ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第5章 世界大戦

第177話 Sランク冒険者

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 Sランク冒険者、この世界には11人居るらしく、引退した名誉Sランクを入れても15人だ。
 その内の1人がこのハイエルフ・ベルゴットだ。
 ベルゴットはギルドマスターに紹介され、2階の手すりに手をかけて声を上げる。

「諸君、今回は私も討伐に参加する事になった。敵の数は2万を超えるが心配する事は無い、私は1人で1万の魔物を倒せるからだ!」

 冒険者達が歓声を上げる。
 どうやらその実力は誰もが知っているらしく、1人で1万の魔物を倒せるというのもブラフではない様だ。
 ハイエルフ・ベルゴットが片手を上げると歓声がやむ。

「さらに今回はAランク冒険者が複数名いる! それぞれが私のフォローをしたら、2万やそこらの魔物など恐れる事は無い! さあ! Aランク冒険者よ上がってくるのだ!」

 ベルゴットが1階にいる数名を手招きする。
 もちろんフランチェスカも入っている。
 士気を上げるためならばと、渋々2階に上がるのだが……。

「4名のAランク冒険者のみならず、あの! ザナドゥ王国で技術開発をしている天才発明家、ラグズ君もここにいる! きっと素晴らしい道具を提供してくれるはずだ!」

 なんとラグズがキョドりながら2階に現れた。
 職人街にいるはずのラグズがどうしてここに? それはフランチェスカも同じ考えで、目をまん丸に見開いている。

 Sランク1人、Aランク4人、そして発明家のラグズに向けて拍手が送られる。
 指笛を吹いたりからかい半分のナンパをしたり、誰もが2階にいる者が居れば安心だと考えているようだ。
 確かにSとAランクが居れば力強いだろうが、なぜラグズが居るのだろうか。

「ラグ、どうしてここにいるのかしら???」

「そ、それはラグが聞きたいッスよ! フランチェスカさん助けてほしいッス!」

 元々人前に出るのが苦手で、こんなにもてはやされる事など考えた事もなかったのだろう。
 フランチェスカの腕にしがみ付き、背中に隠れてしまった。

「お? ねーちゃん達デキてんのか? キーッス! キーッス!」

 などと2人の様子を見て茶化し始める冒険者達。
 少し怖がっているラグズの為に、フランチェスカはやめさせようと声を荒げ……ようとしてやめた。

「やめないか! ラグズ君が怖がっているではないか! 冒険者が人を怖がらせてどうするのだ!」

 ベルゴットが止めに入ると、一気に静かになってしまった。
 バツが悪そうにする冒険者達をよそに、ベルゴットはラグズの前で片膝をついて頭を下げる。

「すまないラグズ君。悪い奴らではないのだが、少々お調子者でね。許してもらえると嬉しい」

「ふえ? ええっと、だ、大丈夫ッス」

「そうか、ありがとう。ところで2人は知り合いなのかな?」

 フランチェスカの背中に隠れるラグズを見れば、少なくとも顔見知り以上だと思われるだろう。
 別に素性を隠している訳ではないが、ザナドゥ王国関連だと思われるのも都合が悪い。

「ええ、ここまで商団を護衛してきたのだけれど、その商団にいた子よ」

「ああそうだったのか。優れた2人が知り合いとはすばらしい事だ。ぜひこの街を救うために協力して欲しい」

 かなりキザったらしい言い回しだが、ハイエルフはこんな言い回しはしないはずだ。
 しかし外に出るハイエルフという時点で変人の類なので、恐らくは個人の資質という物だろう。



 その後は冒険者と軍隊での簡単な打ち合わせを行い、それぞれの担当部署に付く事になる。
 冒険者と軍隊では戦い方が違うため、完全に分かれて戦うようだ。

 石を高く積み上げられた城壁に登り、ダンジョンの方を見る。
 まだ遠いが、大量の何かが街に向かってくるのが分かる。

 ラグズは2つある望遠鏡を1つフランチェスカに渡し、一緒に覗き込む。
 毛の白い狼タイプ、毛の白いイノシシタイプ、毛の白い熊タイプ。
 どうやら寒い地域では毛が白くなるようだ。

 そして更にその奥には、巨大な虫や巨人系までが確認できる。

「寒い地域の魔物という事は、熱に弱いのかしら」

「その通りだ。しかしあの白い毛には火が付きにくく、燃やす事は困難だ。なので熱で動きを鈍らせ、そこを矢や魔法で攻撃するんだ」

 なるほど、元々の体温が低いので、少し暖かくなるだけで熱中症になってしまうのだろう。

「それでラグズ君、何かいい道具はあるかい?」

「え? ラグは発明品を攻撃には使わないッスよ?」

「……なんだって?」

 ベルゴットが目を細める。
 武器の1つくらいはあると思っていたのだろうが、攻撃に使わないと聞いて戸惑っている。
 
「ラグの道具は人々の生活を豊かにするための物ッス。だから防御の道具なら持ってるッスよ」

 ゴソゴソとポケットから指輪と腕輪を数個取り出す。

「この指輪は魔法を何回か防いでくれて、腕輪は数回物理防御をしてくれるんスよ」

 それをフランチェスカに渡そうと……したのだが、ベルゴットが先に手に取る。

「ほう、良い物を持っているようだね。これは私が使ってあげましょう。他の物はAランク冒険者に渡しておくよ」

 そう言ってどこかへと行ってしまう。

「えっと、なんなんスかね、あれ」

「ハイエルフの考えは分からないわ。それでもハイエルフなのだから、それなりの能力は持っているはずよ」

9人の悪夢の騎士トリプルナインのカーリンさんも強いッスからね~。期待は出来そうッス!」

 そうしているうちに魔物はさらに接近し、その奥には第2波が見えて来る。
 その中には……巨大な翼をもつ爬虫類の生き物、氷結龍フロストウィルムが見えてきた。
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