274 / 373
第6章 ダンジョンから始まる世界交流
第273話 久しぶりの感覚。痛覚
しおりを挟む
ターニャの足元が崩れ、粘り気のある液体に足をからまれてしまった。
真下などは最も集中していた場所であり、こんな状態になる事は絶対に避けたかったのだ。
ドレスのスカートのすそが焦げて行く。
「ただの粘液じゃない!? このっ! 折角の一張羅が!」
ズブズブと沈んでいく体よりも、ドレスのすそを持ち上げて焦げないようにする。
何とか沈んだ場所から抜け出そうとするが足が動かず、穴の淵に手をかけるも体が持ち上がらない。
天井に穴が開いてアイツが襲い掛かる。
子供の姿をした顔が大きく開き、ターニャを頭から丸のみにする気だろう。
「あ、ここは素直に頭から飲み込むのか? 足元から来られたら手を出せなかったが、上なら問題はないな」
天井に向けて拳を構え、大きく開かれたアゴをめがけて拳を振り切ると牙ごとアゴを粉砕し、ソイツは地面に落ちて暴れ回る。
何とかターニャから離れようとしたようだが、ターニャの手はしっかりとシッポを掴み、粘液の穴から上手く逃げだす事に成功した。
「良かった、ドレスの焦げ目は最小限だ」
自分の体よりもドレスが心配らしい。
しかしそれもそのはずで、足には全く焦げ目どころか傷一つ付いていないのだ。
ああ、ドレスシューズが少し焦げているか。
また地面に潜ろうとするのだが、尻尾を掴む手を離す事は無く、綱引きの様にズルズルと引きずり出されていく。
「逃がすと思うか? ここで勝負を付けてやる!」
最後に一気に引き抜くと、勢いを殺さずに後ろの地面に叩きつけ、ジャイアントスイングの様に尻尾を掴んだまま振り回す。
その回転速度が速すぎたのか、ヘビの様に長い体の内臓が口から出てきて周囲にまき散らす。
そして勢いが収まるどころかさらに回転速度が上がり、掴んでいたシッポがちぎれて飛んでいってしまう。
「いかん! また逃げられてしま……大丈夫か」
ソレはもう動く事は無かった。
内臓を全て口から吐き出され、顔に当たる部分が吹き飛ばされたのだから当然だろう。
ターニャは周囲を警戒するが他に動くものは無く、気配も感じない。
ダンジョンの攻略、完了だ。
「お帰りなさいターニャさん! わ! 凄い量ですね、全て買取でいいですか?」
「ああ、頼む」
ギルドの受付嬢に報告と買取を頼み、ターニャはギルド内の待合所で休んでいた。
誰もがターニャを見ているが、真っ赤に染まった姿と他を寄せ付けない厳しい表情のため、誰も声をかけないでいる。
だがそれを破る者が居た。
「お前が『鮮血の鋼鉄姫』か?」
その男は身長180センチメートルほどで、少し細身の体をしているが、しっかりと筋肉がついていた。
だが何よりもターニャが気にくわなかったのは、その自信に満ち溢れ、この世の全ては自分の思うがままと言わんばかりの顔だった。
「そんな名前は知らないな。誰だ、お前は」
「俺は修斗。面白い女がいると聞いて見に来た。お前が鮮血の鋼鉄姫だな?」
「俺はターニャだ。そんな名前ではない!」
「ではターニャ、お前は気に入った、俺の女にな――」
ギルド内に大きな音が鳴り響く。
ターニャの右ハイキックが修斗の顔を捕らえたのだ。
「ふん、手加減をしてやったが、次に失礼な事を言ったら……なに!?」
修斗は微動だにせず、蹴りを顔の横で受けていた。
ターニャは殺しはしないものの、意識を奪うつもりで蹴ったのだが、それが無傷で立っている修斗を見て驚いている。
「いい蹴りだ。1人でダンジョンを攻略したのもうなづける。付いてこい、戦いたいのなら外でやるぞ」
バカにされていると感じたのだろう、ターニャはギルドの外に出て修斗と向き合っていた。
そして面白そうだと野次馬たちが集まってきた。
「ギャラリーが居るが、まあ問題はないだろう。よし、全力でかかってこい」
言われるまでも無くターニャはダッシュして前蹴りを放つ。
体重を乗せて相手を吹き飛ばす攻撃だが、ターニャが使えばそれだけで体に穴が開く代物だ。
それを修斗は腹で受け、その足を掴むのだがターニャは掴まれた足を軸にしてもう片方の足で顔面にかかとをぶち込む。
それを修斗は手で受けるのだが、修斗の顔が厳しい表情になる。
「お、お前は一体何者だ!? 私の攻撃を受けてどうして平気でいられる!」
ターニャが大声を上げるが、修斗はそれどころではなかった。
痛かったのだ。
最後に痛いと感じたのはいつだっただろうか、大魔法エルノヴァに消された時か、古代龍に撃ち抜かれた時か、その位しか記憶にない。
蹴られた腹も、受け止めた腕も、微かにではあるが痛みを感じたのだ。
「増々面白い……!! お前、お前は必ず連れて帰る。お前は俺のものだ」
人によっては邪悪な顔に見えるだろう、しかし人によっては無邪気に楽しむ顔にも見える。
