ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第6章 ダンジョンから始まる世界交流

第239話 強いのは誰?

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 塔の11階に到着し、早速気になる場所を見て回る。
 ガッコウとシャンディラは石の壁や床をゆっくりと見ているのだが、ヤクシは違った。
 スタスタとある場所に立ち止まり、石壁をコンコンと叩いているのだ。

「この奥に空間がありますね。通路……いえ部屋でしょうか」

「ここかよ~、くっそ、またヤクシに負けちまったな!」

 負けた割には嬉しそうなガッコウ。
 しかし理解できていない者が約1名。

「あ、あの、どうしてそんな事が、わ、分かるんですか?」

 なぜ、といわれても、ヤクシにとっては説明がしにくいだろう。
 代わりにガッコウが答える。

「ヤクシは目が見えねー代わりに色んなもんが見えてんだ。だから隠し扉とかすぐに見つけちまうんだぜ! すげーだろ!」

 我が事のように喜ぶガッコウに、シャンディラはそういう物かと理解するしかなかった。
 そして実際に壁だと思っていた場所は、石の目に沿って扉のように押し開けられる。
 そこには幅2メートル、奥行き5メートルほどの通路があり、その奥には木製の扉が見える。
 通路を迷う事なく歩き、木製の扉を開けるのだが……罠などの心配はしないのだろうか。

「あ、あの、まだ低層階とはいえ、わ、罠とか……」

「罠は見当たりませんでしたので心配はありませんよ」

 どうやらヤクシには何かが見えているようだ。
 目が見えない事による弊害どころか、その方が優れているのではないかと思ってしまう。
 3人が木製の扉の中に入ると、5メートル四方の石の部屋だった。
 そして奥の壁際にはあからさまに木製の宝箱が置かれている。

「よっしゃ~! まだ手付かずの宝箱だぜ! ささ、中身は何だろな~♪」

 鼻歌まじりで無造作に箱を開けるガッコウ。
 思わず悲鳴を上げそうになるシャンディラだが、その心配通り箱からはガッコウの顔を目がけて毒矢が飛んでくるではないか!
 ガッコウの顔に毒矢が命中パシッ! ポイ……手で掴んで捨てた。

「おおっこれは! エクストラポーションじゃね?」

「おや本当ですね。こんな低層階で出るとは思いませんでした」

 何事もなかったように会話をするヤクシとガッコウ。
 シャンディラは1人でバクバク暴れる胸に手を当てて深呼吸をしていた。

 こんな調子で11階の隠し扉を調べて行き、全ての場所で珍しいアイテムが手に入った。
 50階まですべてのマップを埋め、次は51階に登ろうとしている。
 ちなみにここまで駆け足で来たため、体力のないシャンディラは息が上がっていた。

「はひ~ ふひ~ はぁ~はぁ~」

「流石に休憩しましょう。地図を埋めるために走ってここまで来ましたので、まだ昼には早いですが休憩をとりましょう」

 塔に入って約2時間ほどで50階まで来ていた。
 その間に地図を埋め、罠・宝箱・魔物情報がすべて書かれている。
 ガッコウが携帯コンロを取り出して湯を沸かし始めるのだが、コンロの形が随分と細い。
 どうやらラグズの新作で、冒険者の荷物を減らせるようにと、コンパクトに折りたためるようになっているようだ。

 さて、ここに来るまでに沢山の戦闘を繰り広げてきたのだが、それはヤクシとガッコウが活躍したのではなく、シャンディラ1人で倒していたのだ。

「キャー来ないでください!」
 と言って大型の獣が息をしなくなり
「怖いーー!!」
 と伏せたら人型の魔物の古傷から血が吹き出し
「やめて―!」
 と叫べば壁を歩いていた昆虫系の魔物がボトボトと落ちて来た。

 なのでほぼノンストップで、ここまで駆け上がってこれたのだ。
 そんな感じで魔物が倒されるものだから、ヤクシもガッコウもシャンディラに対する考えがすっかり変わってしまった。

『怒らせないようにしよう』

 知識としてはシャンディラの『視線をたどって相手を殺す』スキルを知っていたが、目の当たりにしてその恐ろしさを知ってしまったのだ。

「そういやーよ、シャンディラはザナドゥ王国を攻めた時は誰と戦ったんだ?」

 ガッコウは出来立てのスープを飲みながら、どこまでの能力があるかの探りを入れ始めた。
 並の魔物では相手にならない、では魔物どころではないザナドゥ王国の人間はどうなのか。

「わ、私はレベッカ魔法兵長でした」

「それはそれは。流石のアナタでも勝てなかったのではありませんか?」

「い、いえ、胸を押さえて崩れたので、き、効いたんだと思います」

 ヤクシとガッコウの手が止まる。
 レベッカ魔法兵長の能力はザナドゥ王国でも上位であり、能力的にはヤクシ・ガッコウの上をいっている。
 そのレベッカ魔法兵長に効いたという事は、自分達にも間違いなく効果がある、という事だ。

「あれ? でもレベッカさんは生きてっぞ?」

「は、はい、突然姿が消えて、お、王子様が治療をしたって言っていました」

「ああなるほど、シュウト陛下が治療されたのですね。シャンディラの能力を看破されていたのでしょうか」

「し、知らなかったみたいです。その、後で説明をしましたから」

 体を重ねた時に説明をしたのだが、思い出したのか顔を赤らめる。
 そしてそれを見て理解した2人。

「じゃあシュウト陛下にも効いちまうって事か?」

 シャンディラは首を横に振る。

「全く効果がありませんでした。凄いですよね王子様! 私はスキルには自信があったんですが、それを全く寄せ付けないんです! はぁ~王子様王子様! やっぱりシュウト様は白馬の王子様だわ!」

 ヤバイ所に入ってしまったな。
 シャンディラのこの癖が無ければ大人しい少女なのだが、修斗の話を始めたら止まらなくなってしまう。
 妄想全開のお花畑な物語が語られていき、2人は黙って食事をするのだった。
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