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第7章 改変された世界
第331話 黒太子
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キリアム法王は流石に連れて行けないため、そのまま聖キルリアン教会に残る事になった。
ヤクシ、ガッコウ、シャンディラは魔道車の定員に余裕があるため、一緒に着いて行く様だ。
「次はダルアートン国とメナストーン国ね」
ダルアートン国はフランチェスカが、メナストーン国にはミュゼウスがいるため、そちらの回収に向かうようだ。
ダルアートン国へは魔道車で約3日、道さえ整備されていれば2日で行けるのだが、道など土を踏み固められただけの物だ。
とはいえ予定通りに到着し、その足でフランチェスカが居るはずのホフマン大公の屋敷へと向かう。
4女傑の1人が訪ねて来た! と屋敷はてんやわんやだが、大公邸だけあって対応は早かった。
「お待たせいたしました、将軍が応接室においでです。ご案内いたしますので、こちらへどうぞ」
白髪の執事の後をついて行くのだが、身分・服装がバラバラだ。
キャロラインがいなければ間違いなく門前払いされただろう。
「こちらへどうぞ」
両開きの扉を執事と、控えていた従者によって開かれると、応接室には2人の人物が待っていた。
1人はホフマン大公、もう1人はその夫人だろう。
肝心のフランチェスカの姿が無い。
「ようこそいらしたキャロライン姫。お会いするのは初めてだったかな?」
「お目にかかれて光栄です閣下。お会いするのは初めてでございますわ」
他のメンバーも挨拶をするのだが、ラグナ以外は慣れているのか堂々としていた。
ホフマン大公の勧めでフカフカなソファーに座ると、最初は当たり障りのない会話から始まったのだが、ホフマン大公が探りを入れて来た。
「4女傑がお1人で旅をするとなると、国内は随分と安定しているのでしょうな」
「ええお陰様で。4女傑が居なくとも、部下がしっかりしておりますので安心して旅行を楽しめます」
だがキャロラインは腹の探り合いをしに来たわけではないので、切りのいい所で本題に入る。
「こちらにフランチェスカ嬢がいらっしゃいますわよね? 魔法の腕がかなりの物と伺っております。ぜひとも魔法のお話をしたいと思っておりますの」
「ほぅ、4女傑の中でも魔法に長けたキャロライン姫の目に留まるとは、アイツもなかなかやるものだ」
そう言ってホフマン大公は紅茶を1口すすり、一息ついて言葉を続ける。
「だがアレはここには居ないのだ」
「どちらかにお出かけ中ですか?」
「いや、アレはエリクセン黒太子のお気に入りでな、今は王宮に住んでおるのだ」
「え? それではエリクセン王子と婚姻を?」
「黒太子はそのつもりなのだが……アレは何が気に入らないのか、首を縦に振らんのだ」
何やらひと騒動ありそうだが、これはフランチェスカに会うのは簡単ではないかもしれない。
仕方がないので、ここは王族としての力を行使するようだ。
「それでは陛下へご挨拶をさせて頂いたのち、フランチェスカ嬢とお会いする事は可能でしょうか?」
「そうだな……女性ならば問題はないだろう。だがたとえ従者であっても、アレに男が近づく事はできん」
「え? まさか軟禁されているのですか?」
「いや自由はあるのだが、自分以外の男と会わせる事を極端に嫌っておるのだ」
まがりなりにも王太子が妃候補の行動を制限するとは……随分と器が小さく見える。
だがそれでもラグナとフランチェスカを会わせなければいけないので、どんな条件だろうと会えるのならば会う必要がある。
「ワシが手紙を書こう。これがあれば当日は無理でも、1、2日中には会えるはずだ」
「ありがとうございます。ホフマン将軍と会えたことは、最も光栄な事ですわ」
手紙を持って王宮へ向かう。
流石にホフマン大公の手紙は効果てきめんで、ほぼ素通りで王宮内に入る事が出来た。
その後は問題なく国王と面会し、ようやくフランチェスカとの面談にこぎつける所まで来たのだが……
