気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

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第3話 当日

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さて、侯爵家の五人は馬車に乗り込んだ。

「狭いわーー」と言う不満たっぷりのバーバラの声に
「どうしてでしょうね」と夫人が答えた。後に夫人は言った。
(「本当にどうしてなのかわからなかったのです。いつも家族でピクニックに行ってました。馬車は同じです」)
「いつもより早いから眠い」と言う兄の声。
「仕方ないでしょ。アリスの用事があるから」と言うと夫人の声。
アリスはなにも言いたくなくて目をつぶった。
「アリスはいつも忙しくてお父様と話してくれないな」と父の声がしたがアリスは返事をしたくなかった。
兄と妹が不満そうになにか呟いたが、アリスは半分寝ていて意味がとれなかった。
いつも眠かった。いつも疲れていた。いつもお腹が空いていた。
「ついたわ。アリスしっかりして」と夫人に起こされてアリスは目をあけた。
早めの到着で人影は少ない。
アリスはもう火を起こした使に近づいた。
「おはよう。今日のあなたがたはスパーダ家の使用人と言うことね」とアリスは少し笑いながら挨拶すると城の厨房の者たちが
「「「「「おはようございます。その通りです」」」」と答え、アリスは
「出しゃばりのアリスがスペーダ公爵夫人に代わってスープを作ります」と言った。

そうやって話しているうちに人が増えて来て、火も起こって来た。そして王妃とスぺーダ夫人が連れ立ってやって来て小芝居が始まった。

「やだ、アリスったら、スープを作りたいの?わがままね」と王妃が言うと

「アリス様、そう言われても・・・王妃殿下どうしましょう」とスぺーダ公爵夫人がオロオロして様子で訴え

「仕方ないわアリスは言いだしたら聞かないから」と王妃がため息混じりに言うと

「・・・・・・」使用人一同があきれた表情を隠すために下を向いた。

「いいわよ。アリス仕方ないわね。夫人にお礼を言ってね」と王妃が締めくくった。

そして二人は去って行った。王妃は国王やアリスの両親が集まって手を振っている中に合流した。
スぺーダ夫人も別の集団に合流した。その集団に混じると夫人はなにか言った。すると全員がアリスのほうを見てわーーと笑った。

アリスはため息をつくと野菜を切った。鍋に野菜と肉を入れた。香ばしい匂いがした。アリスが大きな杓文字で鍋を混ぜていると一人が水を入れてくれた。

「あとはやりますんで座っていて下さい」と言われたアリスはちょっと下がって椅子に座った。

さて、ピクニックを経験してみましょうかとアリスはあたりを歩いた。王太子たち同年代の集まりがある。仲間に加わった。
「お姉様、次の慰問先ですが」とバーバラが言い出したので
「ここでその話はやめて」と止めた。
「え!お姉様」とバーバラが言いかけたが
「最近の人気の食べ物のお店ってどんな所?」とまわりに問いかけた。
「それは、自分で焼くワッフルのお店です」
「ほら、アリスも自分でスープを作りたかったでしょ。それに似ています」と言われて
『さっきの小芝居かぁ』と思ったが気にせず続きを待ったが、ブランコの辺りで悲鳴が聞こえた。
『自分に振られるだろうが、呼び出されるまで動かない。主催者はわたくしじゃないわ』とまわりの真似して心配げにそちらをみるだけに止めた。

すると
「アリス様」と王妃の侍女が走って来た。
「なんでしょうか?」とアリスが返事をすると
「怪我人です。急いで下さい」
「わたくしは医者ではありませんよ」とことさら静かに答えると
「怪我人ですよ」とバーバラが咎めるようにアリスに言い同時にエドワードも
「怪我人だぞ」と言った。

アリスはゆっくり立ち上がると
「主催者のスぺーダ公爵夫人はなにしてるのかしら」と全員に聞こえるように言うと侍女についてブランコに向かった。

子供が泣いていた。子供は子守に抱きついて泣いていた。怪我人の親らしき女性が
「どういうことですか?怪我させるなんて」とアリスを見るや食ってかかって来た。
「その子が怪我したことはお気の毒ですが、どうしてわたくしの責任に?」とアリスが言うと
「こんな危ないものを置いた責任です」
「このブランコがあぶないと仰るのですか?」
「新参者を馬鹿にするんですか?」
「いえ、存じ上げずに失礼してました。どちらの家門の」とアリスが聞いていると
「アリス様、うちの息子の再婚相手だ。お披露目はしてないし、ピクニックが終わって届けようと思っていたんだ」と明るい声がした。

「マロン伯爵の御子息ですか?」と不審げなアリスを見て
「まぁいろいろありまして」と言うと
「行くぞ。こんな騒ぎにするんじゃない」と女性の手をとって連れて行った。

すると急に冷たい風が吹いて湖に波が立った。えっと空をみると黒雲が流れて来ると太陽を隠した。
「みなさん、雨が降ります。今日はここまで馬車に急いで下さい」と大声でアリスが言った。
するとすぐに雨が落ちだした。

早かった。全員が馬車に乗るのを確認しようとアリスはちょっと遠くまで散歩に行った人たちが戻ってくるのをびしょ濡れで待った。雨で視界が悪かったが、辺りをみた。料理人も道具を片付けて馬車に乗った。
アリスはほっとして侯爵家の馬車に向かおうとして、棒立ちになった。馬車は一台も残ってなかった。
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