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第6章 ダンジョンから始まる世界交流
第240話 マイナスから始まるファーストコンタクト
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51階に入り、今まで通りの探索が開始される。
ここからは地図情報が極端に少なくなるため、探索にはかなりの時間を要するだろう。
途中の魔物はシャンディラが悲鳴と共に倒し、足が止まる事なく地図が埋まっていく。
天井からはヤモリの魔物・テラスティモリがボトボトと落ち、遠くでは巨人・フィルヴォルグが床に倒れている。
「ん? なんだこいつら。今までの冒険者の中でも、随分とボロッボロにやられてんな」
「随分と小さい……ああ、上下に分かれていたり首が無いのですね」
目の見えないヤクシだが、物体としての大きさは感じているらしく、その状況は理解していた。
そして酷い状況を目の当たりにしたシャンディラは意識を失ってしまう。
「おおっと、ああそっか、ここまで血まみれな死体は初めてだっけ?」
「そういえばそうですね。五体満足の物や、すでに原型を留めていない物ばかりでした」
自らは沢山人間を殺しているが、血まみれの状況にはあまり遭遇してこなかったシャンディラ。
心臓麻痺が基本なため、耐性が無いのだろう。
「ってーことは、やっとアタシの出番だな!」
「仕方がありませんね。私がシャンディラを背負いましょう」
ガッコウとシャンディラでは背があまり変わらない為、移動速度に制限がかかってしまうのだ。
その点ヤクシは背も大きい為、速度低下は最小限で押さえられる。
「それでは戦闘はお願いしますね」
「おうよ! 任せときなって!」
シャンディラを背負ったヤクシとガッコウだが、51階の地図をを10分ほどで完成させ、52階へと登っていくのだが、そこで思わぬ人物に会う事になる。
「おおっと! 残念だったね、そんな攻撃には当たらないよ! へっへーんだ」
「おのれ化け物が! ヨーゼフ様に何をするか!」
大型の狼の魔物に噛みつかれそうになりヒラリとかわす少年だが、それに怒りをあらわにしたのは騎士風の男だった。
騎士風の男は狼の首を一刀両断し、更には胴体まで真っ二つにしてしまった。
「ヨーゼフ様に群がる魔物め!守護騎士たる私が切り伏せてやるぞ!」
残りの狼は他の4名が倒したのだが、ヨーゼフ様と呼ばれた少年は随分と軽装で部分的な革鎧とナイフ1本、黒い髪はくせ毛だらけだ。
騎士風の男は金髪をオールバックにし、籠手と具足のみの金属鎧だ。
他の4名は女魔法使い2人、剣士1人、女回復師1人だろうか。
「ルノーやり過ぎだよ、死んでるんだから胴体を切る意味あった?」
「ヨーゼフ様に仇成す奴は俺が許さん」
「いやだから魔物にそんな事いってどうすんのさ」
「魔物だから何だというんだ!」
様を付けている割には随分とフランクに話ている。
しかし忠義は厚いようで、ヨーゼフに何かあれば身を挺して守るだろう。
「坊っちゃん、後ろから何かが近づいてきます」
魔法使いの1人が後ろに向き直り、大きな帽子を少し持ち上げる。
何かが来るようだが正体は分からない、しかし殺気が無いため警戒は薄いようだ。
そこに現れたのは……シャンディラを背負ったヤクシとガッコウだった。
2人は6人をスルーして走り去るつもりだったが、どうやら6人はお人好しと言う名のお節介だったようだ。
「お嬢さんがた! 魔物に襲われているのなら僕がお助けしますよ!」
突然少年に声をかけられて、思わず立ち止まってしまった2人。
確かにはた目から見れば、魔物に襲われ怪我をした1人を背負い、必死に逃げているようにも見える。
ただ冷静に見ていれば、息切れ一つする事なく走っているのだから、違う事が分かるはず。
