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第3章 異世界召喚
第108話 抱腹絶倒の勇者たち
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『さっさと膝まづきなさい! 付け上がった勇者どもめ!』
リリーアムの命令は国王命令絶対施行に含まれる。
王族ならば有効なのだろう。
勇者6人はブタ女・リリーアムの前に膝まづき、頭を垂れている。
「全く、どうやって大魔王を倒したのか知りませんが、よくもまあ恩を忘れて好き勝手出来るものですね」
恩……生贄として召喚したのに、一体どんな恩があるのだろうか。
恨む以外の感情は無いと思うのだが。
「さあ、今からイルメリータントへ戻り、陛下に許しを請うのです! 何をグズグズしているのですか? さっさと立ち上がりなさい!」
誰も立ち上がらない。
それどころかクスクスと笑い声が聞こえる。
「こほーっほっほっほ! お前様、我はもう無理じゃ! この人間モドキ、未だに命令に従うと思っておるのじゃな! こほーっほっほ!!!」
大魔王エルノヴァが腹を抱えて笑っている。
それに釣られたのか、勇者たちも腹を抱えて笑い始めた。
「あっはっはっは! ちょっとやめてよ! 我慢してたのに、抑えきれないじゃない!」
「プッ……クスクスクス……ぷっ、ふっふっふ」
「うひゃひゃひゃひゃ! ひ~っひっひっひ!」
「ま、待て、笑うな、笑うと俺まで……ぐあっはっはっは~」
「待て、落ち着け私、騎士たる者は何があろうともあーっはっはっはぁ!」
男勇者などはこらえきれず、床を転げまわり、その場にいた他の女達も、声を殺して笑っている。
その状況を理解できないのは、リリーアムと護衛だけだ。
「な……何がおかしいのですか!!! 命令に従いなさい! 笑うな、笑うな!!!」
「お前は本当に愚かなブタだな」
「シュウト! お前は最初っから私に反抗的でしたね! 早く馬鹿笑いを止めさせなさい!」
「おいおい、馬鹿笑いするしかない程におかしかったんだ、人に命令する前に、しっかりと自分達の立ち位置を見定めろよ」
「何を言っているのです! お前達は私達の命令に従っていれば良いのです! 誰のお陰で今まで生きていられたと思っているのですか!」
「少なくともお前のお陰ではないな。そもそも俺を召喚した時、お前の命を奪わなかった事に感謝してもらわないといけないな」
修斗達の言動が理解できないリリーアムは、顔を真っ赤にして怒る事しか出来ない。
国王命令絶対施行、その状態にある者は、王族の命令に強制的に従わせることができる。
これは勇者を召喚した際に一番最初に施すものであり、その力は絶対だった。
……今までは。
「どうして、どうして命令を聞かない! こんな、こんな事があるはずない!」
リリーアムだけでなく、護衛達も戸惑っている。
今までの勇者は必ず王族の命令を聞いていたのを知っているだけに、今回の事にはどう対処していいのか分からないのだろう。
なにせリリーアムに手を出したわけでもなく、何もしていないのだから。
「いい加減理解しろよ、あんなモノ、とっくの昔に解除しちまった。脳みそまでブタのままなのか?」
「バ! バカにするのですか!!!」
『跪け』
リリーアムが修斗に跪いた。
その事が理解できず、ひたすら困惑し、必死に立ち上がろうとするが……体が動かない。
「こ、これは……シュウト、一体何を――」
『喋るな』
今度は喋る事を禁じられ、口が開かなくなる。
この状況、勇者たちが召喚されて直ぐの時、国王にされた事とよく似ている。
その時とは立場が逆になっているのだ。
リリーアムの体がカタカタと震えている。
「どうした? なぜいきなり跪き、口をつぐんだんだ? ん? リリーアム様? おっと、喋ってもいいぞ」
リリーアムの前でひざを折り、意地悪く顔を覗き込む修斗。
ブタ女の顔は……汗まみれだった。
「うわきったね。豚の脂肪か?」
