魔力がなくなって冷遇された聖女は、助けた子供に連れられて

朝山みどり

文字の大きさ
4 / 19

04 怪しいレイモンド

しおりを挟む
レイモンドは家に戻ると、スープを作ろうと野菜を洗い大きく切ると鍋にいれた。

草むしりといやみで疲れて帰ってくるカミーユを労わりたかったのだ。


レイモンドは家の前の小道でカミーユを迎えた。


「カミーユ」と名前を呼ぶとレイモンドは、カミーユに抱きついた。

「ただいま、レイ。お利口にしてた?」

カミーユのその声と言葉で、レイモンドは昔を思い出した。


家にはいるといい匂いがしていた。

「あら、レイ。これは・・・・まぁレイ」とカミーユが嬉しさと戸惑いが混じった声でレイを抱きしめながら言うと

「うん、カミーユ、お仕事でしょ。僕もお仕事したくて」最後まで言えなかった。カミーユが泣き出したから。

「ごめん、カミーユ。勝手なことして・・・ごめんなさい」

「いえいえ、違うの。泣いてごめん。嬉しくて・・・」と泣きながら、カミーユは笑って言った。



二人は楽しく食事を済ませた。食後のお茶を飲みながらレイモンドは、庭の花とハーブの事をあれこれ教えてもらった。

少し眠たい顔をしたレイは、一緒に眠りたいとカミーユにねだった。

困りながらも、願いを聞いてカミーユもベッドに横になった。




ぐっすりと寝入ったカミーユの胸元を開けると、レイモンドはじっくりと調べた。次にうつぶせにして背中を調べた。
探していた物は腰にあった。

『やっぱりな、あの女・・・・・』

レイモンドの手の動きにつれてカミーユの腰に魔法陣が現れていく。次にレイモンドの指が魔法陣の上でちらちら動く。レイモンドが満足げに笑うと魔法陣が消えて行った。


翌日も、カミーユが仕事に行く時レイモンドも、気配を消してついて行った。

今日は平民の治療日ということで、カミーユも治療室にいる。オリビアも他の聖女も平民の治療はしたがらない。

「カミーユ。お気の毒ね。婚約がなくなったと聞いたわ。でもこれで気楽になったわね」と聖女の一人が言い出すと

「魔力なしでは聖女と言えないからね」

「あら、ないって言うのは間違いよ。魔力が枯れて少ないのよ。少しはあるのよね」

「はい、少しはあります」とカミーユが答えるとそれまで、にやにや笑ってみていたロザリー・カリフが

「わたくしたちは、高貴な方になにかあった時の為に、魔力も温存したいですし、平民の治療はカミーユがやればいいですわ。そのできる範囲でね」と言った。

「まぁロザリー様ってはっきり言う人ですね。いくらほんとうの事でもわたくしはあそこまで言えませんわ」とオリビアが言うと

「オリビア様はほんとうにお優しいから、でもオリビア様。王室の方の治療はやはり、オリビア様でないと・・・」とエメは大きな声で言うと

「さぁあなたたち、オリビア様をお連れして・・・・・わたしはちょっと」と一人残ったエメは

「カミーユわかっているでしょうけど、高貴な方が見えたら丁寧に応対してお待ち頂いてね、すぐにオリビア様が治療なさいますから」とカミーユに言うと出て行った。

「ふーー参ったわ。口を挟む暇もないんだから」とカミーユは肩をすくめると患者を部屋に入れた。



お昼を過ぎたあたりで、やっぱりおかしいとカミーユは思った。確かに、魔力がいつもより巡っていると感じていたが、この人数を治療しても魔力が残っている。首をかしげながらもカミーユは治療を続けた。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

【 完 結 】言祝ぎの聖女

しずもり
ファンタジー
聖女ミーシェは断罪された。 『言祝ぎの聖女』の座を聖女ラヴィーナから不当に奪ったとして、聖女の資格を剥奪され国外追放の罰を受けたのだ。 だが、隣国との国境へ向かう馬車は、同乗していた聖騎士ウィルと共に崖から落ちた。 誤字脱字があると思います。見つけ次第、修正を入れています。 恋愛要素は完結までほぼありませんが、ハッピーエンド予定です。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

姉妹差別の末路

京佳
ファンタジー
粗末に扱われる姉と蝶よ花よと大切に愛される妹。同じ親から産まれたのにまるで真逆の姉妹。見捨てられた姉はひとり静かに家を出た。妹が不治の病?私がドナーに適応?喜んでお断り致します! 妹嫌悪。ゆるゆる設定 ※初期に書いた物を手直し再投稿&その後も追記済

(完結)お荷物聖女と言われ追放されましたが、真のお荷物は追放した王太子達だったようです

しまうま弁当
恋愛
伯爵令嬢のアニア・パルシスは婚約者であるバイル王太子に突然婚約破棄を宣言されてしまうのでした。 さらにはアニアの心の拠り所である、聖女の地位まで奪われてしまうのでした。 訳が分からないアニアはバイルに婚約破棄の理由を尋ねましたが、ひどい言葉を浴びせつけられるのでした。 「アニア!お前が聖女だから仕方なく婚約してただけだ。そうでなけりゃ誰がお前みたいな年増女と婚約なんかするか!!」と。 アニアの弁明を一切聞かずに、バイル王太子はアニアをお荷物聖女と決めつけて婚約破棄と追放をさっさと決めてしまうのでした。 挙句の果てにリゼラとのイチャイチャぶりをアニアに見せつけるのでした。 アニアは妹のリゼラに助けを求めましたが、リゼラからはとんでもない言葉が返ってきたのでした。 リゼラこそがアニアの追放を企てた首謀者だったのでした。 アニアはリゼラの自分への悪意を目の当たりにして愕然しますが、リゼラは大喜びでアニアの追放を見送るのでした。 信じていた人達に裏切られたアニアは、絶望して当てもなく宿屋生活を始めるのでした。 そんな時運命を変える人物に再会するのでした。 それはかつて同じクラスで一緒に学んでいた学友のクライン・ユーゲントでした。 一方のバイル王太子達はアニアの追放を喜んでいましたが、すぐにアニアがどれほどの貢献をしていたかを目の当たりにして自分達こそがお荷物であることを思い知らされるのでした。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 全25話執筆済み 完結しました

処理中です...