お一人様冒険記(6人パーティー)~ゲームシステムに縛られてるけど嫁を見つけてハッピーになって見せる!~

内海

文字の大きさ
12 / 71

11.上を向いて歩こう

しおりを挟む
 翌朝、ゴブリンの洞窟を塞ぐべくカモフラージュに使われていた岩を使う事にした。入り口を少し入ったところに沢山放り込んで、後はとにかく入り口を破壊しまくった。
 一部分だけ土砂崩れがあったような感じになり、洞窟の中に入るのは困難な状態になったのでもう使えないだろう。

「よし、じゃあ帰るとするか」

 アズベルの掛け声で全員が馬に乗り街への帰路に就いた。

― ― ― ― ―

 その日の夜には、街へ到着した。

 今知ったけど、この街の名前はエリクセンというらしい。
 一番最初に入った街はアグレス、昼からの護衛で向かったのがバグレス。
 距離でいうとエリクセンからアグレスが馬車で三日、アグレスからバグレスは馬車で半日だ。

 ギルドへ報告に行くと、受付の女性は相変わらず元気だった。

「おっかえりなさ~い!随分早かったね。まさか空振りって事はないよね?」

「空振りどころか何回も死にそうになったぜ」

「え!ゴブリンだよね!?」

「キングやらウォーリアーやらシャーマンやら、しかも罠にはめられた」

 受付の女性の顔色が変わる。

「ちょっと詳しく聞きたいから二階に来て」

 混み入った話がある時は二階に行くのが定番らしい。アセリアの居場所を聞きたいのに……



「ギルマスが来るから座って待ってて。お茶いれてくる」

 二階の部屋に案内されると、バグレスで入った部屋とほぼ同じ作りだった。
 各々がソファーに腰かけるとアズベルに訊ねた。

「アセリアの居場所はどこなんだ?」

「ああ、飯屋に住み込みで働いてるよ。今日は報告で行けそうにないな」

 随分と疲れているようで、半分寝るような格好でソファーに座っている。

「じゃあ明日……」

「明日は彼女休みだよ」

 ちくしょう。

「明日……案内するから朝飯をそこで食おう」

「わかった」

 会えるのは明後日か。
 ああ、ゴフリンの駆除が一日で終わったからか。
 予定では明日帰ってくるはずだったから丁度良かったんだな。

 ギルドマスターが部屋に入ってきた。
 白髪混じりのどこにでも居そうな普通のおじさんが現れたから説明を始めたが、終わらない……細かい……延々えんえんと一から十まで説明させられた……疲れた。



 翌朝アズベルと合流してアセリアが働いている飯屋で朝食を食べた。
 店はかなり大きく朝でも二十人以上の客が入っており、メニューを見た感じだとファミレスみたいな印象だった。
 朝昼あさひるのメニューは同じで、夜になると変わるらしい。

 それにしてもアズベルは随分彼女の事について詳しいな、休みの日まで知ってるし……まさか……まさか!お兄さん!?と思ったらシフト表が貼ってあった。
 アズベルと別れて、俺はしずかにキャラチェンジする事にした。

― ― ―

 この街に来た時に鍛冶屋さんは一通り見ましたから目星はついています。
 後は快く炉を貸してくれればいいのですが……
 こちらのお店は炉が三つあり、二つは職人さんが使っていますが一つは空いているようです。

「おはようございます」

 お店に入ると親方さんらしき人が手を止めて私を睨みます。

「何の用だ。修理依頼か?」

 親方さんは髭が凄くて顔の輪郭が分かりません。小柄でずんぐりしていますが筋肉質のようです。

「修理依頼ではないのですが、こちらの炉を貸していただけないでしょうか?」

 親方さんは空いている炉と私を見ました。

「あんた名前は」

「申し遅れました、しずかといいます」

「そうか、壊さなければ好きにしていいぞ」

「ありがとうございます」

 いい人そうでよかったです。ラマから道具を出してユグドラの装備の点検をしましょう。

 うーん、バトルアックスが随分と傷んでいますね。
 オーガ・ゴブリンと戦いましたしオーガとは力比べまでしましたから。
 小型の斧・ハチェットは刃は研ぐだけで大丈夫ですが、木製の柄が傷だらけです。
 ゴブリンの剣を受けた時の傷が深いですね。

