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第51話 お祭り
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公爵たちは、なくなった道具をどうするか話し合ったが、決着はつかなかった。
ハトン家は四家で等分にわけて負担しようと提案したが、他の三家は自家に責任はないと主張した。責任のない自家が負担する必要はないとこれは金額の問題ではないのだ。矜持の問題だと言うのだ。
ハトン家は矜持ではない、忠誠の問題だと三家を説得しようとしたが、出来なかった。マイルスは父の公爵に対しても言ってないが、忠誠を見せる場面だと言いたかったが生き残るのはどこかと考えて沈黙を守ったのだ。
結局、特務部が道具を調達した。
お祭りの炊き出しはハトン家が、新品の道具を使って肉と魚を焼く
魚は海の一族が提供してくれることになっている。
ダイナ公爵家はハトン家の手伝い。裏方に徹するように指示された。
スペーダ公爵家はお菓子を出すことになった。
クラーブ公爵家は飲み物と決まった。
当日まで、ハトン家は王宮の調理人に頭を下げて汁物の作り方と道具を使って肉を焼く方法を教わった。一度は自家の庭で肉を焼いて練習した。
その際、特務部に味見をして下さいと依頼をした。そしてマイルスは三公爵家にも、使いかってを学ぶ為に手伝いに来ないかと誘いをかけたのだが、どこも来なかった。
特務部で話を聞いてアレクはアリス デイビス、バート、ヘドラーにラズベリーとライラまで
「視察に行こう」と誘った。
道具を見たアリスは、台の脚のつけねが丈夫になっているのに、気がついた。
角が潰されて丸くなっている。洗いやすいだろうなと思った。
あの鍛冶屋さん、工夫してくれたんだ。とアリスはあのおじさんに感謝した。
「わたくし、スープを作るの得意なんですよ」と言うアリスの言葉は
「それは素晴らしいですね。わたしも練習したんですよ」とマイルスから返されて終わりになった。
「アリス、まかせて待っていよう」と言うアレクはレモンの香りのグラスを渡した。
「わたくし、上手なのに」と言うアリスの声はアレクにしか聞こえなかった。
スープもお肉も美味しかった。
「炊き出しですから、おなかが膨れるのも大事ですので小麦の団子を入れてます」とマイルスが言うのを聞いて
「なるほど、そうだね。貴族だと気づかないかな」とアレクは考えながら答え
「貴族は気づかない所だ。マイルス殿はよく気づかれた」とデイビスも言った。
一同はたくさん食べて、片付ける所まで視察した。
さて、お祭りの当日。アレクの手配したクレールスター皇国からの騎士団が、民が危なくないように、守り並ばせた。
民は順番を守って団子入りのスープを飲み、おなかを満足させた。続いて肉と魚を受け取り、見慣れぬ魚をこわごわ口にして美味しさに驚いた。
皇国からの騎士団。スター騎士団の声がお祭り会場に聞こえる
「たくさん、ありますからゆっくり並んでいいですよ」
「並んでいる間にもっとおなかがすいたらたくさんお代わりできますよ」
この後に笑い声が聞こえる。
「騎士様はどこの制服かい?あまり見ないが」
「クレールスター皇国です。マダム」
「やだね、マダムなんて、ただのおばさんだよ」
更に笑い声が弾けた。
長く伸びた列と食べる人々を観察していたアリスは
「ピクニックで経験したつもりでしたが、たくさん人が集まっても危なくない方法なんて、考えもしませんでした。スター騎士団がいないと最悪、暴動になっていたかも知れませんね。平常な今でも・・・危険ですのに・・・これが災害時なら」とアレクに小声で話しかけた。
「そうだね、アリス。スター騎士団は思ったより優秀だ。これが終わったら、この国の騎士団を指導させよう」と答えた。
言葉の最後の部分で二人はお互いをじっと見た。
「それがいいですね。訓練された騎士団は人々を守れます」とアリスは答えた。
お祭りの終わる時間になった。最後に並んだ人たちはスープのお代わりをして、にこにこと帰って行った。
ハトン家のマイルスは、最後まで売り場に残っていた。椅子に座っていたけれど・・・
ダイナ公爵家は、一応当主とギルバードと何人かが顔を出したが、しっかりと裏方に徹していた。
