220 / 373
第5章 世界大戦
第219話 不死身の倒し方
しおりを挟む
「胸に大きな風穴があいているのに、それでも立ち上がるんですね。話には聞いていましたが、実際に見ると恐ろしいですね」
キャロラインの正面に居るのは60歳を超えるお年寄りだ。
とはいえ筋肉質とまではいかないが体つきはしっかりしており、短く白いあご髭と長い白髪、つえ代わりの槍は薙刀に近いものだ。
「キャロライン様、あのジジーは死にぞこないに見えますが、簡単には死んでくれないのでございますですよ、ハイ」
ビリー雑用係と共に門から打って出ているが、他の兵士はほぼ無力化させたにもかかわらず、その年寄りだけが立っていた。
ビリーもジジーなのだが、少し向こうの方が上だろうか。
「聞こえますか? 私はキャロライン、あなたのお名前を聞いてもよろしいですか?」
聞こえていないのか、ゆっくりと近づき口を開こうとはしない。
白く長い眉毛のせいで目も見えず、その表情を読み取る事は難しい。
キャロラインとビリーは顔を合わせ“やれやれ″といった顔をするが、2人にしてみれば向こうのペースで動く必要もない。
「チャトゥラさんですね? 心臓を刺されても死なないという」
名前を言われ、流石にピタリと歩みを止めた。
しかし相変わらず表情は見えない。
「ワシの事を知っとるんか。ってことは裏切り者がおるんか?」
「裏切り者というか、すでに12神将の半数は捕らえましたので、聞きだす手段はいくつもある、とだけ言っておきましょう」
「ほうか。んまぁだからといって困る事は無いんやけどな」
「ちなみにどこまでやったら死にますか? あらかじめ聞いておかないと、無駄な殺生をする事になるんです」
「どぼっほっほっほ。ワシを殺せると思っとるんか? 無駄じゃ無駄じゃ、灰からでも生き返るからな」
「いえですから、チリ一つ残さず倒してしまうから聞いているんですが?」
少しだけ眉がピクリと動いて足が止まる。
流石にチリ一つ残らないと聞いて驚いているのだろうか。
そういえば胸に開いた穴は塞がっている。
「そんな事が出来るんか? やめとけやめとけ、嘘を並べても空しいだけやぞ」
「そうですね」
「うむ、若いくせに物分かりが――」
「実際に見せた方が早いですもんね」
「……なんやと?」
短いつえを持つ右手を差し出し、魔法を発動させる。
「天を貫く射光の柱」
チャトゥラの周囲に細い光の柱が数本現れる。
何事かと空を見ると、徐々に光の柱が増えていき隙間なく光りの柱で埋め尽くされた時、眩い光と共にチャトゥラの体が細かく分解され大地と共にまるで空に招かれるように吸い上げられていく。
恐らくは悲鳴を上げているのだろうが、すでに声を伝える器官は無くなっていた。
閃光が収まり、眩しくて顔を背けていたビリーが見たものは……直径10メートルほどの穴だった。
まるでキレイにくり抜かれたように無くなっており、覗き込むと底が見えなかった。
「ほほほ。本当にチリ一つ残さないとは、あの者もおバカさんでございますですな、ハイ」
「出来れば捕らえたかったのですけど、言う事を聞かなさそうでしたしね」
「賢明な判断かと思われますです、ハイ」
開いた穴は大地の魔法で埋め直し、10万人を超える敵兵の屍を振り返る事無く防壁内へと戻っていった。
「おや? あなたは12神将の人でしょうか!?」
「違うわ! あんな雑魚と一緒にすんな」
「間違えられるとは不本意だ」
「そんな事もありますよ」
首都から他の都市への移動中、バーバラの元には3人の男女が現れた。
男1人女2人だが、その出で立ちから間違いなく戦いに従事する者だろう。
「ガッコウ、ここは任せます。私達は首都を攻めますから」
「あいあい、任せとけってんだ」
「そうはいきません! どうやって防衛を抜けたのか知りませんが、この先へ進ませるわけにはいかないのです!」
「いやいや、まさかあんなので防げると思ってるのなら不本意すぎる」
「急いでいますので、では」
男女1組がバーバラの制止を振り切って先へと進んでしまう。
それを止めようとするのだが、残った1人がバーバラの前に立ちはだかる。
