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4.君と繋いだ手を離したくなかった

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 鈴音と手を繋いで外を歩いている。目を引くほどの美少女が隣にいるものだから、いつもより他人の視線を感じて居心地が悪い。鈴音を連れて買い物に行くにあたり、僕が考えた作戦は――。

「タクミ、恋人っていいな。ずっと手を繋いでいられるのは嬉しい」

 僕よりもひと回りほど小さな手が、僕の手を握る力を少し強めた。『年下の幼馴染でもある恋人が、高校卒業を機に僕の家に転がり込んできたが、オシャレや身だしなみにあまりに無頓着で困り果てて、一緒に買い物に行くことにした』という設定。わざわざ説明するようなことはないだろうが、そういう設定を考えておくことで、僕自身も出かける決心がついた。

 家を出てすぐに駆け出した鈴音を追いかけるのは大変だった。放っておくとどこに行ってしまうかわからないから、恋人は手を繋ぐものだと言い聞かせると、やっと隣を歩いてくれるようになった。手を繋いで歩くなんて恥ずかしくて嫌だけれど、仕方ない。

 近場のショッピングモールに行けば、女性向けのファッションブランドはいくらでもある。後は売りたくてたまらない店員に任せておけば、勝手に買うべきものが決まってくるだろうという算段だった。ところが、女性ものの店はたくさんありすぎて、どこに入ればいいのかまったく見当がつかない。物珍しそうにきょろきょろとする鈴音の横で、僕は途方に暮れていた。

「工藤君?」

 数メートル先からこちらに向かってくるのは、梨花さんだった。この前見た服装とは打って変わって、パンツスタイルだったけれど、洗練されていてよく似合っている。知らない人間に警戒しているのか、鈴音はそっと僕の後ろに隠れてしまった。

「やっぱり工藤君だ! こういうところ来ないイメージだったけど……あ、もしかしてデート中だった?」

 梨花さんの視線は僕の後ろの鈴音に注がれた。デート中と言われ、すぐに否定しようと思ったけれど、道中考えた設定を思い出す。

「いや、あの、まあ、そういう感じ……です。昨日は料理ありがとうございました。おいしかったです」
「パパに聞いたけど、工藤君わたしと同い年らしいから、別に敬語なんか使わなくていいよ! でも、彼女いたなら余計なことしたかな?」
「彼女っていうか、幼馴染っていうか……」

 ね、と鈴音に同意を求めたものの、話を聞いているのかいないのか、首を傾げられた。
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