ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第54話 ハイエルフ対人間

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「ハイエルフの儀式に乗っ取り、3対3の決闘を申し込む!」

 ハイエルフの男1人が剣を構え、もう一人は魔法の杖を持つ。
 そして女は矢をつがえている。

 女のハイエルフは青みがかった金髪で、ひざ裏まであるストレート。
 背はスラリと高く170センチ以上はあるだろうが、小顔で目が鋭く、緑色の瞳は服の色とよくあっている。
 足は細いが尻は大きめ、胸は控えめのCカップあたりだろう。

 初めて見る人型の他種族に、修斗は興奮を隠せない。
 自らなぶって遊ぼうかと思った様だが、ウィリアム騎士団長とレベッカ魔法兵長が前に出た。

「シュウト様、ここは我らにお任せを。日頃の訓練の成果を試してみたいのです」

「シュウト様お願いします。アタシ達は軍のトップとして、シュウト様に降りかかる火の粉を払うのが役目。その役目、この場で果たしたいのです」

 修斗の前に立って頭を下げている。
 確かに何かあるたびに修斗が戦っていてはキリが無い。
 まずは2人が止めることが先になるだろうから、ここは戦わせて様子を見た方がいいかもしれない。

「いいだろう。だがもう1人はどうする? パメラ・バーバラ・キャロラインでは戦力過多になるぞ」

「我ら2人で十分かと存じます」

「ははっ、そうか、ならやってみろ」

「ありがたき幸せ!」

「ありがとうございます!」

 そう言って修斗は下がり、ウィリアム騎士団長とレベッカ魔法兵長に任せる事にした。

「お前達は魔の森の住人かい? 残念だけどね、ここはシュウト様の国になったんだ。シュウト様に楯突いた罪は償ってもらわないとねぇ」

「人間ごときがハイエルフに勝てるつもりか? かじった程度の魔法や剣技では、我らの長きにわたる歴史の前では児戯に等しい」

 ギャラリーが距離を置く。
 兵士たちはウィリアム騎士団長とレベッカ魔法兵長の実力を知っているため、巻き添えを食らわないように離れたのだ。
 しかも相手はハイエルフ、何が起きるか想像もつかない。

「そう思うのなら早くかかってこい。ハンデをくれてやったのだからな」

「なめるな!!!」

 この戦い、修斗はステータスを見ていないため、ハイエルフの実力がどれだけなのか分かっていない。
 ウィリアム騎士団長とレベッカ魔法兵長の能力は知っていても、ハイエルフの力はどれだけなのか、どんな戦い方をするのか、スキルは何なのか、それが楽しみのようだ。

 ハイエルフの女が矢を放つ。
 その矢は4本同時に放たれたが、明後日の方向の飛んで行く。
 いきなりミスショットかと思われたが、矢は途中で方向を変え、正確に2人を目がけて飛んできたのだ。

 矢を曲げて撃つことは可能だが、実戦で、しかも4本まとめて曲げるのは至難の業だ。
 それを正確にやってのけるのだから、女エルフの能力の高さが分かる。
 
 だが2人も負けていない。
 ウィリアム騎士団長は1本を剣で叩き落とし、もう1本は手で握って止め、レベッカ魔法兵長は矢を目がけて魔法のニードルを発射し撃ち落とす。

「こんな曲芸で私達を倒せると思っているのか?」

「なめられたもんだねぇ」

 だが矢は目くらましでしかなかった。
 ハイエルフの剣士の姿が無いのだ。
 2人は周囲を見回すがどこにも姿が見えない。
 女エルフは引き続き矢を放ち、魔法エルフも魔法攻撃を開始する。

 一見両方とも遠距離攻撃で、接近してしまえば対処できそうなのだが、魔法使いは自分の周囲に魔術トラップを張り巡らせており、女エルフの弓は小型であり、剣の間合いでも攻撃が出来るものとなっている。
 更には姿を消した剣士が何をしているのか、それを気にしながら戦わねばならない。

「ウィリアム」

「ああ、任せろ」

 2人が合図をすると、ウィリアム騎士団長は女エルフと魔法エルフに近づき始める。
 魔法攻撃はレベッカ魔法兵長が魔法で討ち消し、矢はウィリアム騎士団長が対処しているが、思った以上に攻撃が激しく、中々接近できない様だ。
 ウィリアム騎士団長とレベッカ魔法兵長の距離があき、そろそろウィリアム騎士団長が女エルフを間合いに捕らえようとした頃、音もなく剣士エルフが姿を現した。

 レベッカ魔法兵長の目の前に、だ。
 本来はあり得ないのだ。
 今は魔法使い同士が魔法を撃ち合いしており、その間に入ると言うのは魔法戦に巻き込まれるからだ。
 にもかかわらず、あえてそこに姿を現した理由……それは。

「魔法が……消滅している!?」

 レベッカ魔法兵長が撃つ魔法のことごとくが、剣士エルフの体に触れた瞬間に消滅するのだ。
 そういう魔法があるのか、そういスキルがあるのかは分からない。
 今確かなのは、レベッカ魔法兵長の魔法攻撃が通用しないという事実だ。

「レベッカ!」

「よそ見をしている暇はないぞ! あなたはここで死ぬのだから!」

 女エルフが自ら間合いを詰め、小型の弓を目の前で構えると、なんと弓が大きくなった。
 弓は折り畳み式になっているようで、弓の大きさは倍ほどになっている。
 今までよりも威力のある攻撃が至近距離から放たれると、ウィリアム騎士団長はその巨体が吹き飛ばされた。

 そしてレベッカ魔法兵長は……剣士エルフの剣をその体に受けていた。

「ふっ、人間風情が、少し強いからと調子に乗りおって。貴様らの尺度で我々を計ろうとするからそうなるのだ」

 魔法エルフがウィリアム騎士団長に近づき、とどめを刺そうと杖の先に火球を作る。
 そして火球が放たれてウィリアム騎士団長の体が燃え上がると、魔法エルフは高らかに言い放つ。

「さあこれでわかっただろう! お前達人間ではハイエルフである我々には勝てない! おとなしくこの地を去るのだ!」

 兵士が動揺し、見物客の間に不安が広がる中、修斗達重鎮は冷静だった。
 その姿が不満だったのだろう、魔法エルフは杖を修斗に向ける。

「何をしている! 急げばこの者達の命は助かろう! それとも敗者に対する情けすら人間には無いのか!」

 その時悲鳴が上がった。
 魔法エルフが声の方を見ると、そこには炎に包まれたウィリアム騎士団長が、女エルフの首を掴んで持ち上げていた。

 更に悲鳴が上がり、そちらでは剣を落とした剣士エルフが、レベッカ魔法兵長の短剣を首に突きつけられ動けないでいる。

「な!? バカな! 確かに致命傷を負わせたはず! 一体何が起きているのだ!」

「ハイエルフってのは最高にバカなエルフって意味なのか?」

 修斗の言葉に魔法エルフが振り向き、怒りの表情を浮かべる。

「そいつらはずっと余裕を持って戦っていた。エルフ風情が、俺達に勝てると思っていたのか?」

 剣士エルフに攻撃されたレベッカ魔法兵長は、短剣2本を手にし、剣士エルフの剣を挟み込むようにして止めていたのだ。
 ウィリアム騎士団長はというと、放たれた矢を口で咥えていたが、想像より威力があり過ぎて後方にジャンプしただけだったのだ。
 鍛錬を続けた結果、魔法抵抗マジックレジストスキルも手にしている。

 それぞれが剣士エルフと女エルフを戦闘不能にし、魔法エルフにせまる。
 すでに……勝負はついていた。
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