「ワタシは3尊の1人ガッコウ。12神将なんかと一緒にすんなよな!」
キャロラインの正面に居るのは60歳を超えるお年寄りだ。
とはいえ筋肉質とまではいかないが体つきはしっかりしており、短く白いあご髭と長い白髪、つえ代わりの槍は薙刀に近いものだ。
「キャロライン様、あのジジーは死にぞこないに見えますが、簡単には死んでくれないのでございますですよ、ハイ」
ビリー雑用係と共に門から打って出ているが、他の兵士はほぼ無力化させたにもかかわらず、その年寄りだけが立っていた。
ビリーもジジーなのだが、少し向こうの方が上だろうか。
「聞こえますか? 私はキャロライン、あなたのお名前を聞いてもよろしいですか?」
聞こえていないのか、ゆっくりと近づき口を開こうとはしない。
白く長い眉毛のせいで目も見えず、その表情を読み取る事は難しい。
キャロラインとビリーは顔を合わせ“やれやれ″といった顔をするが、2人にしてみれば向こうのペースで動く必要もない。
「チャトゥラさんですね? 心臓を刺されても死なないという」
名前を言われ、流石にピタリと歩みを止めた。
しかし相変わらず表情は見えない。
「ワシの事を知っとるんか。ってことは裏切り者がおるんか?」
「裏切り者というか、すでに12神将の半数は捕らえましたので、聞きだす手段はいくつもある、とだけ言っておきましょう」
「ほうか。んまぁだからといって困る事は無いんやけどな」
「ちなみにどこまでやったら死にますか? あらかじめ聞いておかないと、無駄な殺生をする事になるんです」
「どぼっほっほっほ。ワシを殺せると思っとるんか? 無駄じゃ無駄じゃ、灰からでも生き返るからな」
「いえですから、チリ一つ残さず倒してしまうから聞いているんですが?」
少しだけ眉がピクリと動いて足が止まる。
流石にチリ一つ残らないと聞いて驚いているのだろうか。
そういえば胸に開いた穴は塞がっている。
「そんな事が出来るんか? やめとけやめとけ、嘘を並べても空しいだけやぞ」
「そうですね」
「うむ、若いくせに物分かりが――」
「実際に見せた方が早いですもんね」
「……なんやと?」
短いつえを持つ右手を差し出し、魔法を発動させる。
「天を貫く射光の柱」
チャトゥラの周囲に細い光の柱が数本現れる。
何事かと空を見ると、徐々に光の柱が増えていき隙間なく光りの柱で埋め尽くされた時、眩い光と共にチャトゥラの体が細かく分解され大地と共にまるで空に招かれるように吸い上げられていく。
恐らくは悲鳴を上げているのだろうが、すでに声を伝える器官は無くなっていた。
閃光が収まり、眩しくて顔を背けていたビリーが見たものは……直径10メートルほどの穴だった。
まるでキレイにくり抜かれたように無くなっており、覗き込むと底が見えなかった。
「ほほほ。本当にチリ一つ残さないとは、あの者もおバカさんでございますですな、ハイ」
「出来れば捕らえたかったのですけど、言う事を聞かなさそうでしたしね」
「賢明な判断かと思われますです、ハイ」
開いた穴は大地の魔法で埋め直し、10万人を超える敵兵の屍を振り返る事無く防壁内へと戻っていった。
「おや? あなたは12神将の人でしょうか!?」
「違うわ! あんな雑魚と一緒にすんな」
「間違えられるとは不本意だ」
「そんな事もありますよ」
首都から他の都市への移動中、バーバラの元には3人の男女が現れた。
男1人女2人だが、その出で立ちから間違いなく戦いに従事する者だろう。
「ガッコウ、ここは任せます。私達は首都を攻めますから」
「あいあい、任せとけってんだ」
「そうはいきません! どうやって防衛を抜けたのか知りませんが、この先へ進ませるわけにはいかないのです!」
「いやいや、まさかあんなので防げると思ってるのなら不本意すぎる」
「急いでいますので、では」
男女1組がバーバラの制止を振り切って先へと進んでしまう。
それを止めようとするのだが、残った1人がバーバラの前に立ちはだかる。
「ワタシは3尊の1人ガッコウ。12神将なんかと一緒にすんなよな!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる