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第37話 男の訓練なんて雑でいいんだよ
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「全員が女だったら楽だったのにな」
ザナドゥ王国での初めての朝食を取りながら、修斗はそんな事を口走った。
オロオロしたのはバーバラとキャロライン。
目をパチクリして理解できていないのが各重鎮の5人。
パメラは口に入っている肉を飲み込むと口を開いた。
「流石に許しておくれよ。バーバラみたいな聖女でもないと、騎士団の団長に任命できる女なんて居なかったんだよ。雑用係のビリーは正直ゴメンだけど」
「俺の好みだけで選べばいい。そうしたら好きなだけ抱ける」
修斗とパメラの会話を理解できているのはバーバラとキャロラインだけだ。
新人5人は『ハーレムを作りたかったのか?』としか思っていない。
修斗はハーレムには興味が無かったが、好きな時に好きな女を抱ければいいと考えているあたり、ハーレムと大差なかった。
「シュウト様! 今から集める者は全て女性にします!」
「シュウトさん、国の全女性リストを作ってありますから、気に入った者がいれば連れてまいります」
バーバラとキャロラインの言葉が更に誤解を深めていく。
修斗とパメラはあくまでも能力値の話をしているのだが、暴走気味の2人は他人を気遣う余裕がない様だ。
「シュウト様、私はお払い箱なのですか……?」
「私もですかな? 出来ればこのまま雇っていただきたいのですハイ」
「追い出しはせん。ただお前たちの教育をどうしようかと悩んでいるんだ」
更に混乱する5人。
教育といわれても、この5人に教育できる能力を持つ者はパメラ・バーバラ・キャロラインの3人だけ、だと思っているからだ。
3人が順番に教育をするか、どうやってその時間を作るか、その程度の問題としか考えていなかった。
ちなみに昨晩から今朝にかけて行為を続けた3人は、自分のステータスが上昇していることに気付いていない。
「アタイ達が鍛えてもいいけど、時間がかかり過ぎるからねぇ」
「仕方が無いから俺が相手をしよう。こればっかりは俺が相手をしないとダメだからな」
「え!? シュウト様は男性が相手でもイケる御方だったのですか!?」
「バーバラ……お前、俺がいままで男を相手にした事があったか?」
「ありません! なので安心しました!」
バーバラがこんな事を口走ったのには理由があった。
他の女に目移りするのは仕方がないが、男までライバルになったらたまったもんじゃない。そう思っていたからだ。
しかし余計に混乱する新人5人。
修斗が相手をする? 訓練を付けてくれるのか? と内心焦っている。
修斗の実力を知らないからだが、稽古をつけてくれても逆に困るからだ。
特に騎士のウィリアム騎士団長などは、剣を使うため怪我をさせてしまうのではないかと、不安で仕方が無いのだ。
だが、その不安は一瞬で吹き飛んだ。
屋敷を出て離れた場所にある森に修斗が入ると、新人5人は慌てて止めようとするが、パメラ達も付いてきたので安心したようだ。
そう、ここは魔の森と呼ばれる魔物の巣窟。
一般人が入り込んだら生きて帰る事は不可能な場所。
さっそく何かが修斗に向けて襲い掛かってきたのだが……腕を掴んで地面にたたきつけた。
「おい、そこの騎士、コレを倒してみろ」
ウィリアム騎士団長に言っているのだが、ウィリアムは固まっていた。
修斗が地面にたたきつけた魔物は全高10メートルを超え、全身に毛を生やした2本足のバケモノだったのだ。
魔の森では中くらいの強さだが、本来ならばマスタークラスのパーティーで討伐する相手だ。
それを片手でヒョイっと投げ飛ばしてしまったのだ。
「え? ……あ、あれ? どうして?」
理解できるはずがなかった。
修斗には武勇伝などが無く、その強さを知る人間は数少ないのだから。
武勇伝のほとんどがパメラ達3人の物で、修斗はお飾りだと考えていたのだ。
ウィリアムが動けない魔物を倒すのにかかった時間は1時間以上。
しかも剣を3本折った結果だ。
「シュウト様って強かったんだ……ただの床上手じゃなかったんだね」
「わー、シュウト様スゴイデス! カッコイイ!」
「あのウィリアムでも苦労する相手を……シュウト様は一騎当千なのだね」
手を叩いて喜ぶ新修斗の女3人。
しかし騎士団長ウィリアムと同様に固まっているものが居る。
雑用係のビリーだ。
「よし次。そこのお前……ゲリー」
「ビリーでございますですハイ」
「ブリブリゲリー、お前は何が得意だ?」
反論したいところだが、反論したら物理的に首が飛びそうだったので、痙攣する目元を笑顔でこらえて答える。
「私はコレが得意、という物はございませんですハイ。すべてをソツなくこなす、それが雑用係たるゆえんでございますですハイ」
はいそうですかと引き下がる修斗ではない。だが押し問答をするつもりもない様で、さっさとステータスを確認した。
