お一人様冒険記(6人パーティー)~ゲームシステムに縛られてるけど嫁を見つけてハッピーになって見せる!~

内海

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13.嫁、爆誕!!!

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「まさか全部違う物でしたか!?」

「いえ半分は依頼の物です」

「じゃあ五十点では?」

 はぁ~と深いため息をつかれた。

「いいですか?こういった依頼は専門家を雇うんです」

 ???

「そして専門家をあなたが護衛するんです」

 あ。

「そうすれば効率よく沢山集められて追加報酬も出てウッハウハになれるんです」

 仮にもギルドの受付嬢がウッハウハなんて言っていいのだろうか。

「しかも困ったことに、モンスターの素材だけは一級品が揃っているときたもんです」

 え、それも困るの?

「モンスターは大量に出現しているから有り余っているんですよねぇ」

 もう勘弁してつかーさい。

「今日の分はお支払いしますが、次回はしっかりお願いしますよ」

「ひゃい」



 ギルドを出てアセリアさんに会いに飯屋へと向かう。
 今の俺には癒しが必要だ。
 店に入ると沢山の人でにぎわっているが、カウンター席は空いているようだ。

「いらっしゃいませー!お好きな席へどうぞ!」

 カウンター席は入り口から一番遠いのでアセリアさんを探す時間は十分にあった。
 ちょっと寄り道してアセリアさんに声をかけた。

「こんばんは、アセリアさん」

「はい、いらっしゃいませ!」

 おや?後ろから声をかけたのに全然驚かなかったぞ?ひょっとしてよくある事なのかな?

「それでは席へご案内しますね」

 カウンター席に案内されて椅子にすわった。

「また来ちゃいました」

「ありがとうございます。ユグドラさんが入ってくるのが見えたので、声をかけてくれるかな?って待ってました」

 期待に応える男、それが僕です。そしてニヤニヤが止まらない。

「私は入って暫くアセリアさんを探してしまいました」

「広いお店ですから大変だったでしょう?」

「んー、でもすぐに見つけられてホッとしています」

「……嬉しいです」

 今度はトレイで顔を隠さず、下を向いて顔が赤くなっている。
 ああ、この瞬間よ永遠なれ!

「うぉっほん!ご注文は?」

 店主の咳払いが聞こえた。今日何回目だろう。

「め、メニューはこちらになります!」

 慌ててアセリアさんがメニューを渡してくれた。

「今日のお勧めはこちらとこちらの二つになります」

 そういって二つのメニューを指さした。手がきれい。

「じゃあ二つともください」

「はい。では少々おまちください」

 ぺこりと会釈して厨房へ向かった。
 は~、癒される。

 そういえば俺は何を注文したんだ?メニューを見ると獣肉けものにくのステーキとソーセージの盛り合わせらしい。
 夜はセットメニューではなく単品になるが食べきれない量じゃないだろう。
 肉ばっかりだけど。

 改めて店内を見回すと店員の数が多い。
 十人以上はいるかな?客と親しそうに話している店員も何人かいる。
 なんだよー店長、俺にだけ邪魔すんなよー。

「うぉっほん!」

 咳払いと同時に店員が慌てて仕事に戻っていく。
 あ、俺だけじゃなかったのね。

「お待たせしました!ステーキとソーセージの盛り合わせです!」

 左後ろから声がして大きな皿が三つ置かれた。
 ステーキと山盛りソーセージの大皿と、さらに野菜が山盛りの大皿だ。
 予想に反してステーキがでかい。
 俺の両手を並べたくらいの大きさで厚さは二~三センチくらいじゃないかな。

「でっか!」

 思わず声に出てしまった。

「はい!最近はお肉が安いので特大になっております!お野菜もそれに見合った量となっております」

 アセリアさんが楽しそうに説明をしている。どうも俺の反応が良くて楽しかったようだ。

「これを見たお客さんはみんな同じ反応をするので楽しくて楽しくて」

 でもその笑顔がかわいい!