修斗はそれほど興奮していたのだ。
真下などは最も集中していた場所であり、こんな状態になる事は絶対に避けたかったのだ。
ドレスのスカートのすそが焦げて行く。
「ただの粘液じゃない!? このっ! 折角の一張羅が!」
ズブズブと沈んでいく体よりも、ドレスのすそを持ち上げて焦げないようにする。
何とか沈んだ場所から抜け出そうとするが足が動かず、穴の淵に手をかけるも体が持ち上がらない。
天井に穴が開いてアイツが襲い掛かる。
子供の姿をした顔が大きく開き、ターニャを頭から丸のみにする気だろう。
「あ、ここは素直に頭から飲み込むのか? 足元から来られたら手を出せなかったが、上なら問題はないな」
天井に向けて拳を構え、大きく開かれたアゴをめがけて拳を振り切ると牙ごとアゴを粉砕し、ソイツは地面に落ちて暴れ回る。
何とかターニャから離れようとしたようだが、ターニャの手はしっかりとシッポを掴み、粘液の穴から上手く逃げだす事に成功した。
「良かった、ドレスの焦げ目は最小限だ」
自分の体よりもドレスが心配らしい。
しかしそれもそのはずで、足には全く焦げ目どころか傷一つ付いていないのだ。
ああ、ドレスシューズが少し焦げているか。
また地面に潜ろうとするのだが、尻尾を掴む手を離す事は無く、綱引きの様にズルズルと引きずり出されていく。
「逃がすと思うか? ここで勝負を付けてやる!」
最後に一気に引き抜くと、勢いを殺さずに後ろの地面に叩きつけ、ジャイアントスイングの様に尻尾を掴んだまま振り回す。
その回転速度が速すぎたのか、ヘビの様に長い体の内臓が口から出てきて周囲にまき散らす。
そして勢いが収まるどころかさらに回転速度が上がり、掴んでいたシッポがちぎれて飛んでいってしまう。
「いかん! また逃げられてしま……大丈夫か」
ソレはもう動く事は無かった。
内臓を全て口から吐き出され、顔に当たる部分が吹き飛ばされたのだから当然だろう。
ターニャは周囲を警戒するが他に動くものは無く、気配も感じない。
ダンジョンの攻略、完了だ。
「お帰りなさいターニャさん! わ! 凄い量ですね、全て買取でいいですか?」
「ああ、頼む」
ギルドの受付嬢に報告と買取を頼み、ターニャはギルド内の待合所で休んでいた。
誰もがターニャを見ているが、真っ赤に染まった姿と他を寄せ付けない厳しい表情のため、誰も声をかけないでいる。
だがそれを破る者が居た。
「お前が『鮮血の鋼鉄姫』か?」
その男は身長180センチメートルほどで、少し細身の体をしているが、しっかりと筋肉がついていた。
だが何よりもターニャが気にくわなかったのは、その自信に満ち溢れ、この世の全ては自分の思うがままと言わんばかりの顔だった。
「そんな名前は知らないな。誰だ、お前は」
「俺は修斗。面白い女がいると聞いて見に来た。お前が鮮血の鋼鉄姫だな?」
「俺はターニャだ。そんな名前ではない!」
「ではターニャ、お前は気に入った、俺の女にな――」
ギルド内に大きな音が鳴り響く。
ターニャの右ハイキックが修斗の顔を捕らえたのだ。
「ふん、手加減をしてやったが、次に失礼な事を言ったら……なに!?」
修斗は微動だにせず、蹴りを顔の横で受けていた。
ターニャは殺しはしないものの、意識を奪うつもりで蹴ったのだが、それが無傷で立っている修斗を見て驚いている。
「いい蹴りだ。1人でダンジョンを攻略したのもうなづける。付いてこい、戦いたいのなら外でやるぞ」
バカにされていると感じたのだろう、ターニャはギルドの外に出て修斗と向き合っていた。
そして面白そうだと野次馬たちが集まってきた。
「ギャラリーが居るが、まあ問題はないだろう。よし、全力でかかってこい」
言われるまでも無くターニャはダッシュして前蹴りを放つ。
体重を乗せて相手を吹き飛ばす攻撃だが、ターニャが使えばそれだけで体に穴が開く代物だ。
それを修斗は腹で受け、その足を掴むのだがターニャは掴まれた足を軸にしてもう片方の足で顔面にかかとをぶち込む。
それを修斗は手で受けるのだが、修斗の顔が厳しい表情になる。
「お、お前は一体何者だ!? 私の攻撃を受けてどうして平気でいられる!」
ターニャが大声を上げるが、修斗はそれどころではなかった。
痛かったのだ。
最後に痛いと感じたのはいつだっただろうか、大魔法エルノヴァに消された時か、古代龍に撃ち抜かれた時か、その位しか記憶にない。
蹴られた腹も、受け止めた腕も、微かにではあるが痛みを感じたのだ。
「増々面白い……!! お前、お前は必ず連れて帰る。お前は俺のものだ」
人によっては邪悪な顔に見えるだろう、しかし人によっては無邪気に楽しむ顔にも見える。
修斗はそれほど興奮していたのだ。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる