呼ぶ、古臭い風貌したおぼっちゃんよ」
黒髪の男にそう言われるなり、エルストはこぶしを握り、悔しげに奥歯を噛み締めた。エルストにとって、もうここには王国の気配などさらさらないことを突きつけられた気分であった。だが、エルストはまぎれもなく、あの王国の王子だ。
「いいさ……名乗ってやる。僕がここで名乗ることには意義がある」
やがてエルストは高らかに叫ぶ。
「僕の名はエルスト・エレクトラ・エルオーベルング! この王国の王子だ!」
エルストのそばで、イスヒス兵は、こいつまさか本当にあの王国の、などとのたまった。その隙にエルストはイスヒス兵の腰から剣を奪い抜き取る。一方黒髪の男はどうだろうか。黒髪の男はやけに落ち着き払っており、にやついた顔を崩してはいない。
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