「食べちゃいたい」

「冷めないうちにどうぞ!」

 ハッ!俺いま声に出てた!アセリアさんが勘違いしてくれてよかった。
 アセリアさんは他の客の対応に入ったので食べ始めた。
 ナイフとフォークを駆使して解体作業に入るぜ。

 暫くはよかった。
 しかし時間とともに苦しくなってきた。これは……手強いな。
 野菜とソーセージで口直しをして調味料で味を変え、なんとかステーキの残りは三分の一を切った。

 口直しの野菜とソーセージは無くなりひたすら肉を口に運ぶ。
 野菜もソーセージも山盛りだったのが無くなるって凄くない?
 そしてやっと、最後の一口を食べ終わった。
 間違いなくこの世界に来て一番の強敵だったな。

「やるじゃねーか兄ちゃん。ただのアセリア目的のナンパ男じゃなかったんだな」

 この声は店長か?そういえば声は何度か聞いたけど姿を見るのは初めてだ。
 顔は丸く腹のでっぱったおっちゃんだった。
 何か言葉を返そうとするが息苦しくて声が出ない。

「アセリア、飲み物を出してやれ」

「はーい、これをどうぞ」

 後ろで待っていたらしいアセリアさんは、ジョッキサイズの木製のコップを置いてくれた。

「私特製のおなかの働きが良くなる薬草入りお茶です。

 薬草?
 腹が一杯で飲めるのか?と思い一口飲むと意外にも軽く飲み込めた。

「飲みやすいですね。薬草が入っているんですか?」

「はい!以前お薬屋さんで働いていた事があって、その時色々と覚えたんです」

「凄いですね」

 薬草……薬屋さん……専門家!?

「アセリアさん、付き合ってください!」

 アセリアさんの両手を握って真剣にお願いした。

「ええ!?そんないきなり……でも、はいお付き合いします」

「うぉっほんうぉっほん!!!」

 店長どうしたんだろう。他の店員さんが雑談してるのかな?あ!俺がアセリアさんの手を握っているからか!うわー、アセリアさんの顔が真っ赤だ。

 手を離して今日の話をした。

「よかった。実は今日素材集めの仕事を受けたんですが全然だめで、そういう時は詳しい人と行くもんだと怒られてしまいまして」

「素材?仕事?」

「ええ、モンスターの数が増えたらしく、薬草などの素材が不足しているそうです。ですが私には知識が無く……」

「う、ぅぉっほん……」

「そ、そうでしたかー、それはたいへんでしたねー」

「なのでご都合の付く日を教えてください。その時にお願いします」

「あー、こんどのおやすみはみっかごですねー」

「ではその日の朝お迎えに来ます。あ、ここで朝食を頂いてからになりますかね」

「はいー、それでけっこうですー」

 やった!アセリアさんと一日一緒に居られる!ここここれってデートになるのかな?
 楽しみだな~待ち遠しいな~。

「ではおかいけー二しるば四かっぱになりますー」

 ん?ああ店が混んでるからな。食べ終わったら出ないとね。二S四Cっと。

「ありがとうございますまたどーぞー」

「それじゃあまた来ます!」

 三日後が楽しみだ!



 それから暫くアセリアさんが冷たかった。
 一体何があったんだろう。



 三日後になり、お店でアセリアさんと一緒に朝食を食べている。
 二人で食べるのは初めてじゃないか?

 アセリアさんは制服とも以前着ていた服とも違う、長ズボンと少し厚手の上着を羽織って大きなリュックを持っている。
 専門家っぽい!

 朝食が終わり、準備も出来ているので早速出発する事になった。
 一頭の馬で二人乗りを期待していたけど、近場なら馬で走れるという事で二頭で森へと向かう。
 ちくしょう。

 道中も森に着いてからも会話がない。
 必要最低限の事しか話しをしていない。
 もっとお話ししたいな……。

 それにしてもアセリアさんは凄い。
 俺が見分けがつかなかった薬草を簡単に判別している。
 石を砕いたものやコケなんて俺にはさっぱりだったから。

 太陽が真上に差し掛かった。
 昼食をとるために木陰に革製の敷物を広げて横に並んで腰をおろす。
 俺は二人分の弁当を用意していたが、アセリアさんも二人分用意してくれていた。
 てっ……手作り弁当か!?