しかしどうやらこの少年、それを理解したうえで声をかけたようにも見える。
思わず立ちどまってしまった2人だが、少年以外の5人は本当に逃げ回っていると思っているようだ。
急いで治療をしようとシーツを床に敷き、背負っているシャンディラを寝かせるように言う。
言うのだが、シャンディラよりもヤクシの目が気になる様だ。
「おや? 怪我はされていないようですね。疲れて眠ってしまったのでしょうか」
回復役の女がシャンディラを見るも、怪我どころか服も破れていないため、自分の出番はないと判断したようだ。
なので話題は自然とヤクシの目へと移る。
「失礼ながらお嬢さん、目が見えないようですが大丈夫なのかい?」
ヨーゼフ少年がヤクシの目を見て戸惑っていた。
なにせヤクシは目がないにもかかわらず、シャンディラを背負って走っていたのだから。
ヤクシもそんな質問には慣れっこなのだろう、実践して証明する事にした。
「ご心配には及びません。目が見えずとも……フッ! このように対処できます」
床に転がっていた石を手に取り、天井に向けて投げたかと思うとヤモリの魔物が落ちて来た。
どうやらこのヤモリ・テラスティモリは、ターゲットが完全に背を向けない限り襲わない様だ。
なので今は様子をうかがっていたのだが、バレていた。
「なに!? 一体どこから落ちて来た!」
騎士風の男が天井を見るが、カメレオンの様に体の色を変えるため全く見えない。
「あそことあそこ、あそこにも居ます」
ヤクシが指差すと天井の石の模様がモゾモゾと動き出す。
バレた事でテラスティモリが逃げ出したようだ。
「おのれ! ……クッ」
攻撃しようとするが間に合わず、全て逃げて行ってしまった。
だが自分達には気づかなかった魔物に対しいち早く対応したヤクシに対して、次のような提案が出されたのも当たり前と言える。
「お嬢さんはお強いですね、そうだ! 僕たちと共に探索をしませんか?」
「いえ、先を急ぎますのでお断りします」
満面の笑みで誘ったのに、あっさり断られる少年。
あれー? といった顔で驚いている。
ここからは地図情報が極端に少なくなるため、探索にはかなりの時間を要するだろう。
途中の魔物はシャンディラが悲鳴と共に倒し、足が止まる事なく地図が埋まっていく。
天井からはヤモリの魔物・テラスティモリがボトボトと落ち、遠くでは巨人・フィルヴォルグが床に倒れている。
「ん? なんだこいつら。今までの冒険者の中でも、随分とボロッボロにやられてんな」
「随分と小さい……ああ、上下に分かれていたり首が無いのですね」
目の見えないヤクシだが、物体としての大きさは感じているらしく、その状況は理解していた。
そして酷い状況を目の当たりにしたシャンディラは意識を失ってしまう。
「おおっと、ああそっか、ここまで血まみれな死体は初めてだっけ?」
「そういえばそうですね。五体満足の物や、すでに原型を留めていない物ばかりでした」
自らは沢山人間を殺しているが、血まみれの状況にはあまり遭遇してこなかったシャンディラ。
心臓麻痺が基本なため、耐性が無いのだろう。
「ってーことは、やっとアタシの出番だな!」
「仕方がありませんね。私がシャンディラを背負いましょう」
ガッコウとシャンディラでは背があまり変わらない為、移動速度に制限がかかってしまうのだ。
その点ヤクシは背も大きい為、速度低下は最小限で押さえられる。
「それでは戦闘はお願いしますね」
「おうよ! 任せときなって!」
シャンディラを背負ったヤクシとガッコウだが、51階の地図をを10分ほどで完成させ、52階へと登っていくのだが、そこで思わぬ人物に会う事になる。
「おおっと! 残念だったね、そんな攻撃には当たらないよ! へっへーんだ」
「おのれ化け物が! ヨーゼフ様に何をするか!」
大型の狼の魔物に噛みつかれそうになりヒラリとかわす少年だが、それに怒りをあらわにしたのは騎士風の男だった。
