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学園生活しています
しおりを挟む「お母様、私聞きましたの。真剣な交際ではなく若い女性ばかりとお付き合いする殿方は、実際の年齢より中身が幼いそうですわ」
「ゲホゲホっ」
とある貴族家の朝餉の最中。
まだ小さい娘の発言に思わず伯爵は咽せる。若い子好きで有名なかれは御年四十三歳、一男一女がおり夫人もまだ二十八歳である。
「あまり年の差があると、ふつう話が合わないでしょう? そういった殿方は、自分だけは若いと勘違いしているのですって。実際は大人の女性に相手にされない、もしくは同年代は怖いから若い人に走るんだとか」
「セシリア! おまえは何が言いたい」
「───って聖女様がおっしゃってましたの」
ぐっと言葉に詰まる。娘のセシリアと同じ学園に通う聖女エステルは有名人だ。
「……聖女様はお前より下の学年では」
「ええ、3つ下です」
末恐ろしい娘だ、と伯爵は溜息をついた。
「婚約者とうまくいきませんの……」
「なるほど」
どもども、私聖女。転生して幼児からスタートしてます! 学園編だよ!
いま? 空き教室でお悩み相談してるよ!
十三才の令嬢の恋愛相談を七つの少女が受けるって何!?
なんでこうなった。
「ふむ、話を聞いてるとあなたは追いすぎです」
「彼にも言われましたわ」
「婚約者は、追われるのが苦手なようです。追わせるようにしましょう」
「ど、どうすれば」
「なんでもいいから好きなこと見つけましょう。自分をみがくのです。読書でも刺しゅうでも乗馬でも、なんなら剣でもいい。孤児院へ行くでもいい。好きなことに打ち込んで、婚約者ばかりに目を向けるのはやめましょう」
「………」
「変わらないと、婚約者ははなれるばかりです」
「そ、そうね! せっかくエステル様に助言いただいたのだから! 片っぱしからやってみますわ!」
この令嬢はなんと乗馬に天賦の才があったらしい。馬術大会にも出場し仲間がたくさんできたと後々お礼を言いに来た。
「婚約者は?」
「いましたわね。お元気なのでは?」
乗馬仲間に気になる人が出来てしまったようだ。婚約がどうなってもゴタゴタは私のせいじゃないよー。
「あなたは何をしてるんですか」
腹黒が面会に来た。初手から責める眼差しはやめて。お菓子だけ置いて帰っていいよ。
「お悩み相談室」
「高等部からも来てるとか?」
「みんなおかしいと思わないのかな。こんな子どもに真剣に悩みを打ち明けるの」
「聖女フィルターがかかっていますからね。だいたいエステル様は子どもの皮を被った大人でしょう」
「そ、そんなことない。わたしはちいさなおんなのこ」
「今更辿々しく話しても無駄ですよ」
「チッ」
「はしたないから舌打ち禁止」
「リストの真似だもーん」
入学して早や一年。いつの間にかこういう相談役ポジションになっていた。知らない間に予約係までいてスケジュールが詰まっている。なんだかなあ。
「話は変わりますが、もうじき夏季休暇ですね」
「───次の夏休みは休むからね」
私から腹黒への信用度はマイナスだ。
「高原に行きましょう。とても良い場所です」
「それってこの間ウワサになってた! 一角ウサギが大繁殖して近づけないとこでしょ!!」
早速ぶっ込んでくるし!
「アリサ王女が聖女を卒業なさり、今はあなたが一の聖。頑張って貰いませんと」
「じゃもっと給金に反映させて! 休みに働くのは休日手当て!」
「聖女がカネカネ言わないで下さい。イメージが壊れます」
「神官が腹黒なのもイメージ良くない。わたしの将来設計にはお金がいる」
「卒業時に慰労金、年金もあるのに?」
「わたしはもう知った。いつもリストが休みにわたしに討伐させてた魔物、どれも冒険者ギルドから請け負ってたのを」
こいつはチャッカリ冒険者登録をしていて休みにいそいそと魔物を狩りに行っているのだ。教会自由過ぎない?
「お陰様でAランクになりました。兼業で義務が果たせないのでSランクは辞退しています」
悪びれずシレッと言う腹黒。
「ぎょふのり!! いとめだからはらぐろはしってたけど! とらのいをかるキツネだぁああ!! じたいしたのは、Sランクのまじゅうはひとりじゃたおせないからだ!」
腹黒と話してると興奮してお子様口調になってしまう。糸目だから狐っぽい!
「おかねどこ!! どこにやったの! いらいたっせいきんもあるし、そざいはたかくうれたでしょ!」
「各地の孤児院ですね」
「え……」
私たち聖女のいる教会周辺では孤児院も恵まれた環境にある。だが、豊かでない地方は孤児たちにまで手が回らないのだ。
「エステル様に言わずにいたのは謝罪します。院には聖女様からと伝えてありますから、皆あなたに感謝していますよ」
「……リストって孤児だったね」
「ええ。なんとか生き延びました」
少しだけ見直していた、のだが。
「まあ素材分は手間賃として頂いてますが」
おいコラ。それがデカいんだろうが!
糸目腹黒との面会で疲れたので早々に寮の部屋へと戻ることにする。いつもなら図書室や談話室に寄るけど今日はいいや。
力なく歩く私を呼び止める声がした。
「エステルちゃぁーん!!」
「どうしたのサラ、、げっ」
笑顔で走ってくる可愛い少女。その手に握られた毒々しい色の───。
「見てみて、ヨツメクサリヘビ! 学園にいるなんてすごい珍しいのっ」
うん猛毒だからねそれ出血毒と神経毒持ってるからねなんで拾うの。
「う、う、うん、しゅごいね。っそこでストップ」
「ホラこの耳んとこが目みたいでしょ、それからこの牙! 口を開くとほーら後牙類!」
「うっうんわかっわかったからぁああか、顔に近づけないでぇぇえっぁぁぁああいい加減にせぇやこのクソガキがぁぁあああ!!」
「ああああ! ヨツメちゃんが!!」
サラの手を振り払い落ちたヘビの頭をナイフでブッ刺す。
いくらキュアで治せると言えど大口開けた毒蛇を鼻先に突きつけられたらパニクるよ!!
後牙類だから大丈夫なのに、じゃねえ!
サラは良い子だが両生類と爬虫類には目がなく、レアものを見つけると常識と意識が吹っ飛んでしまう。
このヘビは山にいる種類でここは緑が多いとは言え都会にある学園だ。
鳥が咥えてた餌を落としたか学園テロか。
「どこで見つけたの」
「私の部屋」
暗殺かプレゼントか難しいところである。
「きれいにラッピングしたガラスケースにいて、嬉しいから見せびらかそうと……」
「一択だった」サラにはすぐ種類が分かるし扱いも慣れてる。ガラス入りの時点で暗殺狙いではない。
「え?」
「わたしで良かったね。ルビアンナだったらサラごと丸焼きだよ」
ヨツメクサリヘビの死に涙したサラは、既にケロリンパとして死骸をホルマリン漬けにしている。毒も採取してから。
こいつホント怖いわ。
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