「え? 会えないのですか?」
「はい。フランチェスカ様は現在狩りに出かけておいでです。戻ってくるまでに数日はかかると思われます」
侍女にそう言われたのだが、キャロラインは少し違和感を感じている。
以前聞いた話だと、学園を卒業後は1年間は国で花嫁修業(婿探し)をして、その後は特に予定は決まっていなかったはず。
とはいえ大公の娘として、冒険者になれないのがわかっていたため、在学中に冒険者を楽しんだのだ。
それが狩り? 黒太子ならいざ知らず、貴族の娘が狩りになど行くはずがないのだ。
「……わかりました。しばらく滞在しますので、戻ってきたら連絡をください」
「また待たされてるわね」
「キリアム法王の時と同じですね」
「ですから私が調査に行ったわけでございますね」
「法王の時は10日は待たされましたが……」
「なんでぇなんでぇ、会えないなら会えないって言えよな~」
「で、でも、どうして会わせたくないのかな?」
6人の女性たちが高級宿でノンビリして3日が過ぎた。
こうなる事を見越してルルナラが調査を行っていたのだが、何ともまぁ面白くもない内容だったようだ。
「皆さんの体は、俺がしっかりとケアいたしますからね」
ラグナはルルナラのマッサージをしていた。
従者として必要かどうかはさて置いて、昔はよくティナのマッサージをしていたようだ。
なのでかなり手慣れている。
「あ、ラグナ様、そこ、そこでございます。はい、そしてこう、胸をギュッと掴んで」
「ストーップ! ルルナラさん! どうしていつも直ぐにエッチな事をしようとするんですか!」
ティナに止められて、ラグナはマッサージの手を止めた。
かなり残念そうだが、ティナに睨まれ慌てて顔を逸らす。
「どうせ夜になったら全員でするんだろ? 少しくらいお手つきしても構わねーんじゃね?」
「ダメですガッコウさん! 抜け駆けは絶対にダメ!」
夜においてはかなりの劣等感を持っているティナ。
なので少しでも自分との回数を増やしたく、他の人との回数は減らしたいようだ。
「今晩は別荘に乗り込むから、全員でするのは明日の夜、フランチェスカを含めてかしらね」
フランチェスカはエリクセン黒太子の別荘に居るらしく、少々手荒な方法で婚姻関係を結ぼうとしているようだ。
ヤクシ、ガッコウ、シャンディラは魔道車の定員に余裕があるため、一緒に着いて行く様だ。
「次はダルアートン国とメナストーン国ね」
ダルアートン国はフランチェスカが、メナストーン国にはミュゼウスがいるため、そちらの回収に向かうようだ。
ダルアートン国へは魔道車で約3日、道さえ整備されていれば2日で行けるのだが、道など土を踏み固められただけの物だ。
とはいえ予定通りに到着し、その足でフランチェスカが居るはずのホフマン大公の屋敷へと向かう。
4女傑の1人が訪ねて来た! と屋敷はてんやわんやだが、大公邸だけあって対応は早かった。
「お待たせいたしました、将軍が応接室においでです。ご案内いたしますので、こちらへどうぞ」
白髪の執事の後をついて行くのだが、身分・服装がバラバラだ。
キャロラインがいなければ間違いなく門前払いされただろう。
「こちらへどうぞ」
両開きの扉を執事と、控えていた従者によって開かれると、応接室には2人の人物が待っていた。
1人はホフマン大公、もう1人はその夫人だろう。
肝心のフランチェスカの姿が無い。
「ようこそいらしたキャロライン姫。お会いするのは初めてだったかな?」
「お目にかかれて光栄です閣下。お会いするのは初めてでございますわ」
他のメンバーも挨拶をするのだが、ラグナ以外は慣れているのか堂々としていた。
ホフマン大公の勧めでフカフカなソファーに座ると、最初は当たり障りのない会話から始まったのだが、ホフマン大公が探りを入れて来た。
「4女傑がお1人で旅をするとなると、国内は随分と安定しているのでしょうな」
「ええお陰様で。4女傑が居なくとも、部下がしっかりしておりますので安心して旅行を楽しめます」
だがキャロラインは腹の探り合いをしに来たわけではないので、切りのいい所で本題に入る。