するとどうだろう、本当にステータスの全数値は80前後で収まっており、スキルも満遍なく15~20の間に収まっている。
「お前が今までにやってきた仕事は?」
「私は旅をしておりましたですハイ。旅をしながら商売をし、襲われれば撃退し、乞われれば教え、与えておりましたですハイ」
恐らくその言葉に嘘は無いのだろう。一人で何でもできるタイプ、オールラウンダーというのは稀に居る。しかし多分に漏れず器用貧乏で、手伝いや補佐は出来てもメインにはなれない。
なるほど、雑用係がうってつけだ。
だからと言って修斗がやる事に変わりはない。
2人のステータスに一文を追加した。
スキル:能力値上昇速度10倍(隠ぺい中)
その上で修斗は各種訓練を施したのだ。
3日ほどかけて訓練した結果、ウィリアムは力強さと防御力が300を超え、ビリーは全てが150を超えた。
これだけの数値があれば、並大抵の相手に負ける事はないし、国の運営に関わっても間違った判断をする事は少ないだろう。
ただその間に、新人女3人は全ステータスが400を超えていたのだが……。
「よし。それでは次だが、この国に存在するギルドはなんだ?」
謁見の間で主要人物を集め、次の方針を決めている様だ。
パメラ、バーバラ、キャロラインは相変わらず玉座の側に立ち、その正面にウィリアム騎士団長、レベッカ魔法兵長、キャロル内政・人事長、フローレンス都市開発長、ビリー雑用係が片膝をついている。
「はいシュウト様。現在ザナドゥ王国には商業ギルドの他、生産系の各ギルド、技能系のギルドが存在してございます」
男装の麗人フローレンスが立ち上がりそらで答えたが、どこか演技がかっている。
だがそこには修斗が聞きたい名前が入っていなかった。
「冒険者ギルドは無いのか?」
「申し訳ございません。冒険者ギルドはまだザナドゥ王国を国とは認めておらず、あくまでもいち都市としてのスタンスを取ってございます」
それは無理もない話で、ザナドゥ王国は誕生して1年も経っていないのだ。
他のギルドとは違い何でも屋に近い冒険者ギルドだが、それ故に国の運営に関わる仕事をする事がある。
信頼の無い国にギルドを置くことは出来ないのだ。
「他に無いギルドはあるか?」
「まだいくつかございますが、冒険者ギルド以外はすでに施設の建築に入っております」
「交渉はしているのか?」
「もちろんです。ですが中々いい返事を頂けません」
冒険者自体が必要とわけではなく、他国に有って自国に無いというのが気に食わないのだ。
「分かった。一番近くにある冒険者ギルドはどこだ?」
「オークターガースの冒険者ギルドが最も近いかと」
「よし。では俺自ら出向いて話をしてこよう」
ザナドゥ王国での初めての朝食を取りながら、修斗はそんな事を口走った。
オロオロしたのはバーバラとキャロライン。
目をパチクリして理解できていないのが各重鎮の5人。
パメラは口に入っている肉を飲み込むと口を開いた。
「流石に許しておくれよ。バーバラみたいな聖女でもないと、騎士団の団長に任命できる女なんて居なかったんだよ。雑用係のビリーは正直ゴメンだけど」
「俺の好みだけで選べばいい。そうしたら好きなだけ抱ける」
修斗とパメラの会話を理解できているのはバーバラとキャロラインだけだ。
新人5人は『ハーレムを作りたかったのか?』としか思っていない。
修斗はハーレムには興味が無かったが、好きな時に好きな女を抱ければいいと考えているあたり、ハーレムと大差なかった。
「シュウト様! 今から集める者は全て女性にします!」
「シュウトさん、国の全女性リストを作ってありますから、気に入った者がいれば連れてまいります」
バーバラとキャロラインの言葉が更に誤解を深めていく。
修斗とパメラはあくまでも能力値の話をしているのだが、暴走気味の2人は他人を気遣う余裕がない様だ。
「シュウト様、私はお払い箱なのですか……?」
「私もですかな? 出来ればこのまま雇っていただきたいのですハイ」
「追い出しはせん。ただお前たちの教育をどうしようかと悩んでいるんだ」
更に混乱する5人。
教育といわれても、この5人に教育できる能力を持つ者はパメラ・バーバラ・キャロラインの3人だけ、だと思っているからだ。
3人が順番に教育をするか、どうやってその時間を作るか、その程度の問題としか考えていなかった。
ちなみに昨晩から今朝にかけて行為を続けた3人は、自分のステータスが上昇していることに気付いていない。
「アタイ達が鍛えてもいいけど、時間がかかり過ぎるからねぇ」
「仕方が無いから俺が相手をしよう。こればっかりは俺が相手をしないとダメだからな」
「え!? シュウト様は男性が相手でもイケる御方だったのですか!?」
「バーバラ……お前、俺がいままで男を相手にした事があったか?」
「ありません! なので安心しました!」
バーバラがこんな事を口走ったのには理由があった。
他の女に目移りするのは仕方がないが、男までライバルになったらたまったもんじゃない。そう思っていたからだ。
しかし余計に混乱する新人5人。
修斗が相手をする? 訓練を付けてくれるのか? と内心焦っている。
