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第二章 奪ってやる

02 訪問者・・・その名はケティ

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ミリアムは庭のいつもの椅子に座って、芝刈りをするカイルを見ながら本を読んでいた。登場人物のほとんどが死んでしまうと言う人気の悲恋物で、カイルが開店前から、書店に並んで買って来てくれたのだが、まったく天災級の悲劇だわねと時折、クスリと笑いながら・・・・

そんな機嫌の良いミリアムを見ながら、新鮮な芝の香りを楽しんでいる時、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。

「カイル!この家カイルの家でしょ。会いに来たわーーー開けてーーー」

ミリアムにも声が聞こえたようで、本を閉じてテーブルに置いた。礼儀正しいミリアムはカイルにうなづいた。

もっと塀を高くするか庭の広い家に引っ越そうと思いながらカイルは、声の主、ケティを出迎えに行った。

ケティは草を踏みつけながら小道を歩いた。転べよと思いながらカイルは後ろを歩いた。

「こんにちは。えーーーと」

「ミリアムよ。こんにちは、ケティさん」

「そうだ、ミリアムね。ミリアム、ミリアム よし覚えた」とケティは言うとさっさと椅子に座った。


「お茶を」とミリアムがカイルに言うと

「お茶なんてケチくさいんじゃなくて、ワイン出してよ。あっ瓶ごとね。そしたらすぐにお代わりできるでしょ」

「ケティさん、あなた」とカイルが言うと

「あっカイル怒らないで、カイルがずっとここに居られるようにって思って」

「そうね、カイル。お願い」

カイルがいなくなるとケティは

「お金持ちっていいね。あたしお金持ちの家に、はいった事ないんだ。今度さ・・・」

「お待たせしました」とカイルが戻ってきたのでケティは続きを言わなかった。



「こっちの白いのは甘くて美味しいけど赤いのは渋いね・・・・おばさんお金あるんだからもっといいのを買いなよ」
ここでカイルが立ち上がると

「そろそろ時間ですので、お引取りをと」とケティの腕をとると門へ向かって歩き出した。

「カイル、あたしの気持ちわかってるだろ」と胸を押し付けながらケティが言い出した。

「あんたの気持ちもわかるよ。おばさんに縛り付けられて・・・・あたしミザリーさんを見てたからわかるんだよ。金持ちのおばさんがやってる事が・・・」

ここでカイルは門を開けるとケティを放り出すと門を閉じた。

「カイル!カイル」とケティは呼んだが、門は開かなかった。

「必ず・・・」とケティは呟くと酔ってふらつく足で帰って行った。


それから二度ケティはやって来たが、庭にでていない二人は居留守で撃退した。



久しぶりに魔石自動車で買い物に行った二人が家に戻り、カイルが門を閉めようとした時、隠れていたケティが現れてカイルに抱きついた。

ピッタリと体を密着させ

「あたしを好きにしていいんだよ。遠慮はなし・・・・今度自動車に乗せて」

カイルはケティを抱き抱えると門からでて、門を閉めた。


そのようすを見ていたミリアムはミザリーを思い出していた。


その夜、ミリアムは小瓶を出して手の平の上で転がした。

昔、あの施設で世話係から手に入れた物。

これを渡された時ほっとしたのだった。いつでも死ねる。死ねばおしまいになる。この苦しみから逃れられる。そう思ったのだった。

最後に会いたかった父母は死んでしまった。それからは死ぬどころじゃなくなり、カイルに会った。

死ぬ気がなくなった。

とっくに忘れていた小瓶。それが喪服のポケットに入っていて驚いた。

そしてこれを飲ませたい相手に出会ってしまった。



ミリアムの部屋の外ではカイルが中の気配を伺っていた。あの毒薬は見つけてすぐにすり替えた。あの瓶の中身は絵の具で色をつけた水だ。飲んだ所でせいぜい腹下しだろう。


カイルはじっと考えた。ミリアムの思いも成就させ自分の願いもかなえるやり方は?




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