「こちらにフランチェスカ嬢がいらっしゃいますわよね? 魔法の腕がかなりの物と伺っております。ぜひとも魔法のお話をしたいと思っておりますの」
「ほぅ、4女傑の中でも魔法に長けたキャロライン姫の目に留まるとは、アイツもなかなかやるものだ」
そう言ってホフマン大公は紅茶を1口すすり、一息ついて言葉を続ける。
「だがアレはここには居ないのだ」
「どちらかにお出かけ中ですか?」
「いや、アレはエリクセン黒太子のお気に入りでな、今は王宮に住んでおるのだ」
「え? それではエリクセン王子と婚姻を?」
「黒太子はそのつもりなのだが……アレは何が気に入らないのか、首を縦に振らんのだ」
何やらひと騒動ありそうだが、これはフランチェスカに会うのは簡単ではないかもしれない。
仕方がないので、ここは王族としての力を行使するようだ。
「それでは陛下へご挨拶をさせて頂いたのち、フランチェスカ嬢とお会いする事は可能でしょうか?」
「そうだな……女性ならば問題はないだろう。だがたとえ従者であっても、アレに男が近づく事はできん」
「え? まさか軟禁されているのですか?」
「いや自由はあるのだが、自分以外の男と会わせる事を極端に嫌っておるのだ」
まがりなりにも王太子が妃候補の行動を制限するとは……随分と器が小さく見える。
だがそれでもラグナとフランチェスカを会わせなければいけないので、どんな条件だろうと会えるのならば会う必要がある。
「ワシが手紙を書こう。これがあれば当日は無理でも、1、2日中には会えるはずだ」
「ありがとうございます。ホフマン将軍と会えたことは、最も光栄な事ですわ」
手紙を持って王宮へ向かう。
流石にホフマン大公の手紙は効果てきめんで、ほぼ素通りで王宮内に入る事が出来た。
その後は問題なく国王と面会し、ようやくフランチェスカとの面談にこぎつける所まで来たのだが……
「え? 会えないのですか?」
「はい。フランチェスカ様は現在狩りに出かけておいでです。戻ってくるまでに数日はかかると思われます」
侍女にそう言われたのだが、キャロラインは少し違和感を感じている。
以前聞いた話だと、学園を卒業後は1年間は国で花嫁修業(婿探し)をして、その後は特に予定は決まっていなかったはず。
とはいえ大公の娘として、冒険者になれないのがわかっていたため、在学中に冒険者を楽しんだのだ。
それが狩り? 黒太子ならいざ知らず、貴族の娘が狩りになど行くはずがないのだ。
「……わかりました。しばらく滞在しますので、戻ってきたら連絡をください」
「また待たされてるわね」
「キリアム法王の時と同じですね」
「ですから私が調査に行ったわけでございますね」
「法王の時は10日は待たされましたが……」
「なんでぇなんでぇ、会えないなら会えないって言えよな~」
「で、でも、どうして会わせたくないのかな?」
6人の女性たちが高級宿でノンビリして3日が過ぎた。
こうなる事を見越してルルナラが調査を行っていたのだが、何ともまぁ面白くもない内容だったようだ。
「皆さんの体は、俺がしっかりとケアいたしますからね」
ラグナはルルナラのマッサージをしていた。
従者として必要かどうかはさて置いて、昔はよくティナのマッサージをしていたようだ。
なのでかなり手慣れている。
「あ、ラグナ様、そこ、そこでございます。はい、そしてこう、胸をギュッと掴んで」
「ストーップ! ルルナラさん! どうしていつも直ぐにエッチな事をしようとするんですか!」
ティナに止められて、ラグナはマッサージの手を止めた。
かなり残念そうだが、ティナに睨まれ慌てて顔を逸らす。
「どうせ夜になったら全員でするんだろ? 少しくらいお手つきしても構わねーんじゃね?」
「ダメですガッコウさん! 抜け駆けは絶対にダメ!」
夜においてはかなりの劣等感を持っているティナ。
なので少しでも自分との回数を増やしたく、他の人との回数は減らしたいようだ。
「今晩は別荘に乗り込むから、全員でするのは明日の夜、フランチェスカを含めてかしらね」
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