「四人分ありますね。私のはお店で買ったものですが……」

「……自分で作りました。ですのでこちらを食べていただけると……う、嬉しいです」

「ぜひ!」

 そんなもん問答無用でいただきますとも!
 大きなリュックから出された弁当の数々。
 おお、凄く沢山あるぞ。

「前の特大ステーキと大盛りソーセージの時、ステーキだけなら平気で食べちゃいそうな勢いだったので沢山作りました。足りればいいのですが」

「どれも美味しそうですし、これだけあれば大丈夫だと思います」

 魚や煮物、唐揚げにサイコロステーキ。サラダもあるし木の実?もフルーツもある。
 お嫁さんにしたい。

「いただきます」

「ど、どうぞ!」

 なぜかアセリアさんの方が気合いが入っている。 
 どれも美味しくて手が止まらない。

「美味しいです。この木の実な何ですか?」

 アセリアさんはホッとした様で嬉しそうに説明してくれた。

「これはククルの実で、この時期に食べると一年健康でいられるそうです」

「じゃあ毎年ククルの実を食べればずっと健康でいられますね」

「そうですね。じゃあまた来年も食べましょう」

 その時は一緒に食べたいな。できる事なら毎年一緒に。
 じっと俺の顔を見つめているアセリアさん。ん?……ひょっとして、俺の返答待ちなのか!?
 フォークを置いてアセリアさんの顔を見る。

「今日はやっとアセリアさんの笑顔が見れて良かったです」

「え?」

「私は、自分でいうのも何ですが鈍感です」

「そう、ですか」

「なのでここ数日間、アセリアさんのご機嫌が悪かったので嫌われたと思っていました」

「嫌ってなんていません!」

「よかった。今日になって一緒に来てくれなかったらどうしようかとずっと悩んでいて、でもアセリアさんを見ただけで凄く嬉しくて」

 ああ、なにを言っているんだ俺は。
 こんな取り留めの無い話しをアセリアさんは真剣に聞いてくれている。

「あなたに嫌われたくなくて、なんとか笑顔を見たくて、お話ししたくて、どうしたらずっと一緒に居られるのか考えて。結局考え着く所は同じで」

 もう心は決まっている。今が一番気合いを入れる時だ。

「好きですアセリアさん。あなたと一緒に毎年ククルの実を食べたいです」

 いつの間にかアセリアさんは泣いていた。両手で口をおさえて俺を見つめている。

「私も……大好きです!」

 受け入れて、くれた。
 アセリアさんは俺に抱き付いて泣いている。

「ずっと一緒に、来年も再来年もずっと一緒にたべましょう」





 アセリアさんが泣き止むまで抱きしめ、顔を上げた時に俺と見つめ合ってキスをした。
 互いを貪るようなキスが終わると俺の腹が鳴った。

「あ、お昼の途中でした」

「まだ沢山ありますから、お好きなだけどうぞ」

 食べながら見つめ合いニヤけ、また食べて見つめ合ってニヤけ。何回か繰り返して思い出す。

「そういえばどうして最近は機嫌が悪かったんですか?」

「その前に一ついいですか?」

「? はいなんでしょう」

「その丁寧なしゃべり方はやめてください。す、好きな人なのに距離を感じます」

 そういえばアズベルにも言われたな。

「で、では。えっと、どうして機嫌が悪かったの?」

 微笑んでくれたと思ったらふてくされた。

「え?なんで?なんでまた機嫌が悪くなったの!?」

「ユグドラさんが悪いんです」

「俺?」

「そうです。変な期待をさせるからです」

 ???期待させたっけ。

「あ、その顔は本当に分かっていませんね?」

「ご、ごめんなさい」

「仕方がないから許してあげます」

「あれ、教えてくれないの?」

「今幸せだからいいんです」

「そういうもの?」

「そういうものです」

「じゃあもう一つ」

「なんですか?」

「アセリアさんも丁寧なしゃべり方はやめてほしい」

「ア・セ・リ・ア」

「……アセリアさん?」

「だからさんは要りませんってば!」

「う、うん。アセリアもしゃべり方を変えて?」

「じゃあそうする」

「俺の事もさん抜きで」

「それはダメ。年上だもん」

「えー」

「じゃあユーさん」

「ユウ?」

「ユウじゃなくってユー!」

「一緒じゃないか?」

「だから私はリアです」

「アセリアのリア?」

「うん」

「じゃあリア」

「ユーさん」

 なんだこのやり取り!!!こちょばゆい!くっだらないと思ってたラブストーリーの展開がこんなに楽しいやり取りだったとは!
 しかもユーって昔の名前の呼ばれ方じゃないか。
 あ、まずい、なんかこみ上げてきた。



