気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

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第28話 別れを宣言

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「アリス、いい加減になさい。皆さんになんて態度なの。お父様は寝込んでしまわれたのよ」とメイナード侯爵夫人が立ち上がって言った。
「止めなさい」と侯爵が鋭く言った。

「いやよ。言わせて貰います。アリスあなたのせいで大騒ぎになったのよ。謝りなさい」
「騒ぎとはなんでしょうか?」とアリスが冷静に言うと

「行方不明になるなんて」と夫人が言うと
「置き去りにされただけです」とアリスが言い返した。

夫人は力なく椅子に座ると泣いた。

「本来は当番のスペーダ公爵が全員の避難を確認すべきでは?」とアレクが言うと

「申し訳ありません」とスペーダ公爵が頭を下げた。

「皆さんお引取り下さい」とデイビスが再度言うと

「お願いがあります」と言うとマイルス・ハトンが頭を下げた。

誰も反応しない。

「国王陛下にお願いがあります」とマイルス・ハトンが言うと

「言ってみよ」と国王が応じた。

「「「「ブランコの廃止を中止するよう命じて下さい」」」」と四公爵が声を揃えた。

「アリス様、ブランコがなくなると子供たちが悲しみます。わたくしたちも楽しい思い出のあるブランコです」とマイルス・ハトンが言うとアリスは

「そうですか?」と返事をしたが、なにも言わなかった。

「それだけですか?なにも思わないのですか?」とマイルスが言うと

「一度くらいは乗りたかったなと思いました」とアリスが答えると

「アリス、嘘おっしゃい」とメイナード侯爵夫人がいい

「なんてことだ。アリス」と侯爵がいい

「一緒に並んだだろ」と王太子が言った。

アリスがうんざりした顔で

「廃止とかどうかはわたくしには関係ないと思いますが」と言うと

「乗ったことがないとは?説明して欲しい」と国王が言った。

「並んだのは確かです。楽しみにしてましたもの、それこそ前日から。ですから並びました。もうすぐだと次だとわくわくしました。そしてわたくしの順番が来るとバーバラと侍女がやって来てブランコに乗りました。王太子殿下、あなたは順番を譲りたくないと言うわたくしに妹に優しくしろと言いました。毎回。毎年。あなたなんか大嫌い。譲るなら自分の順番を譲ればいいのに。侍女もバーバラも大嫌い」アリスが言い終わるとメイナード侯爵は

「そんなことが・・・アリス・・・」とつぶやき

「なってないわね躾が」と王妃が侯爵夫人に向かって行った。

「あの侯爵閣下、いちいち驚くのはやめて下さい。わたくし、毎回、申し上げてますよ。ですが、あなたは妹に優しくしろと・・・そして一応わたくしの機嫌をとろうとするのか、アリスが優しいのはわかっているよと頭を撫でました。ほんとうに嫌でした。

そして侍女の質が悪いのはダイナ公爵家から夫人が受け継いだものですか?」と後半はギルバード・ダイナを見ながら言った。

アレクは一瞬笑ったが、無視することにして

「国王が返事をしたらお前たちは退出するのか?」と公爵たちを見ながら言った。

「アリス、大嫌いって・・・謝りたくて待っていたんだぞ・・・知らなかったんだ。父上や母上。姉上まで仕事を押し付けていたことを・・・婚約者じゃないか。助け合おう」と王太子が言い出すと

「待て、王太子。国王の返事が先だ」とアレクが言った。

「ブランコは継続だ。一度も乗っていないとはアリスが可哀想だ。継続だ」と国王が言うと

「わたくしを引き合いに出さないで下さい。ブランコなどどうでも良い。ブランコにもピクニックにも楽しい思い出などありませんので・・・そうだわ。スペーダ公爵家の皆さんがわたくしに当番を押し付けたことを謝罪したいなら、わたくしを見て夫人のお仲間がわーーと笑った理由を教えて下さい。

それにカーラ様と話して見たいですね。カーラ様が手伝うのはいやと言っているからとわたくしにお鉢が回って来ましたのよ。ですからカーラ様と直接」とアリスが早口で言った。

「そうだったな。アリスは・・・いや、ブランコは継続だ。王が決めた」

「ありがとうございます」とスペーダ公爵はかろうじて声が出たが他の三人は黙って頭を下げた。

「スペーダ公爵返事は?アリスの提案に返事は?」とデイビスが言った。

「明日、家族で参ります」と公爵が言うとアリスが急いで

「わたくしが会いたいのはカーラ様だけよ」と言うのにデイビスはうなずくと

「理解したか?」とデイビスはスペーダ公爵に言った。

「お引取りを」とデイビスが言うと公爵たちは、部屋を出て行った。ほっとした者、怒りを隠した者、彼らは一様に項垂れて歩いた。


「随分、時間を無駄にしたな」とアレクは言った。

アリスはふっと笑ってアレクを見た。それから立ち上がると

「メイナード家から籍を抜いて下さい。これを言いに来たのに面倒が待っていたわ」と言った。

「アリス。婚約は破棄するんだ。今まで一緒に過ごせなかった分、楽しく暮らそう。アリス。愛してる」と侯爵が答えると

「家族として過ごしたこともないのに愛してるのですか?」とアリスが侯爵に聞いている。

「愛してる。大事な娘だ」と侯爵が言うと

「でも馬車が窮屈になりますよ。あの日も行きは窮屈だと文句が出てましたし、早起きでも迷惑をかけましたね。

帰りはわたくしがいなくて快適だったのでは?四人だとちょうどいいのでは?それが家族ですね。

わたくしは押し出されました。えーーと寂しいとか悲しいとかないんですよ。忙しくて考える暇もなかったですし、空腹のほうが辛かったですね」と言うと

王太子が
「何故空腹?王太子の婚約者で侯爵令嬢が空腹ってどういうこと?」と言うと

「わたくし、食事をさせて貰えなかったのです。侯爵家はわたくしにお金を使わせたくなかったので、なにかを買うことも出来ませんで」とアリスが答えると

「え?バーバラは持っていたぞ。孤児院に行った帰りにお茶をしたが・・・」と王太子が答えると

「どうしてバーバラが許されて出来ることを、許されていないわたくしが出来ると思うのですか?」とアリスが言うと

「同じ、侯爵家の令嬢ではないか?」と王太子が言うと

「別の人間だから違いがあるのでは?多分、愛してないからでは」とアリスが答えた。

「そんなことない。愛している。アリスの予算もあるんだ」と侯爵が割り込んだ。

「そうなんですか?存じませんでした。もうどうでもいいですけど。それより、侯爵閣下。わたくしは籍を抜く手続きの為にここに来ました。それ以外どうでもいいんです」とアリスが言うと、デイビスが

「すぐに手続きを終えましょう。当然準備は出来ておりますね。執務の心配ならわたしの方で人材を派遣しますから、能力はそれぞれですからね。無理はしないで下さい。それとバートさんとヘドラーさんに会いたいと思いますので調整をお願いします」と言った。

「アリス、話を聞いて」と王妃が立ち上がって言ったが

「もう、お腹一杯。おかわりは、必要ありません」とアリスはきっぱりと言った。王妃はなにも言えずに椅子に座り、王がその背を撫でた。

「頼んだことがなにも出来ませんね。一度部屋に引き取ります」とデイビスが言って

三人は部屋を出た。

部屋を出たところで、アリスは

「アレク様の威を借りました。卑怯なやり方でしたが・・・ありがとうございました」と頭を下げた。

「いや、気にすることない。もっと利用して貰ってもいいぐらいだ」とアレクはアリスに手を差し出しながら言った。
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