「な、なぜこのような事が……こんな酷い事をするのですか?」
「あん? 人を生贄として呼び出して、しかも最初の冒険で刺客を差し向け殺そうとしたよな? どの口でほざけるのか教えてくれ」
「な、なぜそれを!?」
「なぜ? 俺が返り討ちにしたからさ」
「バカな! 異世界の劣等種にそんな力があるはずがない!!!」
「俺以外は劣等種だったが、残念だったな、今では全員がお前たちどころか、魔族にも平気で勝てるほどの能力を持っているぞ。どうした? そんな顔して何を考えているんだ? 劣等種」
「わ、私を殺したら元の世界へは戻れませんよ……私が命令をしたら、城の召喚術師たちに言って元の世界へ戻す事も出来ます」
「元の世界に戻りたい奴はいるか?」
全員が首を横に振る。
男勇者たちは戻りたいかと思ったが、どうやらそうでもない様だ。
「おりゃ~この世界にのこるぜぇ。スケの家族もこの世界にいるからよぅ」
「俺も残る。元の世界では一人だったからな、この子を1人にするわけにはいかない」
「私は! 騎士としてこの世界を見届ける義務がある!」
理由はそれぞれだが、この世界の生活を望んでいるようだ。
そしてアイカとヴァージニアだが、当たり前のように修斗と共に行く事を望んでいる。
「だそうだ。ああ、言い忘れていたがな、俺は自分で戻れるんだ。この世界は3人に任せて、俺は戻るぞ」
最大のカードが全く無意味となり、目の前が真っ暗になっているリリーアム。
こうなるとやれる事など1つしか無かった。
「ゆ、許してください……こんな、こんな事になるなんて思ってもいなかったのです……」
「なぜ謝る。俺達に謝るのはお前じゃないだろう?」
「陛下を、陛下をお呼びいたします! 今すぐに……あっ!」
立とうとしたが、まだ修斗の命令は解除されていないため、そのまま床に倒れてしまう。
しかも律儀に再び修斗に跪いた。
「あっはっはっはっは、面白いなお前は。ほら行け、行って呼んで来い」
「た、ただいま!!!」
夜明けまではまだ時間がある。隣国のイルメリータントならば、寝ずに馬を走らせれば間に合うだろう。
リリーアムの命令は国王命令絶対施行に含まれる。
王族ならば有効なのだろう。
勇者6人はブタ女・リリーアムの前に膝まづき、頭を垂れている。
「全く、どうやって大魔王を倒したのか知りませんが、よくもまあ恩を忘れて好き勝手出来るものですね」
恩……生贄として召喚したのに、一体どんな恩があるのだろうか。
恨む以外の感情は無いと思うのだが。
「さあ、今からイルメリータントへ戻り、陛下に許しを請うのです! 何をグズグズしているのですか? さっさと立ち上がりなさい!」
誰も立ち上がらない。
それどころかクスクスと笑い声が聞こえる。
「こほーっほっほっほ! お前様、我はもう無理じゃ! この人間モドキ、未だに命令に従うと思っておるのじゃな! こほーっほっほ!!!」
大魔王エルノヴァが腹を抱えて笑っている。
それに釣られたのか、勇者たちも腹を抱えて笑い始めた。
「あっはっはっは! ちょっとやめてよ! 我慢してたのに、抑えきれないじゃない!」
「プッ……クスクスクス……ぷっ、ふっふっふ」
「うひゃひゃひゃひゃ! ひ~っひっひっひ!」
「ま、待て、笑うな、笑うと俺まで……ぐあっはっはっは~」
「待て、落ち着け私、騎士たる者は何があろうともあーっはっはっはぁ!」
男勇者などはこらえきれず、床を転げまわり、その場にいた他の女達も、声を殺して笑っている。
その状況を理解できないのは、リリーアムと護衛だけだ。
「な……何がおかしいのですか!!! 命令に従いなさい! 笑うな、笑うな!!!」
「お前は本当に愚かなブタだな」
「シュウト! お前は最初っから私に反抗的でしたね! 早く馬鹿笑いを止めさせなさい!」
「おいおい、馬鹿笑いするしかない程におかしかったんだ、人に命令する前に、しっかりと自分達の立ち位置を見定めろよ」
