ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第44話 僕っ娘の依頼

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「……何の用だ」

「友達を助けてください!」

「自分でやれ、じゃあな」

「だぁ~かぁ~らぁ~! 僕じゃ無理だから助けて欲しいんだってばぁ!」

 折角足から引き離したのに、今度は背中におぶさってきた。
 体を揺らして落そうとするが、なかなかどうしてガッチリしがみ付き離れない。

「助けてくれるって言うまで離れない!」

 このイライラした気分を背中に当たる胸で紛らわそうとしたが、残念ながらこの少女には背中に当たる感触が無かった。

「離れないのなら勝手に付いてこい」

「むぅ! 馬鹿にしてる? こう見えても冒険者なんだ……どこ? ここ」

 空間を開いて次の街に移動したようだ。
 ここは街の外にある森の中だが、目の前には大きな門がある。
 背中に少女がいる事などお構いなしに歩き始め、門で受付を行いつつ……少女を無視し続けた。

「あ! ちょっとちょっと、待ってってば! 僕も受付するから! 置いてかないでよ~!」

 慌てて背中から降りて大急ぎで受付を終わらせ、修斗に置いて行かれまいと走って追いかける。

 門番に冒険者ギルドの場所を聞いていたから直ぐにたどり着けた。
 そして少女は……必死に走ってきている。
 この街は小規模な街で人口も多くない為か、昼間だというのに人通りも少なくとても静かだ。

 ギルドに入ると掲示板を目指して進むのだが……到着する前に結果が分かってしまうほどに掲示板は隙間だらけだ。
 一応確認するが、Bランクの依頼は一つもない。

「そういえばシュウトってBランクの依頼を受けまくってるんでしょ? なんで? なんで?」

 ずけずけと聞いて来る少女を無視し、受付へと移動する。

「もう! なんで無視するんだよぅ!」

「いらっしゃいませ! 本日はどういった御用件でしょうか」

「Bランクの依頼が無いんだが、いつもこうなのか?」

「いつもはBランクの依頼は残っているのですが、最近はBランクの依頼を大量受注する人が居るらしく、依頼が無くなったら困ると思った冒険者が、我先にと受け始めたんです。ですので最近は出したらすぐに誰かが受けてしまいますね」

 つまりそれは、修斗がBランク依頼を大量に受けた事による弊害だった。
 受付嬢の言う通り、普段はBランクの依頼は残っている。
 Bランク冒険者は最初の頃は懸命に依頼を受けるが、ある程度たつと足が鈍るのだ。
 Aランクに上がれないと悟った時、それは顕著に表れる。

「大きな街は軒並みBランクの依頼が無くなっていたな。小さい街でもそうだという事は、どこに行っても同じという事か?」

「ふっふっふっふっふ!」

「そうですね、今はどの街でも同じだと聞いています」

「ふっふっふ! ふーっふっふっふ!」

「そうか……それは困ったな。俺は急いでAランクに上がらないといけないんだが、何か依頼を受ける以外でランクを上げる方法は無いのか?」

「ふー! ふー! ふー! ふー!」

「残念ですが、ランクアップには規定数の依頼をこなすしかありません」

「こっち見ろよー! さっきから僕が必死にアピールしてるじゃんか!」

 遂にしびれを切らした少女が暴れ始めた。
 それこそ床を転げまわり、おもちゃをねだる子供の様に。

「あのヒルデガルドさん、何度言われても依頼を受ける事は出来ませんからね?」

 ヒルデガルド……どうやらそれが少女の名前のようだ。
 しかしギルドが依頼を受ける? どういう事だろうか。

「なんだ? このガキはギルドに依頼を出しに来ていたのか?」

「そう! それなのにみんな冷たくてさ? 僕が必死に訴えてるのにだーれも聞いてくれないんだ!」

「そうか、なら引き続き頑張れ」

 次の街へ向かうべく、修斗はギルドを後にする。

「だから待ってって言ってるじゃんか! どうしてこんな美少女を無視できるかな!?」

 美少女……今まで散々美少女を見てきた修斗にしてみたら、少女・ヒルデガルドは精々が中の上だ。
 なので一度振り向いて、ヒルデガルドを上から下までまじまじと見つめそして、鼻で笑った。

「ば、バカにしたな!? いま私をバカにしただろう!」

「バカにはしていない。気の毒だなと思っただけさ」

「それをバカにしたっていうんだろ~が~!」

 修斗の胸ぐらを掴んで前後に振ろうとするがびくともせず、逆にヒルデガルドが前後に振られている。

「僕が依頼を出すからそれを受けてよ! きっとBランクになると思うからさ!!」

 流石にBランクの依頼と聞いては、修斗は無視する事が出来なかった。
 そういえばこの少女、友人を助けてくれと言っていた気がする。

「一応聞いてやろう。依頼はどんな内容だ?」

「えっとねえっとね、僕の友人が剣闘会けんとうかいに出るんだけどね、優勝できるように鍛えてあげて欲しいんだ!」

「その友人というのは女か?」

「男の子だよ!」

「じゃあな」

 相手が男と聞いて、一気にやる気が失せた修斗。
 
「だから待ってってばぁ~~!! どうしてココでやる気をなくすかな!?」

「俺は多感な年ごろなんだよ」

「シュウトって強いんでしょ? 1日で3ランクアップしたって聞いたよ? Aランクになりたいなら、この依頼は受けておいた方がいいよ~?」

「時間のかかる依頼は受けられないんだよ」

「大丈夫! 剣闘会は明日だから!」

 ……明日? ヒルデガルドは1日で優勝できる実力を付けろと言っているのだろうか。
 そんなお手軽な方法など存在するはずが……存在している。
 対象のスタータスさえも変更可能な修斗になら、1日どころか数分で最強の戦士にする事が可能なのだ。

 だがここで修斗が考えた事は、どの程度の強さにしたらいいのか、だ。
 もちろん剣闘会が終わったらステータスを元に戻すが、いわゆる勇者クラスにしたらいいのか、それともそれ以上が必要なのか、それすら分かっていない。

「一つ確認してもいいか?」

「なになに? なんでも聞いてみ?」

「お前はアホだろう」

「あはははは~、よく言われる! でもねでもね、可愛いアホの子なんだって! すごいでしょ!」

 正真正銘アホの子のようだ。

「それで、依頼のランクはBなのか?」

「ううん、A」

「受けられないだろうが!!!」
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