ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第6章 ダンジョンから始まる世界交流

第273話 久しぶりの感覚。痛覚

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 ターニャの足元が崩れ、粘り気のある液体に足をからまれてしまった。
 真下などは最も集中していた場所であり、こんな状態になる事は絶対に避けたかったのだ。
 ドレスのスカートのすそが焦げて行く。

「ただの粘液ねんえきじゃない!? このっ! 折角の一張羅が!」

 ズブズブと沈んでいく体よりも、ドレスのすそを持ち上げて焦げないようにする。
 何とか沈んだ場所から抜け出そうとするが足が動かず、穴の淵に手をかけるも体が持ち上がらない。
 天井に穴が開いてアイツが襲い掛かる。
 子供の姿をした顔が大きく開き、ターニャを頭から丸のみにする気だろう。

「あ、ここは素直に頭から飲み込むのか? 足元から来られたら手を出せなかったが、上なら問題はないな」

 天井に向けて拳を構え、大きく開かれたアゴをめがけて拳を振り切ると牙ごとアゴを粉砕し、ソイツは地面に落ちて暴れ回る。
 何とかターニャから離れようとしたようだが、ターニャの手はしっかりとシッポを掴み、粘液の穴から上手く逃げだす事に成功した。
 
「良かった、ドレスの焦げ目は最小限だ」

 自分の体よりもドレスが心配らしい。
 しかしそれもそのはずで、足には全く焦げ目どころか傷一つ付いていないのだ。
 ああ、ドレスシューズが少し焦げているか。
 また地面に潜ろうとするのだが、尻尾を掴む手を離す事は無く、綱引きの様にズルズルと引きずり出されていく。

「逃がすと思うか? ここで勝負を付けてやる!」

 最後に一気に引き抜くと、勢いを殺さずに後ろの地面に叩きつけ、ジャイアントスイングの様に尻尾を掴んだまま振り回す。
 その回転速度が速すぎたのか、ヘビの様に長い体の内臓が口から出てきて周囲にまき散らす。
 そして勢いが収まるどころかさらに回転速度が上がり、掴んでいたシッポがちぎれて飛んでいってしまう。

「いかん! また逃げられてしま……大丈夫か」

 ソレはもう動く事は無かった。
 内臓を全て口から吐き出され、顔に当たる部分が吹き飛ばされたのだから当然だろう。
 ターニャは周囲を警戒するが他に動くものは無く、気配も感じない。
 ダンジョンの攻略、完了だ。



「お帰りなさいターニャさん! わ! 凄い量ですね、全て買取でいいですか?」

「ああ、頼む」

 ギルドの受付嬢に報告と買取を頼み、ターニャはギルド内の待合所で休んでいた。
 誰もがターニャを見ているが、真っ赤に染まった姿と他を寄せ付けない厳しい表情のため、誰も声をかけないでいる。
 だがそれを破る者が居た。

「お前が『鮮血せんけつ鋼鉄姫こうてつひめ』か?」

 その男は身長180センチメートルほどで、少し細身の体をしているが、しっかりと筋肉がついていた。
 だが何よりもターニャが気にくわなかったのは、その自信に満ち溢れ、この世の全ては自分の思うがままと言わんばかりの顔だった。

「そんな名前は知らないな。誰だ、お前は」

「俺は修斗。面白い女がいると聞いて見に来た。お前が鮮血の鋼鉄姫だな?」

「俺はターニャだ。そんな名前ではない!」

「ではターニャ、お前は気に入った、俺の女にな――」

 ギルド内に大きな音が鳴り響く。
 ターニャの右ハイキックが修斗の顔を捕らえたのだ。

「ふん、手加減をしてやったが、次に失礼な事を言ったら……なに!?」

 修斗は微動だにせず、蹴りを顔の横で受けていた。
 ターニャは殺しはしないものの、意識を奪うつもりで蹴ったのだが、それが無傷で立っている修斗を見て驚いている。

「いい蹴りだ。1人でダンジョンを攻略したのもうなづける。付いてこい、戦いたいのなら外でやるぞ」

 バカにされていると感じたのだろう、ターニャはギルドの外に出て修斗と向き合っていた。
 そして面白そうだと野次馬たちが集まってきた。

「ギャラリーが居るが、まあ問題はないだろう。よし、全力でかかってこい」

 言われるまでも無くターニャはダッシュして前蹴りを放つ。
 体重を乗せて相手を吹き飛ばす攻撃だが、ターニャが使えばそれだけで体に穴が開く代物だ。
 それを修斗は腹で受け、その足を掴むのだがターニャは掴まれた足を軸にしてもう片方の足で顔面にかかとをぶち込む。
 それを修斗は手で受けるのだが、修斗の顔が厳しい表情になる。

「お、お前は一体何者だ!? 私の攻撃を受けてどうして平気でいられる!」

 ターニャが大声を上げるが、修斗はそれどころではなかった。
 痛かったのだ。
 最後に痛いと感じたのはいつだっただろうか、大魔法エルノヴァに消された時か、古代龍に撃ち抜かれた時か、その位しか記憶にない。
 蹴られた腹も、受け止めた腕も、微かにではあるが痛みを感じたのだ。

「増々面白い……!! お前、お前は必ず連れて帰る。お前は俺のものだ」

 人によっては邪悪な顔に見えるだろう、しかし人によっては無邪気に楽しむ顔にも見える。
 修斗はそれほど興奮していたのだ。
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