またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり

文字の大きさ
28 / 56

26 騒ぎと宿舎

しおりを挟む
 王宮の小部屋に通された。馬車から降りてすぐの部屋だった。少し待つとブルース様がやって来た。そしてこう言った。
「リリー、なにがあったのか学院の騒ぎの報告を受けました。すぐにハリソンを頼ってくれて良かったです」

「はい、そのーーわたしは治療が出来ます」と言うと二人はうなずいた。

「なんとなく推測はしていました。ロバートのこととか、ジョンも・・・」とブルース様が言った。
「ミシガン伯爵家に聖女、聖人の血が入ってますね」とハリソン様が言った。

「はい、歴史は長いですから」と答えて、あっと自分でも気がついた。でもそれは誤解なのだ。

「それはあまり関係ないと思います。聖女、聖人について祖父母から話を聞いてますが、最近の小説に出るような存在じゃなかったと伝わっています」

「それを聞かせて貰っても?」とブルース様が言って、ハリソン様も頷いた。

「話していいのか、判断出来ないです。一応、家族はみな、知って・・・ると思いますけど・・・祖父母の話を馬鹿にして聞かなかった?かも・・・ 祖父母の許可がないと、でも治癒魔法を使える人っていないってことはないですよね。その聖女、聖人の血に関しては、入ってないと言う方が正解だと思います」

「治療師はそうですね。騎士団に治療師は所属してますよ。そうですね。治癒魔法を当てにして、部隊に入れたわけではないですよ」とブルース様が言った。


 わたしは曖昧に頷いた。他に取り柄があるとも思えないけど、なにかあるのだろう。

「ただ、騒いでいるのはロバートとアナベルだけです。だから力で押さえて噂にしない。心配することはない。リリーも否定すればいいから。それに王宮魔法士団と言うのは怖い存在ですよ」とハリソン様が笑って言った。

 安心できた。すぐにハリソン様に言ってよかった。

 その後、家でアナベルが煩かった。

「お姉さまみたいな考えなしに魔法は勿体ないです。間違いです。わたしだったらロバート様の治療なんか簡単にできます」と言うので会話も面倒で

「やればいいでしょ。別に誰かに習ったわけでもないわよ。何度もやって覚えたのよ」と言って黙らせた。

 母は

「ロバート様は怪我が治れば騎士団でも出世しますよ」と言うので

「よかったわね。アナベル」とアナベルに言った。

 父は

「最下位で魔法士部隊なんて間違いだ」

「最下位ですけど、間違いなく入団です。署名なさったでしょ!」と思い出させてあげた。

 兄は
「王宮で働くのは甘くないぞ。お前に出来るのか?」

「下級は大変そうですね」と同情してあげた。

 弟は
「姉上はいつもパッとしないよな。治療が出来るなんて誰がそんな馬鹿なことを言い出したんだろうな」

「ロバート様とアナベルよ。ほんとに馬鹿よね」と答えを教えてあげた。補足するとね、カイル、あなたもよ。

 もう、面倒でたまらない。早く家を出たい。



 そして、ある週末パメラとナタリーをわたしの宿舎に連れて行った。

「えーーなんか可愛い」「ちょっとぉぉお。ここで暮らすっていいなぁ」「わたしも住みたい」と二人は家じゅうをと言っても家と言うより部屋だが、遠慮なく見て回ってこう言っている。

 わたしは、お茶を入れて二人をテーブルに座らせた。

「さて、もうだいぶ前になるけど、あの日リリーが帰ってからの話をしましょうか」とパメラが改まった。

「ロバート様とアナベル様が教室に来ました。ロバート様は治療してくれって騒いで、アナベル様はお姉様どういうことですか?って騒いで、授業が始まるまで教室にいました」とパメラが言った。今は学院では騒いでいないと言うか黙らせてくれた。

 それから、ナタリーが
「これは絶対に秘密を守るし今しか口にしないけど、あの馬ってリリーが治療した?いえ、返事しないで。

 わたしの推察を言ってるだけ。あの馬が故障したのをかなりの人が知ってるって父が不思議がっていたの。

 お兄様が乱暴に乗ったのを見た人もね。その馬が競技会に出て元気に完走した。厩務員が優秀なのかって思ったっですって、父はね。

 そして馬も強いって思ったそうなの。だってね。乗っているのは自分の娘の友達で確かに上手だけど。

 馬を活かすほど上手とは言えない・・・それ以上に馬が素晴らしくて欲しくなった。

 だけど生徒会のことで違和感とかって言うのを感じたそうで、譲って良かったって・・・でも時々、馬のことを考えてしまって、もしかしたらリリーが治療?って思ったって、そしてロバート様の試合のこととか考えたって。

 そしてこの話は終わり。忘れてね。わたしも忘れた」

 三人は顔を見合わせて微笑みあった。するとナタリーが
「あっ忘れてた。あの王子様。ハリソン様はすごく上手な乗り手だと父は申してました。

 いけない!王子様を評価なんて。これも忘れて」と言った。

「忘れました」「忘れましたよ、確かに忘れました」とパメラとわたしはナタリーに真面目な顔で言って、それから吹き出した。
しおりを挟む
感想 146

あなたにおすすめの小説

姉妹差別の末路

京佳
ファンタジー
粗末に扱われる姉と蝶よ花よと大切に愛される妹。同じ親から産まれたのにまるで真逆の姉妹。見捨てられた姉はひとり静かに家を出た。妹が不治の病?私がドナーに適応?喜んでお断り致します! 妹嫌悪。ゆるゆる設定 ※初期に書いた物を手直し再投稿&その後も追記済

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

私ではありませんから

三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」 はじめて書いた婚約破棄もの。 カクヨムでも公開しています。

義務ですもの。

あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

婚約破棄の場に相手がいなかった件について

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。 断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。 カクヨムにも公開しています。

処理中です...