 その日はウキウキな気分で素材集めをした。
 もうピッタリくっついて仕事してましたよはっはっは。
 荷物で一杯になったバッグを片方の馬に全部乗せてリアが乗れないようにした。
 俺の前に座ってもらいます!

 と思ったらリアもそのつもりだったらしい。息がぴったりだな。
 馬に乗るとリアの体は俺の腕の中にすっぽり収まった。
 目の前にリアの頭がある。臭いを嗅いでみる。いい香りがする~。

「あ!汗かいてるからダメ!」

 頭を両手で抑えて振り返る。

「でもいい香りがした」

「じゃ、じゃあいい」

 バカップル!バカップルと呼んで!
 街に入ってそのままギルドへ向かった。
 荷物を運び入れようとしたら、リアが薬草満載のバッグを担ごうとして足が震えている。

「重たいからリアは持たなくていいよ」

「でもユーさんだって疲れてるのに」

「俺はほら、冒険者だから」

「む~ん」

 俺なら軽々運べるからね。リアに力仕事は似合わないぜ。

「おかえりなさいユグドラさん」

「ただいま戻りました。今日は百点貰えると思います」

 受付の女性にバッグを渡して採点をまつ。
 待っている間はリアと一緒に椅子に座り、ギルドに常備されているお茶を飲んでいた。
 採点結果が待ち遠しい。

「お待たせしました。今回は……」

 ドキドキ。

「九十五点です」

 かぁ~~~惜しい!

「五点はなんですか?」

「バッグに詰め込みすぎて下の方の薬草が潰れていました。それが無ければ九十八点です」

「残り二点は?」

「ユーさんとリアさんがイチャついててムカついたからです」

 お茶吹いた。

「随分と仲良くなりましたね~ユ・ウ・さ・ん」

 リアと一緒にこぼしたお茶を拭いたが、ハッ!他の冒険者の目も生暖かい!

「ところでユグドラさん、私の名前を知っていますか?」

 ん?髪が腰より少し長く青みのある銀髪で瞳も青くて短パンはいてる受付の女性……

「あれ?」

「はぁ~そんな事だと思いました。あなたは意中の女性以外は目に入ってませんでしたから。初めましてアニタと言います」

 笑顔なのに凄く不機嫌そうだ!

「ヨ、ヨロシクオネガイシマス、アニタ サン」




 冒険者の冷やかしとアニタさんの不機嫌な笑顔を後にして、夕食を取る事にした。

「晩御飯どうする?」

「んー、コレオプテールだといつも通りだし、お小遣いも沢山あるからちょっと贅沢しましょ?」

 素材集めで追加報酬も出てウッハウハだった俺達の懐は温かかい。
 なのでオサレなお店で優雅なディナーとしゃれこんだ。

「ねえ、いつから俺の事好きだったの?」

 少し薄暗い照明でピアノが演奏されている店の雰囲気はとてもいい。

「おしえてあーげない」

「おしえてよ」

「じゃあユーさんはいつなの?」

「俺?俺はオーガを倒した次の日の朝食の時だよ。前の席にリアが座った時」

「ふーん、じゃあ私の方が先ね」

「それより前って会った事ある?」

「えへへー」

 そんな会話をしながら夜は更けていった。
 リアと別れ自分の宿へ戻ってからハッとした。あれ?俺のあのセリフってプロポーズじゃないか?

 改めて会話を思い出してみたけど、毎年一緒に食べたいとか毎年一緒に食べましょうとかって……でもリアもOKしてくれてるし……

 嫁!爆誕!
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