騎士風の男は狼の首を一刀両断し、更には胴体まで真っ二つにしてしまった。
「ヨーゼフ様に群がる魔物め!守護騎士たる私が切り伏せてやるぞ!」
残りの狼は他の4名が倒したのだが、ヨーゼフ様と呼ばれた少年は随分と軽装で部分的な革鎧とナイフ1本、黒い髪はくせ毛だらけだ。
騎士風の男は金髪をオールバックにし、籠手と具足のみの金属鎧だ。
他の4名は女魔法使い2人、剣士1人、女回復師1人だろうか。
「ルノーやり過ぎだよ、死んでるんだから胴体を切る意味あった?」
「ヨーゼフ様に仇成す奴は俺が許さん」
「いやだから魔物にそんな事いってどうすんのさ」
「魔物だから何だというんだ!」
様を付けている割には随分とフランクに話ている。
しかし忠義は厚いようで、ヨーゼフに何かあれば身を挺して守るだろう。
「坊っちゃん、後ろから何かが近づいてきます」
魔法使いの1人が後ろに向き直り、大きな帽子を少し持ち上げる。
何かが来るようだが正体は分からない、しかし殺気が無いため警戒は薄いようだ。
そこに現れたのは……シャンディラを背負ったヤクシとガッコウだった。
2人は6人をスルーして走り去るつもりだったが、どうやら6人はお人好しと言う名のお節介だったようだ。
「お嬢さんがた! 魔物に襲われているのなら僕がお助けしますよ!」
突然少年に声をかけられて、思わず立ち止まってしまった2人。
確かにはた目から見れば、魔物に襲われ怪我をした1人を背負い、必死に逃げているようにも見える。
ただ冷静に見ていれば、息切れ一つする事なく走っているのだから、違う事が分かるはず。
しかしどうやらこの少年、それを理解したうえで声をかけたようにも見える。
思わず立ちどまってしまった2人だが、少年以外の5人は本当に逃げ回っていると思っているようだ。
急いで治療をしようとシーツを床に敷き、背負っているシャンディラを寝かせるように言う。
言うのだが、シャンディラよりもヤクシの目が気になる様だ。
「おや? 怪我はされていないようですね。疲れて眠ってしまったのでしょうか」
回復役の女がシャンディラを見るも、怪我どころか服も破れていないため、自分の出番はないと判断したようだ。
なので話題は自然とヤクシの目へと移る。
「失礼ながらお嬢さん、目が見えないようですが大丈夫なのかい?」
ヨーゼフ少年がヤクシの目を見て戸惑っていた。
なにせヤクシは目がないにもかかわらず、シャンディラを背負って走っていたのだから。
ヤクシもそんな質問には慣れっこなのだろう、実践して証明する事にした。
「ご心配には及びません。目が見えずとも……フッ! このように対処できます」
床に転がっていた石を手に取り、天井に向けて投げたかと思うとヤモリの魔物が落ちて来た。
どうやらこのヤモリ・テラスティモリは、ターゲットが完全に背を向けない限り襲わない様だ。
なので今は様子をうかがっていたのだが、バレていた。
「なに!? 一体どこから落ちて来た!」
騎士風の男が天井を見るが、カメレオンの様に体の色を変えるため全く見えない。
「あそことあそこ、あそこにも居ます」
ヤクシが指差すと天井の石の模様がモゾモゾと動き出す。
バレた事でテラスティモリが逃げ出したようだ。
「おのれ! ……クッ」
攻撃しようとするが間に合わず、全て逃げて行ってしまった。
だが自分達には気づかなかった魔物に対しいち早く対応したヤクシに対して、次のような提案が出されたのも当たり前と言える。
「お嬢さんはお強いですね、そうだ! 僕たちと共に探索をしませんか?」
「いえ、先を急ぎますのでお断りします」
満面の笑みで誘ったのに、あっさり断られる少年。
あれー? といった顔で驚いている。
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