18 / 68
第18話 筋肉痛
しおりを挟む
「アリス、そろそろ時間だね」と横を歩いているアレクに言われて
「あと少し歩きたいです」とアリスは答えた。
「アリス、一度馬車に戻って、ちょっと確認しましょう」とデイビスが合図を送ると馬車が止まった。
三人が馬車に乗り込むと、ラズベリーがお茶を用意していた。
「アリス、血色が良くなりましたね。お茶が終わったらちょっとだけ診察します」
「大丈夫ですね。好きなだけ歩いていいですよ」とデイビスが言うとアレクが
「おい!好きなだけって」と非難がましく言った。
「大丈夫ですよ。無理しても」とデイビスが二人を見ながら言った。
そしてアリスは今、歩いている。アレクがどうしても譲らないので五十分歩いて休憩といった歩き方をしている。
「それにしてもアレク様。外を歩いて日に当たって風に吹かれるっていいですね」とアリスは笑い続けて
「わたくしの遅い歩みに合わせていただいてありがとうございます。迷惑かけてますね。必ずこの御恩」と言いかけたところで
「アリス。君が楽しむのが大事だ。それに体が丈夫だと言っていただろう。証明して貰ったほうがいいしね。まだ歩くんだろ。水を飲んでこれを食べて」とデイビスが言った。
この日アリスはたくさん歩いた。足が棒になるの意味がわかった。それに一日を通して歩いたので、夏の暑さのなかで歩く厳しさ。冬の寒さは、案外歩きやすいといったことを体験した。
デイビスの気遣いで夕食はあっさりしたものだった。
食べながら眠ったアリスの足をマッサージするつもりのラズベリーをデイビスは止めた。
「このままではアリス様は明日」とラズベリーが抗議すると
「いいんだよ、それで、経験したほうがいい。大事なのはそれを見て笑わないことだ」とデイビスが言うと
「お前は・・・だが正しい・・・だが。まぁいい」とアレクが笑いながら言うと
「本当にお二人は」とラズベリーは言うと下がって行ったが、肩が震えていた。
翌日、起き上がろうとしたアリスはびっくりした。体中が痛い。
あちこちをかばいながら、ゴロゴロしているところにラズベリーがやって来て
「アリス様、今日もいい天気ですよ」と言って
「どうしたのですか?具合が?」言うとおでこに手を当てた。
「いや、体中が痛くて・・・」とアリスが返事をするとラズベリーはちょっと考えて
「あっ昨日、たくさん歩いたから。筋肉痛ってこと?まぁ、だから歩くのは。デイビス様を呼んで来ます」と棒読みで言うと
「おはよう、アリス。痛いって?」
「痛い、全部痛い」としかめっ面で答えるアリスを見ると笑えるがデイビスは真面目な顔を維持して
「そうか、こうなったら仕方ない。痛いのを我慢して少しずつ動くしかないね。まずは起き上がって、手伝うからね」とアリスの体を起こした。
「うっ痛っあっ」とか我慢するアリスが可愛くもおかしくてデイビスはことさら怖い顔を作り、ついにはアリスを立ち上がらせた。
「あとはゆっくり歩いて、へんな歩き方になるけど、そこはいいから。食事はここに運ぶから。手で食べられるものがいいかな。病気じゃないから馬車移動はできるけどどうする?ここに今日も泊まってもいいけど・・・」
「がんばって馬車で移動します」とアリスが答えると
「わかった。今日は馬車でおとなしくしてね。休憩のとき少し歩いたらいいから」とデイビスが出て行くとアリスはよちよちと部屋を歩き回った。
やがてラズベリーが食事を持ってくると、苦労してテーブルについて食事を済ませた。
何度目かの休憩ではさほど苦労せずに歩けるようになっていたが、アリスは気がつかなかった。
たが、ホテルへ着いて馬車から降りたとき、痛みが減っていることにやっと気がついて
「体が痛くない。よかったぁ」と喜んだ。
「今日は到着が早かったから少し歩きますか?」とアレクが誘うと
「はい、歩きます」とアリスは元気に答えた。
歩き始めはぎこちなかったアリスも、だんだんちゃんと歩けるようになった。
『明日はまた歩きたがるな。天の山も見え始めるし喜ぶだろうな』とアレクは思った。
「あと少し歩きたいです」とアリスは答えた。
「アリス、一度馬車に戻って、ちょっと確認しましょう」とデイビスが合図を送ると馬車が止まった。
三人が馬車に乗り込むと、ラズベリーがお茶を用意していた。
「アリス、血色が良くなりましたね。お茶が終わったらちょっとだけ診察します」
「大丈夫ですね。好きなだけ歩いていいですよ」とデイビスが言うとアレクが
「おい!好きなだけって」と非難がましく言った。
「大丈夫ですよ。無理しても」とデイビスが二人を見ながら言った。
そしてアリスは今、歩いている。アレクがどうしても譲らないので五十分歩いて休憩といった歩き方をしている。
「それにしてもアレク様。外を歩いて日に当たって風に吹かれるっていいですね」とアリスは笑い続けて
「わたくしの遅い歩みに合わせていただいてありがとうございます。迷惑かけてますね。必ずこの御恩」と言いかけたところで
「アリス。君が楽しむのが大事だ。それに体が丈夫だと言っていただろう。証明して貰ったほうがいいしね。まだ歩くんだろ。水を飲んでこれを食べて」とデイビスが言った。
この日アリスはたくさん歩いた。足が棒になるの意味がわかった。それに一日を通して歩いたので、夏の暑さのなかで歩く厳しさ。冬の寒さは、案外歩きやすいといったことを体験した。
デイビスの気遣いで夕食はあっさりしたものだった。
食べながら眠ったアリスの足をマッサージするつもりのラズベリーをデイビスは止めた。
「このままではアリス様は明日」とラズベリーが抗議すると
「いいんだよ、それで、経験したほうがいい。大事なのはそれを見て笑わないことだ」とデイビスが言うと
「お前は・・・だが正しい・・・だが。まぁいい」とアレクが笑いながら言うと
「本当にお二人は」とラズベリーは言うと下がって行ったが、肩が震えていた。
翌日、起き上がろうとしたアリスはびっくりした。体中が痛い。
あちこちをかばいながら、ゴロゴロしているところにラズベリーがやって来て
「アリス様、今日もいい天気ですよ」と言って
「どうしたのですか?具合が?」言うとおでこに手を当てた。
「いや、体中が痛くて・・・」とアリスが返事をするとラズベリーはちょっと考えて
「あっ昨日、たくさん歩いたから。筋肉痛ってこと?まぁ、だから歩くのは。デイビス様を呼んで来ます」と棒読みで言うと
「おはよう、アリス。痛いって?」
「痛い、全部痛い」としかめっ面で答えるアリスを見ると笑えるがデイビスは真面目な顔を維持して
「そうか、こうなったら仕方ない。痛いのを我慢して少しずつ動くしかないね。まずは起き上がって、手伝うからね」とアリスの体を起こした。
「うっ痛っあっ」とか我慢するアリスが可愛くもおかしくてデイビスはことさら怖い顔を作り、ついにはアリスを立ち上がらせた。
「あとはゆっくり歩いて、へんな歩き方になるけど、そこはいいから。食事はここに運ぶから。手で食べられるものがいいかな。病気じゃないから馬車移動はできるけどどうする?ここに今日も泊まってもいいけど・・・」
「がんばって馬車で移動します」とアリスが答えると
「わかった。今日は馬車でおとなしくしてね。休憩のとき少し歩いたらいいから」とデイビスが出て行くとアリスはよちよちと部屋を歩き回った。
やがてラズベリーが食事を持ってくると、苦労してテーブルについて食事を済ませた。
何度目かの休憩ではさほど苦労せずに歩けるようになっていたが、アリスは気がつかなかった。
たが、ホテルへ着いて馬車から降りたとき、痛みが減っていることにやっと気がついて
「体が痛くない。よかったぁ」と喜んだ。
「今日は到着が早かったから少し歩きますか?」とアレクが誘うと
「はい、歩きます」とアリスは元気に答えた。
歩き始めはぎこちなかったアリスも、だんだんちゃんと歩けるようになった。
『明日はまた歩きたがるな。天の山も見え始めるし喜ぶだろうな』とアレクは思った。
3,729
あなたにおすすめの小説
言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。
紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。
学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ?
婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。
邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。
新しい婚約者は私にとって理想の相手。
私の邪魔をしないという点が素晴らしい。
でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。
都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。
◆本編 5話
◆番外編 2話
番外編1話はちょっと暗めのお話です。
入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。
もったいないのでこちらも投稿してしまいます。
また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。
【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。
木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。
「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」
シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。
妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。
でも、それなら側妃でいいのではありませんか?
どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした
凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】
いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。
婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。
貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。
例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。
私は貴方が生きてさえいれば
それで良いと思っていたのです──。
【早速のホトラン入りありがとうございます!】
※作者の脳内異世界のお話です。
※小説家になろうにも同時掲載しています。
※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)
【完結】わたしの欲しい言葉
彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。
双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。
はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。
わたしは・・・。
数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。
*ドロッとしています。
念のためティッシュをご用意ください。
聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる