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第2章 ザナドゥ王国

第70話 ダークエルフの里

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 魔族の集結地点になっている事など知る由もなく、今日も修斗はいつも通りに暮らしていた。
 今日は珍しくハイエルフの長老が貢物みつぎものを持ってきていたのだ。
 数名のハイエルフを引き連れてきたのだが、見覚えの無いエルフが混じっている。

「そのエルフは見た事が無いな。他の里のヤツか?」

「その通りでございます。この者は山岳地帯に住むエルフの娘で、その里で問題が発生したため、シュウト様のお知恵をお借りしたいというので、連れてまいりました」

 長老が玉座に向かい一礼すると、エルフの娘は一歩前に出た。

「お、お、お、お初にお目にかかります! 私はルルナラ・ルーラ・セルテト・ヤックタクーと申します! シュウト陛下にお会いできたことを、大変光栄に思っておりましゅ!」

 かんだ。
 どうやらこのエルフ、ハイエルフとは違ってかなり人間に近いようだ。
 ハイエルフは感情の起伏が少なく、緊張すると言う事があまりない。
 なのにこのエルフ、ルルナラ・ルーラ・セルテト・ヤックタクーはガッチガチだ。

 ルルナラの髪は青色で長く、頭の後ろで纏めている。
 肌の色は軽く日焼けをした程度に黒く、大きく開かれた瞳は金色、特徴的な長い耳はハイエルフよりも短い。
 深い青色の細長いエプロンの様な布を首からかけ、背中は丸出し、尻のあたりから布がエプロンと結ばれている。
 一見エロチャイナ服にも見えるが、肩や腕は丸出しな作りのため、結び目を2カ所ほどくだけで丸裸になってしまう。

 何よりハイエルフとは明確な違いがある。そう、巨乳なのだ。
 いわゆる褐色巨乳のエルフだ。多分Fカップ。
 ああもう一つある、とても表情豊かで、感情がとても分かりやすい。
 いわゆるダークエルフといわれる種族だが、肌の色が少し濃いだけで、他には特に差が無い。

「緊張しなくてもいい。山岳地帯のエルフというと、建国式典に来ていたエルフの長老の所か?」

「ハイ! その通りです!」

 エルフ達には秘宝といわれるものが無いため、武具一式や工芸品が贈られてきた。
 人間の物とは随分と作りが違うため、印象に残っていたようだ。

「それで、里ではどんな問題が発生している」

「どうも最近、魔の森の魔物たちの行動が活発になっており、里周辺ではあまり見なかった、大型魔物が姿を見せるようになったのです。数が少ないため対処できていますが、あまり頻繁に起こると対処しきれなくなってしまい……里を捨てて移動しなくてはなりません」

「大型か、俺は見た事が無いが、そいつは強いのか?」

「そうさね、ハイエルフなら問題は無いだろうけど、普通のエルフだとキツいだろうね」

 横に立っているパメラにたずねたが、どうやらエルフとハイエルフでは能力に大きな差があるようだ。
 
「ならハイエルフの里が手を貸せばどうだ?」

「申し訳ございませんシュウト様。ハイエルフは数が少なく、他の里の事までは手が回らず……」

 確か以前行ったハイエルフの里には、ハイエルフが30人にも満たなかった。
 見た目では分からないが、まだ狩りも出来ない子供もいる事だろう。
 それを考えると、確かに自分の里の事で手いっぱいになる。

「そうか。なら一度遊びに行ってみよう。その時に手があれば打つ」

「ありがとうございます! つきましては、私のこの身を捧げたく――」

「必要ない」

「ぞんじま……は、はいぃ?」

「必要ないといった。いま女が順番待ちをしていてな、毎晩10人以上は抱いているが先が見えん。だから女の貢物は断っている」

「そ、そんなぁ! ではどうやってご恩をお返ししたら……」

「気にするな。バルデ=シュタットの里からは頻繁に貢物が贈られてくる、それでいい」

「で、ではハイエルフ達を狂わせたという絶技は……?」

「? なんの話だ?」

「その、数年に1回といわれるハイエルフの生殖行為が、ここ最近は頻繁になったと聞きまして……」

 なんのことか意味が分からずに長老を見ると、長老は頭をかきながら答える。

「以前ザナドゥ王国に送った3人の内、男2人が盛んになりまして、妻や恋人と頻繁に……その、子づくりをしているのです。それを不思議に思った周りの者達が話を聞き、伝染するように里の者達まで頻繁に子づくりをするようになったのです」

 ザナドゥ王国を解体させようと送り込んだ3人の内、1人は重鎮であるカーリン・ピースだ。
 そして里に残った2人の男は、捕らえられている時にパメラ達女性陣におもちゃにされたのだが、すっかり性に目覚めてしまったらしい。

 薬を飲んで勃起させ、事務的にしか行為をしなかったハイエルフにとって、溺れるには十分な快楽だったのだろう。
 今まで知らなかった方法での行為は、ハイエルフ達の間に瞬く間に広がったようだ。

 そしてその噂を聞きつけ、ルルナラ・ルーラ・セルテト……ルルナラは自ら志願し、ハイエルフを虜にした快楽を体験したかったのだ。
 が! 見事に断られてしまった。

「せっかく高い倍率を勝ち残ってここまで来たのです! せめて、せめてご慈悲をお与えくださいまし!」

 本当に、本当にすがるような目で両手を組み、膝をついて祈り始めた。
 しかし倍率? ダークエルフの里では一体何が行われたのだろうか。
 
「その、私は自分で言うのも何ですが、いい女だと思います、スタイルも自信があります、胸にも自信があります! なのでかる~い気持ちで、おつまみ程度でもいいので、味見をされてみてはいかがでしょうか? ほら、ほら」

 胸元を広げたり、腰をくねらせ修斗を誘惑しようとしている。
 その姿は確かに魅力的ではあるが、修斗は他の所に反応したようだ。

「ぶあっはっはっは! 面白いなお前! そこまで自分に素直になれる奴は久しぶりだ。いいだろう、順番を飛ばして、今夜はお前にしてやる」

「ありがとうございますぅ! 精いっぱい、ご奉仕させていただきますね!」

 気が付けば随分と砕けた喋り方になっている。
 これがルルナラの素の姿なのだろう。

 ルルナラの件はひとまず終了し、次の訪問者が現れた。

「は、初めましてシュウト様!」

 現れたのはまだ幼い少女……なのだが、妙にゴテゴテしたドレスと、妙に分厚い化粧のため子供には見えず、小さなババァに見える。
 最近こういうパターンが多くあり、修斗の側に置かせようと手当たり次第に送られてくるのだ。

 女の貢物を断っている理由の一つがコレだが、今回は特に酷い。
 確かに女は化粧で化けるが、行き過ぎると化け物になる。
 自分の欲望に素直に生きてきた修斗だが、他人の、特に国家間の欲望にはまだ慣れないようだ。

 先ほどのエルフ・ルルナラなどは非常に単純明快であり、自分の見せ方を知っていたため食指が動いたのだ。
 幼女の、しかも厚化粧などされていては、幼女趣味の無い修斗の食指は全く動かなかった。

 こんなやり取りが1日中続くのだが、各国から女が贈られなくなるのは、それから数ヶ月を要した。
 そのストレスを発散させる様に、夜の行為は激しくなるのだった。



 そして約束通り、山岳地帯に住むエルフの里へ修斗が行くと、確かに大型の魔物が里の周辺を沢山うろついていた。
 すぐに里を襲う訳ではないが、確かにこれは脅威だろう。
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