ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第5章 世界大戦

第193話 意外な交渉

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「キリアム法王陛下、ザナドゥ王国よりアイカ殿が面会を求めております。いかがなさいますか?」

 聖キルリアン教会の謁見の間兼本堂で、ゴールドナイト・オードがキリアム法王に伺いをたてている。
 白いカーテンの向こうにいるキリアム法王は、イスに座ったシルエットだけだがアゴに手をかけて考えている。

「お通しして」

「……よろしいのですね?」

「避けては通れないでしょう。先延ばしにしてもいい事はありませんからね」



「はじめまして。私はザナドゥ王国のアイカと申します。面会を許していただいた事、とても嬉しく存じます」

 鎧をまとってこそいないが、厚手の白いコートの前を留めず、白いシャツと白いズボンを着ている。
 明らかに魔物の革を使っており、その防御力は想像に難しくない。

 腰を折り深々と挨拶をすると、カーテンの向こうから声がする。

「遠路はるばるようこそいらっしゃいました。お顔を上げてください、私は聖キルリアン教会のキリアム。出会いは女神さまのおみちびき、有意義な時間となる事を願っています」

 顔が見えないため声でしか判断できないが、その声は少しだけ高揚しているようにも聞こえる。
 アイカが顔を上げると
「ええ、もちろんですとも。私と会えて良かったと、そう思っていただけると確信しております」
 笑顔で返しているが、内心では諦めている。

「ふふふ、それで本日はどういったご用向きでしょうか?」

「はい。我らザナドゥ王国に、教会を作って頂けませんか?」

「教会を、ですか? ザナドゥ王国には宗教的な施設は無いと?」

「いえ、宗教自体はあります。しかし細かな物が多すぎて、あちこちで小競り合いが絶えません。なので聖キルリアン教に来ていただければ、そういった小競り合いが無くなるのではないか、そう考えています」

 カーテンの向こうで少し考えている。
 キリアム法王が思っていた内容とは違ったからだろう。
 今のザナドゥ王国に必要なのは味方だ、だから友好を結ぶ使者だと思っていたのだ。

「教会を作り、司教たちを送る事に問題はありません。しかし小競り合いが無くなるかどうかは、私達ではどうしようもありませんね」

 教会自体は他の国にも沢山あり、教会を置く事で何かを強要したり要求する事は無い。
 聖キルリアン教会としても利点があり、各国に広く布教する事が出来ればそれが1番なのだ。

「それは大丈夫でしょう。国が聖キルリアン教会を招いたとわかれば、他の宗教はなりを潜めます。それ以上何をしても国教には成りえないのですから」

「待ってください、国教に指定するという事ですか? それはシュウト国王の意志なのですか?」

 ここまで話をして、アイカは不思議な感覚を味わっていた。
 いや、久しぶりにまともな話が出来ていると、喜んでいるのだろう。
 しかしこの国にもベフラウィングが来ているはず、この国は敵対しないのかと考えていた。

「はい、シュウト陛下は『女神ルデリット』を祀る聖キルリアン教会に非常に興味をお持ちです」

 キリアム法王にとって寝耳に水な言葉だった。
 宗教という物はよりどころである。不安な気持ちや自信の無さを、神にすがる事で無くそうとする行為だ。
 だがザナドゥ王国の修斗は、その圧倒的なカリスマと手腕によって、街は発展し戦は負けなし、誰もが幸せに暮らせると言われる国だ。

 必要が無いとは思わないが、国教に指定する理由が分からない。

「そう……ですか。それはありがたい事ですが、少々時間を頂けますか? 返事は数日待って欲しいのです」

「それはもちろん構いません。では私は宿を探しますので、場所が決まったらお知らせします」

「いえ、使者殿に不自由をかける訳にはいきません。オード、アイカ殿を客室にご案内して」

「は! ではアイカ殿、こちらへどうぞ」




 アイカが案内されたのは教会(他国で言う所の王城)の客室だが、かなり広く宗教色が全くない。
 そこに手荷物をいくつか入れるのだが、日本刀を持つ手をオードが注視している。

「これが気になりますか?」

「ええ、見た事の無い細い剣なので、それで戦えるのかなと」

 アイカが使っている日本刀は修斗が作った物で、自分の流派である柳生新陰流の有名人・柳生十兵衛が好んで使った刀・三池典太光世みついけてんたみつよの代表作・大典太おおてんたを模して作った物だ。

 当たり前のようにSランク武器の1つである。

「触ってみますか?」

 そう言ってオードに差し出すが、オードは首を横に振る。

「アイカ殿は剣の達人だとか。出来れば手合わせを願いたいのですが」

 そう言って自分の腰に下がっている剣のさやを触る。
 ゴールドナイトであるオードは、神の祝福を受けたら勇者を上回ると噂されており、アイカとしてもその実力には興味があった。

「ええ、構いませんよ」
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