ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第48話 推薦状と上がらないランク

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 修斗が向かった先はロールドルフ国。
 修斗が異世界に転生した最初の国であり、パメラ、バーバラ、キャロラインが住んでいた国だ。

「おいナターシャ、ん? なんだ朝から元気だな」

「しゅ、シュウトさま!?」

「終わってからでいいから食堂へ来い」

「いえ大丈夫です! 今すぐご用事をキャッ!」

 ナターシャ、修斗がこの国に残した傀儡くぐつの一人だ。
 第一王子のきさきでありながら、実質国を支配している。
 そのナターシャは王子にまたがり腰を振っていたが、王子が尻を持つ手を離さないため転びそうになった。

「構わん、子をしっかりと残すのも役目だ。あとで可愛がってやるから安心しろ」

「は、はい、ありがとうございます」

 ちなみに嫁が上で腰を振っているのだが、下に居る王子は修斗が居る事にも気付いておらず、ひたすらナターシャの名を呼んで腰を動かしている。
 どうやらあらゆる場面でナターシャが支配しているようだ。

 部屋を出て久しぶりに王城の中を歩いているが、どうやら修斗の事を知らない者が増えているようだ。
 すれ違っても誰も反応しない。
 だが数名は覚えがあるようで、大慌てでどこかへと走っていく。

「しゅ、シュウト様ですか!?」

「久しぶりだな料理長」

「お久しぶりでございます! 本日は城に御用でもありましたか?」
 
 厨房から慌てて料理長が出てくると、修斗は適当な席に座る。

「用というほどではないが――」

「シュウトさま~~~!!!」

 遠くから修斗を呼ぶ声が聞える。
 もうナターシャの朝の情事は終わったのか? とも思ったが声が違う。
 この声はもう1人の方だ。

「シュウト様! お久しぶりでございます! 本日はどういった御用でしょうか!? あ、新しい武器が手に入りましたのでそちらでしょうか!?」

 もう一人の傀儡キャシーだ。
 キャシーは第2王子の妃であり、裏で国を支配しているもう一人の方だ。
 修斗が座るイスの前でひざまずき、頭を垂れている。

「武器は必要ない。お前でもいいな、キャシー、俺はいま冒険者をしているんだが、BランクからAランクに上がるのに、貴族の推薦状が必要なんだ。書け」

「かしこまりました! このキャシー、全身全霊を持って書かせていただきます!」

「シュウトさまぁー!」

 もう一つの声が修斗を呼ぶ。
 この声はナターシャだろう。どうやら朝の情事は終わったようだ。

「シュウト様! お待たせいたしました。本日はどういった御用件で……あらキャシーさん、おはようございます」

「おはようナターシャ。シュウト様は冒険者をなさっているらしく、BからAに上がる推薦状が必要だったそうだ。だから用意するから、ナターシャはもういいよ」

「あらあら、ソレはソレはよろしゅうございますね。しかしキャシーさん? 第2王子妃よりも、王太子妃の推薦状の方が何かと便利でしょうから、私が用意しますわね」

「いやいや、数があればいいという物では」

「お前達」

「「はい! 失礼しました!」」

 ナターシャも修斗の前で跪いた。
 その風景を異様な目で見ている食事中の者達。
 事情を知っているのは最低でも数年は使えている者のみだ。

「2枚あっても困る事は無いだろう。安心しろ、久しぶりに来たんだから、きちんと可愛がってやる」

 その言葉を聞いて安心したのか、2人は顔を合わせて笑っている。
 まもなく2通の推薦状が食堂に居る修斗の元に届けられた。
 紹介状を無造作にバッグに放り込むと、以前修斗が使っていた部屋へと向かう。

 それにそそくさと付いて行くナターシャとキャシー。
 この日の2人の公務はキャンセルされたらしい。

 昼を過ぎたあたり、久しぶりに2人の体を堪能した修斗は空間を開け、ザナドゥ王国の隣の国、オークターガースへと向かった。

 向かったといっても、空間をひらいてギルドに一歩で到着したのだが。

「わ。シュウトさんでしたか、一体何が起きたのかと思いました」

 受付嬢が驚いているが、何が起きても修斗が絡んでいるなら仕方がない、そう思っているようだ。

「Aランクの試験を受けるぞ」

 ギルドタグを渡し、試験を受ける旨を伝える。
 
「え~っと、はいBランクの規定回数をクリアしていますね。シュウトさんにはベルベット伯爵夫人から推薦状が――」

「推薦状が必要なんだろう? ほら2通ある」

 ナターシャとキャシーに書かせた紹介状を見せると、怪訝そうな顔をして受け取る。
 丸められ蝋封ろうふうされている紋章を見ると、受付嬢の動きが止まる。

「しゅ、シュウトさん!? こここここの推薦状はどちらの国のどちら様からの物でしょうか!?!?」

「あん? なんて国だったかな、ナターシャとキャシーが居る国なんだが」

「な、ナターシャ王太子妃とキャシー第2王子妃でしょうか!?」

「おお、そうだそれだな」

「マスター! マスター!!!」

 受付嬢が大慌てで階段を上がっていった。
 何があったのか知らないが、階段を急いで降りてくる音がする。

「こ、この推薦状を持ってきたのは君かね!」

 恰幅かっぷくの良い男性はやたらと豪華なトレイに2通の紹介状をのせ、修斗に詰め寄る。

「そうだが、何か問題があったか? あの2人の紹介状では不足だったか?」

「とっ、とんでもございませんです! すぐに、今すぐに確認いたしますので、今しばらくのご辛抱を!」

 なぜだか妙にへりくだっているが、蝋封を解く手が震えている事と関係があるのだろうか。
 そして2通の紹介状を読んでいるようだが……恰幅の良い男性と受付嬢は慌てて何か作業を始める。

「お待たせしました! こちらがAランクのギルドタグになります! Aランクおめでとうございます!」

「おめでとうございます!」

 受付嬢と男性が頭を下げてギルドタグを渡す。
 それを修斗は受け取るのだが、いつまでたっても2人が頭を上げない。

「おい、試験はどうした」

「試験だなんてとんでもございません! 即刻Aランクに昇格でございます!」

 男性が頭に手を当てて、まるで悪徳商人が悪事を誤魔化す様に自分の頭を撫でている。
 しかも冷や汗を流して。

「じゃあ俺はAランクなのか?」

「その通りです。シュウトさんはAランク冒険者になられました」

 受付嬢の様子もおかしいが、Aランクになれたのなら文句はない様だ。
 
「そうか。なら以前話をした、ザナドゥ王国に冒険者ギルドを置く話、本部に通しておいてくれ」

「か、かしこまりました! 必ず話を通しておきます!」

 受付嬢とマスターが挙動不審なのは気になるが、より確実にギルドを置くためにSランクを目指すようだ。
 しかし掲示板にはAランクの依頼は貼られていない。
 
「あ~、Aランクの依頼は冒険者を指名してくるんだったか?」

「そうですね、ほとんどの依頼が指名されてきます」

「AランクからSランクへは何回依頼をこなせばいい?」

「Sランクへは回数は関係ありません。誰もが納得する依頼を達成し、反論の余地がない成果を出した者がSランクになる事が出来ます」

「そうか。他のSランクは何をして上がったんだ?」

 11人居るSランク冒険者は、それぞれが一騎当千と言われる実力を持ち、成体のドラゴンを倒したり、頭が回るため国家間の紛争を交渉によって収めたりしたようだ。
 なるほど、力だけではなく、知力も必要なようだ。

「なるほどな。ドラゴンはどこに居る?」

「現在は確認されておりません……」

「なら和平を望んでいる紛争地帯は?」

「現在は確認されておりません……」

「……ならドラゴンと同等クラスのモンスターは?」

「現在は確認されておりません……」

「では紛争を収めるのと同等の成果を出せる交渉ごとは?」

「現在は……確認されて……おりません……」

 なるほど、つまりは実質不可能という訳だ。
 以前冒険者になるための試験の時、『純白の翼騎士団』リチャードが言っていた事、実質不可能とはこの事だったのだろう。
 Sランクに上がれる成果を出せないのなら、Sランクには成れないのだから。

「それは仕方がないな」

「も、申し訳ありません! Sランクまで上がろうって人、ずっと居なくて……あ、あの、騎士団のリチャード様を頼ってみては――」

「面倒くさいが成体ドラゴンではなく、古代のドラゴンを狩ってくることにしよう」

「「え?」」
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