気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

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第52話 気づかないの?

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騎士団長はわけがわからなかった。スター騎士団と言うクレールスター帝国の騎士団が来て、あのお祭りの時、平民をきちんと並ばせていたのは知っている。

だが、何故あの騎士団が自分たちの本部にやって来て我が物顔で采配を振るうのだろうか?
「貴殿らは出て行ってくれないか?」と団長である自分が抗議をしたら

「あれ? 通達がなかったですか? 団長様が署名をしてますよ。わたしは確認しましたが」とあちらの責任者が人のいい笑顔でこう言った。

すぐに使いを特務部に出したら、デイビスと言うよく見かける男が書類を持ってやって来た。

「団長殿、これです。合同で研修することが決まったからと通達しています。予定表の受け取りも署名がありますよ。お忘れかもと思いまして一枚持参しました」と言うとペラっと紙を渡された。

予定表には、合同で訓練をする日がずらりと並んでいる。混乱しないように指揮はスター騎士団がとると明記してある。
合同で町の巡回もする・・・え? 我々は王宮を守るのだが・・・

スター騎士団も王宮を守る訓練? どういう意味だ・・・


「団長様、わたしはスター騎士団遠征部の部長を拝命しております。団長様から学ぶようにアレク様より言いつけられております。ルーク・ホワイトと申します。よろしくお願いします」

人のいい笑顔でこう挨拶をされた。

「それでは、集まってくれ。リーブル王国の方たちもこちらへ」
集まった団員に向かって

「わたしは単純な人間だ。単純に考える。これから二つの騎士団は行動を共にする。行動を共にする人間を知らないなんて怖いことは嫌いだ」とここでスター騎士団が
「ウォー」「そうだ」「さすが、わかりやすい」と大声を出した。

「知り合うには打ち合うのが一番だ」
「来たゾーー」「待ってた」「やりたいーーー」
「二つの騎士団、どこの所属など気にせずに打ち合え。制服で区別がつく? 気にするな! 血と汗と泥に塗れた制服に違いなどない!!」

「おぉーー」「おーーーー」
いつのまにかリーブル王国の騎士団も一緒になって雄叫びをあげていた。

「団長様、わたしたちもやりましょう」とルークは団長に声をかけた。
「わたしはこれから・・・」と言いかけると
「書類仕事は専門家が来ています。まかせましょう」とルークは迫力のある笑顔で団長の言葉を封じた。


王太子のエドワードは自分の能力が発揮されていると感じていた。有能な部下が自分のために働いている。部下は有能だが自分の指示で動いている。部下が育つまでが大変だったが今は大丈夫だ。
アリスは時間がかかっていて大変だったとか辛かったとか喚いたあげく婚約も破棄したが、今の自分を見ればアリスも反省するのでは? アリスの力不足だったと理解するのでは?そう思った

最初、エドワードの席は特務部にあったが、今は元の執務室に戻って部下が書類を持って指示を仰ぎに来る。

「殿下、孤児院への臨時出費の件が片付きそうです」
「それは良かった。どこからの金だ?」
「メアリー様が持ち帰られた宝石がたいそう価値ある物でして、そこからです」

「メアリーか。用意した道具もドレスもあちらに置いて来たのだったな」とエドワードはメアリーが戻った時の騒ぎを思い出しながら言った。

「はい、ですが、高価な装身具はメアリー様が船室に置いたまま下船されたそうで、すぐに城に届けられておりました・・・まぁ身の回りの品物がなくなったってことですね、貰った宝石はそれより高価だそうで」
「なるほど・・・しかしメアリーも困ったものだ。あれからお茶会三昧。あちらの生活を触れ回っておる。自分から飛び込んで行ったくせに。最近では近隣の諸国からも客が来ておる」
「・・・」部下もよく知っているようで苦笑していた。

気を取り直してエドワードは
「あぁ予算がと言うことであれば、その処理でいい」と言いながら受け取った書類を見た。するとそれは、特務部からの補填になっていた。
いつものことだとエドワードは署名をした。
「そういえば、ピクニック、いや、炊き出しの道具も特務部の補填になっていたが、公爵家の責任はどうなっているのだ?」
「それは王室の方々の憂いを少なくとアレク様が思われて、特務部の予算で買いました。ただ、それだと公爵家の無責任が有耶無耶になりますので公爵家の領地を差し出して貰えばいいと言う案が出まして、来週にも王室、公爵家の話し合いが予定されております。その資料も明日にはお手元に届きます」

「なるほど、よくやってくれている。どころでアリス嬢は元気にしているか?」
「アリス嬢・・・フォーセゾン伯爵でございますね。ときおり特務部に顔を出されますがお元気です」

「そうか、ありがとう」とエドワードにお礼を言われて部下は部屋を出た。

部下は部屋を出ると肩をすくめた。
「奇妙だと誰も思わないのか?決定はすべてわたしたちがしているのに」
彼の独り言は廊下に吸い込まれた。


「父上、道具の購入費用ですが請求が来ません。おかしいです・・・だから費用を出そうと言ったのにあいつら」とマイルスが、ハトン公爵と話している。

「どこがおかしいのだ。公爵家に王家が遠慮しているのだ」
「違います。相手は王家ではありません。アレク様です。皇国です。騎士団を見ましたか?特務部とか、皇国の文官ですよ・・・国の中枢はとっくに彼らの手の中です。あとはギュッと握るだけです。
父上、領地の一部を献上しましょう。侘びの気持ちをあらわすのです。
一番、税収の上がる所を差し出しましょう。全部なくすよりいいですよ。生き残るのです」

「考えすぎだ。他国のものがそこまで」と公爵が言った時、マイルスが一歩下がった。護衛が前に出た。
公爵は口をふさがれた。


「母上! 母上!!大変です。父上が」とマイルスは公爵夫人の部屋に駆け込んだ。


「わたしと話していたら急に、立ち上がったと思ったら、倒れられて・・・わたしがそばにおりましたのに・・・領地を献上するとおっしゃいましたので、わたしはびっくりしてしまいまして、でも父上に説明していただいて理解しまして・・・すぐ手続きをしましょうと話している時に、急に・・・」と言って泣いた。


ハトン公爵家はその日のうちにマイルスが公爵となった。

「これは、マイルス。よく決断したな」とアレクは報告書を見ながらデイビスと話した。
「あぁ、大したものだ」とデイビスが答えたが続きを促すようにアレクを見た。

「あぁいい判断が出来る人間は好きだ」とアレクが答えると

「それがいい」とデイビスが言った。

「判断と言えば最近アリスが、戦術史の本を読んでいるようだ」とアレクが言うと
「知っていたか?」
「なんでもその方面の勉強をしてないのに気づいたそうだ」
「なるほど」とデイビスは相槌を打ったが
「やらせて見るつもりか?」とアレクに迫った。

「わからんが、そろそろ動くだろう。もちろん、本を読んだからと言って・・・だが、話すといい感覚を持っている」とアレクは答えた。

「たまには事前に潰すのではなく、やらせてから潰すほうが効果的だ」
続いてのアレクの言葉にデイビスは、肩をすくめた。
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