黙ってすっこんどいたら良かったのに

朝山みどり

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14 テンプレすぎて無理にでも笑う

 カオリは社内いじめに関していろいろ調べてみた。手柄の横取りはされた。悪口言われた。根も葉もある悪口とない悪口両方。無視はされてないが、くすくすされた。・・・・好きに笑う権利は誰でも持ってるけどね。
 仕事を与えない。与えすぎる。・・・・・・

 仕事を与えないは・・・・歓迎だ。本を持って行こう・・・倉庫整理をしろと言われた時に備えてトレーナーを持っていく。食堂対策でお弁当をアサトが作ってくれた。

 対策としてはこれくらいかなと、いつもより多めの荷物を持ってカオリは出勤した。

 面倒なので自分からの挨拶もなしで、机に座るまえに上に乗せられていたゴミを片付けた。

 PCをつけると、人事からメールが届いていて・・・・倉庫の整理係りに任命されていた。

 さっそく、席を立ち倉庫に行った。文書の倉庫で保管期限が切れたものを処分用の袋にいれる作業を割り当てられていた。



 書類は主に経費の関連で、接待として使われた物だ。深く追求すればおもしろい店名があるが、忘れることにした。

 だが、カオリの目はンダーと文字を捉えていた。

 なにこれ、ラベンダーランドの入場券、ホテル。レストラン・・・このレストランってキャラが挨拶に来る・・・・お土産代も・・・・・

 迷わずカオリは領収書にスマホを向けた。領収書は涙を飲んで袋に入れた。禿げてしまえ。腹だけ出ろ。鼻水出ろ。虫歯になれ。というような呪いを向けながら・・・・

 お昼になると非常階段に出てランチを取った。今日のお弁当はミニハンバーグにうずらの卵を串に刺したフライとピクルス。デザートに梨だった。それにおやつ用に、モナカが足してあった。そうよ肉体労働の時は嬉しいと大満足でカオリはご馳走様とアサトに手を合わせたのだった。

 おやつの時間になるとカオリは休憩室に行った。

「カオリ先輩、お疲れ様です・・・・机にいないからびっくりしました」とミナちゃんがカオリの隣に座った。

「よくここがわかったね」とミナちゃんの足元を見てカオリは

「その靴、わたしのだよね。トオルさんの許可を貰ったの?」

「そうよ、トオルのプレゼントでしょ。だからわたしが履いてもいいの!」

「なるほどね・・・・」とカオリが答えると

「それじゃぁ」とミナちゃんは出て行った。


 山のお寺に仏像を見に行ける程度には鍛えているが、くたくたになったカオリは着替えもせずにヨロヨロと会社を出た。

 アサトは会社の近くまで迎えに来ていた。

「レディ、お疲れかと思ってここで待ってました」と荷物を受け取ると、かばうようにゆっくりと歩き出した。

 その姿をキヨミちゃんがスマホに収めていた。キヨミちゃんはそれから二人をつけて車に乗り込む所までを動画に収めた。

 車に乗るなりうとうとするカオリを見て、アサトはカオリの会社に怒りを感じたが、移動は違法とは言えない。
 今日はゆっくり疲れをとって、休んで貰おうといつもより慎重に運転した。

 食欲がなさそうだったが、梅酒を飲むと元気が出たようで、混ぜ寿しを食べるカオリにエビフライをすすめるアサトに冷徹な企業家のおもかげはなかった。

 食後に柚子羊羹とお茶を楽しみながら、今日のお弁当とおやつのお礼を言われた。

「なんというか、テンプレの社内いじめが展開してちょっと笑えた。トレーナー持って行っといてよかった。それに昔の接待の領収書ってちょっとおもしろかった」とカオリが言うので、

「カオリ、辛かったら会社やめろよ・・・無理して働くのは・・・体壊したら大変だろ・・・」とアサトは労った。

「ありがと、アサト。辛いけど食欲があるから、行けるかと・・・・ここまでされたら、いっそ最後まで見ちゃおうって・・・・・それに、もし泣いて逃げ出すときは電話するから迎えに来て」

「いいぞ、すぐ迎えに行くから・・・・・うん。それがいい・・・明日にでも泣いて電話しろ」

「そう言われると電話したくなくなる」と笑ったカオリの目から溢れた涙に、アサトもカオリも気がつかない振りをした。




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