ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第7章 改変された世界

第350話 前々世の帰宅

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「私は藤原あいか、お相手願えるかしら」

 その少女は手に持った木刀を、慣れた手つきでクルリと1回転させて修斗に向ける。
 黒縁メガネ、肩にかからない黒髪短髪。
 日本の女子高生らしく優しい顔つきをしているが、そのたたずまいは見る者が見ればただものではい事がわかる。制服姿が中々に可愛い。
 そして少女と目が合った瞬間、頭痛が始まった。

「がっ! これは……そうかお前か……アイカ」

「クゥゥゥ!! なに? 一体何をしたの……!」

 アイカは木刀を落とし、頭を押さえてうずくまる。
 修斗は頭を押さえながらアイカに近づき、そっと頭を撫でた。

「やっと見つけたぞアイカ」

「う……あれ? シュウト君? あれぇ? なんで私は学校に居るの?」

「それは俺にもわからない。こんな事をした奴を見つけ出して、最大級の後悔させてやるがな」

 アイカの手を持って立ち上がらせると、アイカはそのまま修斗の胸に手を当てて顔をうずめた。
 
「はぁ~……シュウト君だ、久しぶりのシュウト君だ」

「なんだ? 随分と甘えん坊になったな」

 そう言いながら修斗はアイカの背中に手を回し、力強く抱きしめた。

「しゅ、シュウト君だって甘えん坊さんになってるよ? んっ!」

 修斗を見上げたアイカの唇を奪うと、周囲から悲鳴のような声が上がる。

「あ、あいかさんがぁ!」
「藤原、藤原ぁ~!」
「きゃぁ! あのかたの恋人だったの!?」

 そしてそれを見て1人の女性がツカツカと早足で近づいてきた。

「は、離れなさーい! 藤原さん! 学校内でハレンチな行為はいけませんよ!」

 るり子女教師が間に割って入ろうとするが、残念ながら力の差があり過ぎて引き離せない。
 意地になって2人を引き離そうとするが、その手を修斗が掴む。

「るり、寂しいならお前も入れ」

 るり子も一緒に抱きしめると、るり子は素直に抱きしめられた。
 生徒と教師が1人の男に抱きしめられるという学校ではあり得ない状況を前に、野次馬たちはポカンと口を開けて眺める事しか出来なかった。

「シュウト君、向こうに帰れるの?」

「ああ問題ない。戻る手段は考えて来た」

「え? 修斗君はどこかに帰ってしまうの?」

「俺はこの世界の人間じゃないからな、元の世界にアイカと一緒に戻る」

 修斗が居なくなると聞いて目の前が真っ暗になったのか、るり子はクタリと力が抜けて倒れてしまう。
 何とか修斗とアイカで受け止めたが、放っておくわけにもいかず、修斗が抱きかかえた。

「どうするの? 今すぐ戻る? 出来れば親にお別れだけ言いたいんだけど」

「別れか……そうだな、俺も1度親に会ってみるか」

「じゃ、じゃあ一緒にいこう? 家が近いから私の家から行く?」

 そう言いながら眼鏡をはずして胸ポケットにしまうアイカ。
 能力が回復したため、眼鏡が必要なくなったのだ。

「じゃあアイカの家から行くか。おい起きろ、アイカの家に行くぞ」

 るり子が意識を戻すと自分で立たせ、車の運転をさせた。
 アイカの家は車で5分ほどの距離にあり、父親は居ないが母親が家事をしていた。

「シュウト君、こっちだよ」

 実は修斗は一緒に行くとはいっても家に入るつもりは無く、外で待っているつもりだった。
 なので手を引かれて少々戸惑っていた。

「まるでお前を嫁に貰いに行くみたいだな」

「えへへ~、バレた?」

 つつがなく挨拶が終わったが、アイカはもう家には戻ってこれないと説明すると、母親は猛反発を始めた。
 それもそうだろう、もう二度と娘に会えないなんて、了承する親が居るはずがない。

 しかしアイカは親の言葉に耳を貸さず、修斗と共に家を後にした。

「良かったのか? 喧嘩別れみたいになってたぞ」

「いいよ。どうせOKがもらえるはずが無いし、無駄な時間を費やす必要もないし」

 異世界に行くからもう戻ってこれません、と言ってハイハイと理解する親が居るはずがない。
 なので一応は挨拶をして、警察沙汰にならないように釘を刺しに戻っただけだった。
 次は修斗の家へと向かうのだが、どうやら随分と距離があるらしく、高速道路を使って数時間もかかる距離のようだ。

「シュウト君のご両親はどんな人だったの?」

「さあな。ここにいる時も1年ほどはまともに会話をしていないから、忘れてしまったな」

「修斗君は別の世界の人ではないの?」

「前々世はこの世界の人間だ。死んで別の世界に転生した」

「えっと、昔テレビでよくやってた『前世はカッパです!』みたいな奴かしら?」

「それは知らないが、子供の頃は前世の記憶の残っている子供が多いとか言われていたな」

「逆にそれを知らないわ」

 女教師は20台中ごろのはずだが、随分と古い話を知っているようだ。
 途中で何回か休憩を取り、修斗の家に着いたのは日が暮れてからだった。
 車から降りて家をしみじみと眺める修斗。

「懐かしいとは思うが、感慨深かんがいぶかいとか、そういった感情は無いな」

「ご両親とか兄弟とかに会いたいとかは?」

「アイカは向こうに居る時、会いたいと思ったか?」

「ん~、修斗君と一緒にザナドゥに行ってからは思わなかったかな」

「同じような感じだろうな。一応……引っ越してはいないようだ」

 表札を見ると『伊瀬』と書かれていた。
 伊瀬修斗いせしゅうとが数年ぶりに実家の玄関を開けた。
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