そして他の公爵家の当主と同じくそうそうに帰って行った。マイルスは自分もそうしたかったが、アレクの『これからの長い付き合い』という言葉と時折感じる視線に、ここにいるほうが良いと思って頑張った。
終わって片付けを目にしながら放心していると
「見てるだけの感想ですが、お皿を洗うのが大変だったのではありませんか?」
「うん?」
「お手伝いもせずに見てるだけでしたが」
「は?誰? アリス様?」
「アリス様!」とマイルスは我に返って言ったが、思いがけず大声になってしまい、どぎまぎした。
「お邪魔して・・・その・・・食器洗いが大変そうだなと」
マイルスが助けを求めて後ろの侍従を見ると彼はしっかりとうなずいた。
「はい、力不足で器が間に合わなくて、待って貰ったりしましたから」と言うと
「そうなんですね。本当にお疲れさまです」とアリスが優しい声で言った。
そこにアレクもやって来ると
「ご苦労だったな。後日慰労会を兼ねた報告会を開くから、その問題を出してくれ。検討しよう。もちろん他にもあればそれも報告を」とアレクが言っていると騎士団が飲み物の大きな入れ物とコップを持ってすっと寄って来た。
「これを飲んでもう少し頑張って欲しい」と言うと二人は去って行った。
「みなさん、どうぞ、遠慮なくたくさん飲んで下さい。片付けも手伝わせて下さい」
騎士団はそう言いながら飲み物を配り、テーブルや椅子を運び始めた。
スター騎士団の助けで予定より早く片付けが終わったマイルスは、馬車に揺られながら、器の問題をどう解決すればいいかと考えた。
翌日、驚いたことにスター騎士団がやって来て、道具の洗浄と点検を手伝ってくれた。
騎士団は作業しながら、家の者と雑談をして、合間にお祭りでのことを聞き出していた。
マイルスの思っている騎士団は、ずらっと並んで威圧する存在だったが、このスター騎士団は穏やかな雰囲気をまとっているが、重いものを軽々と運んでいる。
足運びも無駄がない。我が公爵家の護衛は太刀打ちできないとわかる。
そう言えば、あのアレク様も・・・マイルスはこの国の行方を思った。
特務部・・・スター騎士団。騎士団は一日で民の心を奪った。
これから、どうすればいいのか? どうすればこの国・・・いや遅い。どうすれば家門を守れるだろうか?
マイルスは自分に言った。考えろ。考えろ・・・
ハトン家は四家で等分にわけて負担しようと提案したが、他の三家は自家に責任はないと主張した。責任のない自家が負担する必要はないとこれは金額の問題ではないのだ。矜持の問題だと言うのだ。
ハトン家は矜持ではない、忠誠の問題だと三家を説得しようとしたが、出来なかった。マイルスは父の公爵に対しても言ってないが、忠誠を見せる場面だと言いたかったが生き残るのはどこかと考えて沈黙を守ったのだ。
結局、特務部が道具を調達した。
お祭りの炊き出しはハトン家が、新品の道具を使って肉と魚を焼く
魚は海の一族が提供してくれることになっている。
ダイナ公爵家はハトン家の手伝い。裏方に徹するように指示された。
スペーダ公爵家はお菓子を出すことになった。
クラーブ公爵家は飲み物と決まった。
当日まで、ハトン家は王宮の調理人に頭を下げて汁物の作り方と道具を使って肉を焼く方法を教わった。一度は自家の庭で肉を焼いて練習した。
その際、特務部に味見をして下さいと依頼をした。そしてマイルスは三公爵家にも、使いかってを学ぶ為に手伝いに来ないかと誘いをかけたのだが、どこも来なかった。
特務部で話を聞いてアレクはアリス デイビス、バート、ヘドラーにラズベリーとライラまで
「視察に行こう」と誘った。
道具を見たアリスは、台の脚のつけねが丈夫になっているのに、気がついた。
角が潰されて丸くなっている。洗いやすいだろうなと思った。
あの鍛冶屋さん、工夫してくれたんだ。とアリスはあのおじさんに感謝した。
「わたくし、スープを作るの得意なんですよ」と言うアリスの言葉は
「それは素晴らしいですね。わたしも練習したんですよ」とマイルスから返されて終わりになった。
「アリス、まかせて待っていよう」と言うアレクはレモンの香りのグラスを渡した。
「わたくし、上手なのに」と言うアリスの声はアレクにしか聞こえなかった。
スープもお肉も美味しかった。
「炊き出しですから、おなかが膨れるのも大事ですので小麦の団子を入れてます」とマイルスが言うのを聞いて