修斗の実力を知らないからだが、稽古をつけてくれても逆に困るからだ。
特に騎士のウィリアム騎士団長などは、剣を使うため怪我をさせてしまうのではないかと、不安で仕方が無いのだ。
だが、その不安は一瞬で吹き飛んだ。
屋敷を出て離れた場所にある森に修斗が入ると、新人5人は慌てて止めようとするが、パメラ達も付いてきたので安心したようだ。
そう、ここは魔の森と呼ばれる魔物の巣窟。
一般人が入り込んだら生きて帰る事は不可能な場所。
さっそく何かが修斗に向けて襲い掛かってきたのだが……腕を掴んで地面にたたきつけた。
「おい、そこの騎士、コレを倒してみろ」
ウィリアム騎士団長に言っているのだが、ウィリアムは固まっていた。
修斗が地面にたたきつけた魔物は全高10メートルを超え、全身に毛を生やした2本足のバケモノだったのだ。
魔の森では中くらいの強さだが、本来ならばマスタークラスのパーティーで討伐する相手だ。
それを片手でヒョイっと投げ飛ばしてしまったのだ。
「え? ……あ、あれ? どうして?」
理解できるはずがなかった。
修斗には武勇伝などが無く、その強さを知る人間は数少ないのだから。
武勇伝のほとんどがパメラ達3人の物で、修斗はお飾りだと考えていたのだ。
ウィリアムが動けない魔物を倒すのにかかった時間は1時間以上。
しかも剣を3本折った結果だ。
「シュウト様って強かったんだ……ただの床上手じゃなかったんだね」
「わー、シュウト様スゴイデス! カッコイイ!」
「あのウィリアムでも苦労する相手を……シュウト様は一騎当千なのだね」
手を叩いて喜ぶ新修斗の女3人。
しかし騎士団長ウィリアムと同様に固まっているものが居る。
雑用係のビリーだ。
「よし次。そこのお前……ゲリー」
「ビリーでございますですハイ」
「ブリブリゲリー、お前は何が得意だ?」
反論したいところだが、反論したら物理的に首が飛びそうだったので、痙攣する目元を笑顔でこらえて答える。
「私はコレが得意、という物はございませんですハイ。すべてをソツなくこなす、それが雑用係たるゆえんでございますですハイ」
はいそうですかと引き下がる修斗ではない。だが押し問答をするつもりもない様で、さっさとステータスを確認した。
するとどうだろう、本当にステータスの全数値は80前後で収まっており、スキルも満遍なく15~20の間に収まっている。
「お前が今までにやってきた仕事は?」
「私は旅をしておりましたですハイ。旅をしながら商売をし、襲われれば撃退し、乞われれば教え、与えておりましたですハイ」
恐らくその言葉に嘘は無いのだろう。一人で何でもできるタイプ、オールラウンダーというのは稀に居る。しかし多分に漏れず器用貧乏で、手伝いや補佐は出来てもメインにはなれない。
なるほど、雑用係がうってつけだ。
だからと言って修斗がやる事に変わりはない。
2人のステータスに一文を追加した。
スキル:能力値上昇速度10倍(隠ぺい中)
その上で修斗は各種訓練を施したのだ。
3日ほどかけて訓練した結果、ウィリアムは力強さと防御力が300を超え、ビリーは全てが150を超えた。
これだけの数値があれば、並大抵の相手に負ける事はないし、国の運営に関わっても間違った判断をする事は少ないだろう。
ただその間に、新人女3人は全ステータスが400を超えていたのだが……。
「よし。それでは次だが、この国に存在するギルドはなんだ?」
謁見の間で主要人物を集め、次の方針を決めている様だ。
パメラ、バーバラ、キャロラインは相変わらず玉座の側に立ち、その正面にウィリアム騎士団長、レベッカ魔法兵長、キャロル内政・人事長、フローレンス都市開発長、ビリー雑用係が片膝をついている。
「はいシュウト様。現在ザナドゥ王国には商業ギルドの他、生産系の各ギルド、技能系のギルドが存在してございます」
男装の麗人フローレンスが立ち上がりそらで答えたが、どこか演技がかっている。
だがそこには修斗が聞きたい名前が入っていなかった。
「冒険者ギルドは無いのか?」
「申し訳ございません。冒険者ギルドはまだザナドゥ王国を国とは認めておらず、あくまでもいち都市としてのスタンスを取ってございます」
それは無理もない話で、ザナドゥ王国は誕生して1年も経っていないのだ。
他のギルドとは違い何でも屋に近い冒険者ギルドだが、それ故に国の運営に関わる仕事をする事がある。
信頼の無い国にギルドを置くことは出来ないのだ。
「他に無いギルドはあるか?」
「まだいくつかございますが、冒険者ギルド以外はすでに施設の建築に入っております」
「交渉はしているのか?」
「もちろんです。ですが中々いい返事を頂けません」
冒険者自体が必要とわけではなく、他国に有って自国に無いというのが気に食わないのだ。
「分かった。一番近くにある冒険者ギルドはどこだ?」
「オークターガースの冒険者ギルドが最も近いかと」
「よし。では俺自ら出向いて話をしてこよう」
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