 鎧関係は矢を受けたらしいへこみが数か所ありますが、表面が薄く削れているだけなので簡単な補修で大丈夫でしょう。
 さて、バトルアックスは熱して叩き直しましょう。
 多少の変形もありますから。

 炉で真っ赤に熱してへこみや歪みを丁寧に叩いて直し、刃は欠けている場所を叩いて伸ばし、形を整えます。
 やっぱり石の棍棒を斬ったり洞窟を塞ぐのに岩肌を叩きまくったのが影響していますね。
 もっと丁寧に使ってもらわないと……私ですが。

 バトルアックスとハチェットは研ぎまで終わり、鎧も補修が出来たので完了です。

 問題はハチェットです。
 このまま木の柄を使っていると、そのうち折れてしまいます。
 柄を金属にしましょうか?でもハチェットは軽くて取り回しが良いのが利点であって……うーん。

 ああ、要は表面が削れなければいいのです。
 じゃあ木製の柄に薄い金属板を巻けばいいのではないでしょうか。

 早速新しい木の棒を削って柄を作り、手で持つ部分以外を少し細くします。
 細い所に巻く固い金属板を熱して叩いて巻きマキまき……
 これは中々難しいですね。

 やっと、かなり苦労して隙間なく巻けました。
 みっともない隙間とはおさらばです。
 これに刃をはめ込んでっと。
 少し振り回してみましたが、少し重いかもしれませんがユグドラの力なら問題ないでしょう、完了です。

「ふぅ」

 ハチェットを台に置くと親方さんに話しかけられました。

「いい腕をしているな。ウチで働かないか?」

 まさかのスカウトです。

「すみません、まだしばらくは旅を続けたいので……」

「そうか。ならこの街にいる時は炉を使っていい」

 そういって親方さんは仕事に戻りました。自分の腕を認めてもらえてとても嬉しいです。



 さあ今日は色々と買い出しをしないといけません。

 昨日のパーティーの時は仲間を助ける為に戦線から離れてしまいました。
 私の戦力的にそれはいけません。
 常に前線に立っているのが理想です。

 ですが回復が追いつかない時は必ず出てくるでしょう。
 なので回復ポーションを作ります。

 あらかじめ全員に数本渡しておくか回復役に渡しておくかはその時に考えますが、有れば有るだけ生存率は上がるでしょう。
 後はこの世界の素材の確認です。
 金属や繊維の質はもちろん加工の仕方も見ておかないと、テレポートリングの様な古文書レベルの物を人に渡しかねません。

 必要な材料を買いながら仕立て屋さんや金属製品を見て回ります。
 繊維の質や加工自体は私が作ったものと大きく差は無いようです。

 商店で鉄のインゴットを見せてもらいましたが、あまり質は良くありません。
 鉄鉱石自体が悪いのか加工の仕方が悪いのか……暇を見て砂鉄を収集した方が良いかもしれないですね。

 一番気になったのが木材加工です。鉄製品の質が悪いので木材の加工も荒いです。
 表面を磨いて誤魔化していますが、良く見るとあちこちが歪んでいます。

 うーん、これは手持ちの材料は当分の間自分専用ですね。
 冒険者さん達の修理に少し使ってしまいましたが、これからは鉄は現地調達にしましょう。

 一通り買い物や調べ物が終わりお店で服を見ていると、アセリアさんを発見してしまいました。 
 お店の前の通りをうつむきながら歩いていて元気がありません。
 声をかけたいですが、しずかでは赤の他人です。

 なにがあったのでしょうか……嫌なことがあったのでしょうか失敗したのでしょうか落とし物をしたのでしょうか。
 声を掛けられないのがとてももどかしい。しずかで仲良くなれないでしょうか。
 後をつけ回す訳にもいかず、私はアセリアさんの後姿をただ眺めていました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...