ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第5章 世界大戦

第178話 士気が低いなら上げればいいのよ

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 氷結龍フロストウィルムが現れた事により、街の防衛は非常に危険な状況に入ったと言える。
 本来ドラゴンという物は人前には姿を出さず、出た時には破壊の限りを尽くす。
 それが魔物の大行進と共に現れるなど、危機的状況が絶望的状況に変わってしまった。

 当然それを確認した防衛隊は浮足立ち、声にこそ出さないがどうやって逃げようか考えている。

「慌てるな! Sランクの私が居るのだ、ドラゴンなど簡単に倒してみせるぞ!」

 ベルゴットが檄を飛ばし、なんとか防衛隊を踏みとどまらせようとする。
 冒険者がSランクに上がる条件にドラゴンと同等の魔物を倒すという物があり、ベルゴットもSランクなのでそれ相応の魔物を倒したはずだ。

 たしかに随分と冷静であり、ドラゴンだからと焦ってはいないように見える。

「フロストって強いのかしら。随分と小さいし、あまり威圧は感じないのだけれど」

「それはあれッスよ。古代エンシェント・ドラゴンのカイザーさんやロードさんをよく見てますし、なれてしまったんスよ」

 ザナドゥ王国にはドラゴンの最上級・古代龍がおり、見慣れている2人には他のドラゴンを見てもなんとも思わなくなっていたのだ。

「そろそろ日が沈むわね。夜になると魔物の方が夜目が効くし、矢を射るにしても明るい方がいいかしら」

 そう言ってライトの魔法で城壁の外を明るく照らす。
 照らすとは言っても、魔物がいる場所全体が昼のように明るくなり、外から街の中が見えない程に明るい。

 本来ならば非常にいい事なのだが、残念ながら悪い方向に働いてしまう。
 照らされた事により、その数の多さが明らかになってしまったのだ。
 その数6万。
 6万の魔物が街に向かってきているのだ。

「ひ! あ、あんなの戦えるかよ!」
「無理だ! 逃げろ、逃げるんだ!」
「ふっざけるな! 戦えるわけねーだろ!」

 冒険者だけでなく、軍の兵士までもが我先にと逃げようとする。
 ベルゴットですら顔を引きつらせ、すでに戦意を喪失しているように見える。
 Sランク冒険者でも、ドラゴンの相手をしながら6万の魔物と戦うなど出来ないのだろう。

「愛国心は……ないんスかねぇ」

「ラグ、冒険者は国に所属していないんだもの、生まれ故郷や住み慣れた街ならいざ知らず、流れの冒険者がこだわる事は無いわよ」

「そうみたいッスね~」

 だが、だからと言って見逃せるフランチェスカでもない。
 何とか戦う手段を考えているが、ここまで防衛隊の士気が低くなってしまっては、取れる手段は数少ない。

 仕方がないので、最も有効と思われる手段の一つを試す事にした。

「そういえばフランチェスカさんの杖、お兄さんのお手製なんスよね?」

「ええ、シュウト君が作ってくれたのよ。私には勿体ない程の杖だわ」

 杖を構えると、フランチェスカの周囲には8つの巨大な同じ魔法陣が展開される。
 
極大火炎弾デアース・ファーバ! 同時発射!」

 8つの極大火炎弾が1カ所に向けて飛んで行く。
 数キロ先で魔物が行進している真ん中の、10メートルほどの高さで火炎弾同士が衝突し爆発、相乗効果で急激に爆発が広がる。

 その破壊力はすさまじく、一瞬で500メートルほどのクレーターが出来上がり、大量の魔物が空を舞っている。
 明るすぎて直視はもちろん、目をつむっていても眩しい程だ。
 衝撃波と地響きで、街の中にも被害が出ないかと心配になる。

 強烈な光が収まり、ようやく周囲が見えるようになった。
 防衛隊が城壁から顔を出し、魔物の集団を確認すると……約1万の魔物が消滅し、それ以外の魔物もけがを負っているようだ。

 それでも魔物の行進は止まらない。

「す、すげぇ……Aランクってこんな魔法を使えるのかよ」
「フランチェスカさんスゲー!」
「おれフランチェスカ姉さんに付いて行くぜ!」

 などと調子づき、すっかり士気が回復してしまった。
 とうのフランチェスカだが『やり過ぎた~』という顔だ。
 
 フランチェスカの杖『スピードマジシャン』は10個の魔法を記憶させ、同時使用できるモノだ。
 なので2スロットには回復魔法を登録し、残りの8つに極大火炎弾デアース・ファーバを登録してあった。
 そう、1つでも凄まじい威力のある魔法を8つも同時に使用し、更に相乗効果で強力になってしまったのだ。

 もちろん他のAランクはもちろん、Sランク冒険者のベルゴットですら呆然としている。
 「「「Aランクとか関係ねーよ!!!」」」と内心思っているが。
 極大火炎弾デアース・ファーバ単体ならばAランクでも使う者はいる。
 しかし8つも同時に使用し、MPが切れないで起きていられるものは他にはいないだろう。

「こ、コホン。さあみんな! フランチェスカ君が道を切り開いてくれたぞ! 諸君等も私達に続いて攻撃をするのだ!」

 何とか気を取り直したベルゴットだが、しれっと手柄に便乗している。
 したたかさはSランクとして相応しい。

 勢いに乗った防衛隊は、遠距離魔法やカタパルトを使って攻撃を開始した。
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