ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第17話 駒の最重要な役割

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 修斗の体には小さなハネアリの様な虫がまとわりつき、口から消火液を出して修斗の体を溶かして飲んでいる。
 3人の女も同じで、体の小さいキャロライン姫は顔が解け、体中から骨が見えている。少しは体が大きいとはいえ、パメラもバーバラ聖女も顔は無く、破れ落ちた服装だけが個人を特定できる材料だ。

 しかしこの羽根蟻は一体どこから沸いて出たのだろうか。
 このハネ蟻の名はウィングアシッド、群れで行動するが、ここまで大軍になる事は無いはずの虫だ。
 ではなぜここまで大量に集まったのか。

 それは修斗達の魅力値が関係していた。
 人から見れば仲良くなりたいと思う魅力値だが、怪物や虫から見たら『魅力的な捕食対象』となってしまう。
 今まで野生動物や怪物に襲われても平気だったが、小さな虫となると対処方法が違いすぎるため、流石の4人でも間に合わなかったのだろうか。

 ハネ蟻で前が見えない程の数……街が一つ壊滅する量だ。
 こんな場所で死んでしまうとは、誰が想像できただろうか。
 死んでしまった場合ステータスの改変など出来ないため、死を無かった事には出来ない。


 では少し話を戻して、城での出来事を話そう。

 修斗の死に気づいていないナターシャとキャシーは、命令通りに第一王子・第二王子との婚約までこぎつけていた。
 どうやらこの2人、お互いが修斗のお手つきである事を感じ取っているようだ。

 2人が会ったのは、国王に関係を認めてもらうべく謁見の間に行った時だ。
 ナターシャは第一王子との婚約を先に認めたもらっていたため、謁見の間に第一王子と共にいた。
 そこへ第二王子とキャシーが来たのだが、一目見て理解した。『私と同じだ』と。

 しかし実のところ、ナターシャもキャシーも王子との結婚は嫌では無かった。
 むしろナターシャは第一王子が好きであり、キャシーも第二王子が気になっていた。ナターシャは控えめで押しが弱く、その事を伝えられないでいた。
 キャシーは負けん気の強い第二王子が気になっていたが、歳の差や勇者の花嫁という使命があるため行動に移す事は無かった。

 それが修斗という後押しを得て、行動に移したらトントン拍子に話が進んだのだ。
 修斗は自分の所には来ない。そういう諦めもあったのだろう。

 その後修斗は姿を消し、城内どころか国をあげての捜索が行われたが、その足取りは掴めなかった。
 半ば修斗達に依存していたこの国は、放っておいたら無くなっていたかもしれない。しかしそれでこそ【駒】が役割が果たせるのだ。

 修斗が担っていた業務をナターシャとキャシーが受け持ち、何をしたらいいのか理解できない役人たちを上手く動かした。
 ナターシャは国最大の貴族・フロイド公爵の令嬢であり、キャシーは遠縁とはいえ王の一族だ。混乱の中で指示をしたら皆が簡単に従った。

 そうして修斗が使っていた執務室を2人が使い始めるのだが、なぜか2人の王子の姿もあった。

「私たちがこうして指示が出来るのは、王子達の命令で動いたからです。私達は王子達の手足となり、この国を共に支えていきたいと思っています」

 そう言った声明を発すると、2人の功績は4人で分けられることになる。
 もちろん王子達は何もしていない。
 第一王子はまだしも、第二王子は脳みそが筋肉寄りだ。

 ナターシャは黒くて長い髪を編みこんで、首の後ろでまとめており、青いドレスを好んで着ている。
 キャシーは茶色の髪を肩まで伸ばし、前髪を軽く横に流している。赤いドレスが好みのようだ。

 修斗に変わって実質的な権限を持つ2人だが、執務をこなしはするがあまり表舞台には出なかった。
 まだ結婚式も上げていないため、王子達のプライド……威厳を傷つけるような事はしないようにしているのだろうか。
 それでも近い人物は気付いているが。

 キャロライン姫を手に入れるために適当に仕事をしていた修斗とは違い、国を担わなくてはならない2人は、国のために必死に働いた。
 とは言え、未だ死んだことを知らない修斗が帰ってきた時の為で、王子や国民の為では無いのだが。

 国は豊かになり、王子達への名声も日に日に増していく。
 そして遂に、ナターシャと第一王子の結婚式の日が来た。
 各国から王侯貴族おうこうきぞくが祝福に現れ、第一王子は幸せの絶頂だったであろう。
 しかしナターシャは幸せではあるが、満たされてはいなかった。

 それから1年が過ぎ、キャシーと第二王子が式を挙げた。
 これはどちらでも言えたことだが、各国の王侯貴族が訪問し、豪勢な手土産を持ってくるのは姫が目的だ。

 その美貌と頭の良さから、自国にもアドバイスが欲しかったのだ。
 この段階で2人は国を選別し、自国に利益になる国にのみ話をした。
 アドバイスとは名ばかりで、実際には自国の傀儡かいらい政権を作る事が目的だったのだ。

 ゆっくりと、ジワジワと国を内側から操り、気が付けば口答えが出来ない状態にするためだ。
 キャシーは剣術も魔法も出来るため、場合によっては隣国に訓練に行き、ナターシャはお茶を入れるのが得意というので、各国の令嬢に教え、さらには交渉の場では特製のお茶を出し、交渉を有利に進める。

 そして更に月日が流れ、2人にとってはやっと、ともいうべき事が発生した。

 出産だ。

 2人同時に妊娠が発覚し、更には出産も同じ日だったのだ。
 懐妊中もいつも通りに仕事をし周囲をハラハラさせたようだが、本人たちは大して苦労はしていなかった。
 そして2人の間では一つの取り決めがあった。
 
 男の子が産まれても絶対にシュウトと名付けてはいけない、と。

 そして生まれたのは……ナターシャが男の子2人とと女の子1人の三つ子。
 キャシーは女の子の三つ子だった。

 ナターシャは男の子を見たとき、驚きと歓喜に震えてこうつぶやいた。

「シュウト様……」

と。
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