「なるほど、そうだね。貴族だと気づかないかな」とアレクは考えながら答え
「貴族は気づかない所だ。マイルス殿はよく気づかれた」とデイビスも言った。
一同はたくさん食べて、片付ける所まで視察した。
さて、お祭りの当日。アレクの手配したクレールスター皇国からの騎士団が、民が危なくないように、守り並ばせた。
民は順番を守って団子入りのスープを飲み、おなかを満足させた。続いて肉と魚を受け取り、見慣れぬ魚をこわごわ口にして美味しさに驚いた。
皇国からの騎士団。スター騎士団の声がお祭り会場に聞こえる
「たくさん、ありますからゆっくり並んでいいですよ」
「並んでいる間にもっとおなかがすいたらたくさんお代わりできますよ」
この後に笑い声が聞こえる。
「騎士様はどこの制服かい?あまり見ないが」
「クレールスター皇国です。マダム」
「やだね、マダムなんて、ただのおばさんだよ」
更に笑い声が弾けた。
長く伸びた列と食べる人々を観察していたアリスは
「ピクニックで経験したつもりでしたが、たくさん人が集まっても危なくない方法なんて、考えもしませんでした。スター騎士団がいないと最悪、暴動になっていたかも知れませんね。平常な今でも・・・危険ですのに・・・これが災害時なら」とアレクに小声で話しかけた。
「そうだね、アリス。スター騎士団は思ったより優秀だ。これが終わったら、この国の騎士団を指導させよう」と答えた。
言葉の最後の部分で二人はお互いをじっと見た。
「それがいいですね。訓練された騎士団は人々を守れます」とアリスは答えた。
お祭りの終わる時間になった。最後に並んだ人たちはスープのお代わりをして、にこにこと帰って行った。
ハトン家のマイルスは、最後まで売り場に残っていた。椅子に座っていたけれど・・・
ダイナ公爵家は、一応当主とギルバードと何人かが顔を出したが、しっかりと裏方に徹していた。
そして他の公爵家の当主と同じくそうそうに帰って行った。マイルスは自分もそうしたかったが、アレクの『これからの長い付き合い』という言葉と時折感じる視線に、ここにいるほうが良いと思って頑張った。
終わって片付けを目にしながら放心していると
「見てるだけの感想ですが、お皿を洗うのが大変だったのではありませんか?」
「うん?」
「お手伝いもせずに見てるだけでしたが」
「は?誰? アリス様?」
「アリス様!」とマイルスは我に返って言ったが、思いがけず大声になってしまい、どぎまぎした。
「お邪魔して・・・その・・・食器洗いが大変そうだなと」
マイルスが助けを求めて後ろの侍従を見ると彼はしっかりとうなずいた。
「はい、力不足で器が間に合わなくて、待って貰ったりしましたから」と言うと
「そうなんですね。本当にお疲れさまです」とアリスが優しい声で言った。
そこにアレクもやって来ると
「ご苦労だったな。後日慰労会を兼ねた報告会を開くから、その問題を出してくれ。検討しよう。もちろん他にもあればそれも報告を」とアレクが言っていると騎士団が飲み物の大きな入れ物とコップを持ってすっと寄って来た。
「これを飲んでもう少し頑張って欲しい」と言うと二人は去って行った。
「みなさん、どうぞ、遠慮なくたくさん飲んで下さい。片付けも手伝わせて下さい」
騎士団はそう言いながら飲み物を配り、テーブルや椅子を運び始めた。
スター騎士団の助けで予定より早く片付けが終わったマイルスは、馬車に揺られながら、器の問題をどう解決すればいいかと考えた。
翌日、驚いたことにスター騎士団がやって来て、道具の洗浄と点検を手伝ってくれた。
騎士団は作業しながら、家の者と雑談をして、合間にお祭りでのことを聞き出していた。
マイルスの思っている騎士団は、ずらっと並んで威圧する存在だったが、このスター騎士団は穏やかな雰囲気をまとっているが、重いものを軽々と運んでいる。
足運びも無駄がない。我が公爵家の護衛は太刀打ちできないとわかる。
そう言えば、あのアレク様も・・・マイルスはこの国の行方を思った。
特務部・・・スター騎士団。騎士団は一日で民の心を奪った。
これから、どうすればいいのか? どうすればこの国・・・いや遅い。どうすれば家門を守れるだろうか?
マイルスは自分に言った。考えろ。考えろ・・・
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