「何を言っているのです! お前達は私達の命令に従っていれば良いのです! 誰のお陰で今まで生きていられたと思っているのですか!」
「少なくともお前のお陰ではないな。そもそも俺を召喚した時、お前の命を奪わなかった事に感謝してもらわないといけないな」
修斗達の言動が理解できないリリーアムは、顔を真っ赤にして怒る事しか出来ない。
国王命令絶対施行、その状態にある者は、王族の命令に強制的に従わせることができる。
これは勇者を召喚した際に一番最初に施すものであり、その力は絶対だった。
……今までは。
「どうして、どうして命令を聞かない! こんな、こんな事があるはずない!」
リリーアムだけでなく、護衛達も戸惑っている。
今までの勇者は必ず王族の命令を聞いていたのを知っているだけに、今回の事にはどう対処していいのか分からないのだろう。
なにせリリーアムに手を出したわけでもなく、何もしていないのだから。
「いい加減理解しろよ、あんなモノ、とっくの昔に解除しちまった。脳みそまでブタのままなのか?」
「バ! バカにするのですか!!!」
『跪け』
リリーアムが修斗に跪いた。
その事が理解できず、ひたすら困惑し、必死に立ち上がろうとするが……体が動かない。
「こ、これは……シュウト、一体何を――」
『喋るな』
今度は喋る事を禁じられ、口が開かなくなる。
この状況、勇者たちが召喚されて直ぐの時、国王にされた事とよく似ている。
その時とは立場が逆になっているのだ。
リリーアムの体がカタカタと震えている。
「どうした? なぜいきなり跪き、口をつぐんだんだ? ん? リリーアム様? おっと、喋ってもいいぞ」
リリーアムの前でひざを折り、意地悪く顔を覗き込む修斗。
ブタ女の顔は……汗まみれだった。
「うわきったね。豚の脂肪か?」
「な、なぜこのような事が……こんな酷い事をするのですか?」
「あん? 人を生贄として呼び出して、しかも最初の冒険で刺客を差し向け殺そうとしたよな? どの口でほざけるのか教えてくれ」
「な、なぜそれを!?」
「なぜ? 俺が返り討ちにしたからさ」
「バカな! 異世界の劣等種にそんな力があるはずがない!!!」
「俺以外は劣等種だったが、残念だったな、今では全員がお前たちどころか、魔族にも平気で勝てるほどの能力を持っているぞ。どうした? そんな顔して何を考えているんだ? 劣等種」
「わ、私を殺したら元の世界へは戻れませんよ……私が命令をしたら、城の召喚術師たちに言って元の世界へ戻す事も出来ます」
「元の世界に戻りたい奴はいるか?」
全員が首を横に振る。
男勇者たちは戻りたいかと思ったが、どうやらそうでもない様だ。
「おりゃ~この世界にのこるぜぇ。スケの家族もこの世界にいるからよぅ」
「俺も残る。元の世界では一人だったからな、この子を1人にするわけにはいかない」
「私は! 騎士としてこの世界を見届ける義務がある!」
理由はそれぞれだが、この世界の生活を望んでいるようだ。
そしてアイカとヴァージニアだが、当たり前のように修斗と共に行く事を望んでいる。
「だそうだ。ああ、言い忘れていたがな、俺は自分で戻れるんだ。この世界は3人に任せて、俺は戻るぞ」
最大のカードが全く無意味となり、目の前が真っ暗になっているリリーアム。
こうなるとやれる事など1つしか無かった。
「ゆ、許してください……こんな、こんな事になるなんて思ってもいなかったのです……」
「なぜ謝る。俺達に謝るのはお前じゃないだろう?」
「陛下を、陛下をお呼びいたします! 今すぐに……あっ!」
立とうとしたが、まだ修斗の命令は解除されていないため、そのまま床に倒れてしまう。
しかも律儀に再び修斗に跪いた。
「あっはっはっはっは、面白いなお前は。ほら行け、行って呼んで来い」
「た、ただいま!!!」
夜明けまではまだ時間がある。隣国のイルメリータントならば、寝ずに馬を走らせれば間に合うだろう。
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