お一人様冒険記(6人パーティー)~ゲームシステムに縛られてるけど嫁を見つけてハッピーになって見せる!~

内海

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第2章

35.私、冒険者になりたい!

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「ただいま戻りました」

「ユーさん! お帰りなさい! あ、お疲れ様です、ご無事で何よりですうっ!」

 カウンターが邪魔だけど抱き付いた。はぁ~~~……やされる。

「もぅユーさんたら。でも無事でよかった、私も寂しかった」

 頭を撫でてくれた。ああイイ。

「お二人さん、感動の再会はもう少し我慢して頂戴ちょうだい。流石にみんなが動揺しているわよ」

 顔を上げて振り向くと、動揺している冒険者達が目に入った。ああ、まだ諦めていなかった奴らが居たのか。
 でも仕方がない、オネエにやめろと言われたんだからやめておこう。

「おかえりユグドラちゃん」

「ただいま戻りました!」

「報告はディータちゃんから聞いているわ。報酬はディータちゃんに渡したけど、それでよかったのよね?」

「ええ、今回はあいつが居ないとダメでしたからね。たまには美味しい思いをさせないと、ねてしまいますから」

「でも残念ねえ、あんなに良い子なのに、ギルドに入ってくれないだなんて」

「機嫌をそこねなければ、気まぐれで手を貸してくれますよ」

「そうね、嫌われたら元も子もないものね」

 そのままリアと部屋に帰ろうかと思ったけど、やり残した仕事があるから、とその日はギルドの仕事を続けた。
 仕事をするリアかっこいい。 
 仕事が終わってギルド三階の部屋の戻ってきた。



「リア、お土産があるんだ」

「ほんと? なになに?」

 ローブのポケットから指輪を取り出して片膝をつき、リアの左手をとった。

「幸運の指輪、受け取って欲しい」

 薬指にはめるとサイズはピッタリだった。

「ゆ、ユーさんこれって……」

「うん。遅くなったけど、俺と結婚してくれてありがとう」

 大粒の涙をポロポロこぼして喜んでくれた。

「ユーさん、実は私も」

 そういってリアもしゃがむと、俺の薬指に指輪をはめた。

「私を選んでくれてありがとう」

 あ、ダメだ、泣く、俺泣く。ほら泣いた。
 ひとしきり二人で泣き終わると指輪を眺めた。
 二つとも装飾の少ないシンプルなデザインだが、リアがくれたのは銀色で、羽の様な模様が書かれており、俺が渡したのは金色で台座にペガサスが彫られている。

「両方とも羽があるな」

「本当だ。気があうね」



 興奮を抑えて食事を食べに行った帰り道、リアがお願い事をしてきた。

「ねえユーさん、私、冒険者になりたい」

「え、だって冒険は危険だし、リアには俺の帰る所として待っててほしいんだけど」

「うん、それは分かってる。だけどギルドの受付をしていて思ったの。ギルドは受付も冒険者も人手不足で、依頼が全然こなせてないの」

 それは気づいていた。俺に回ってくる依頼は大体が大きな話だが、他にも山の様に依頼が掲示板に張り出されている。特に王都は人口が多いため、雑用もこなす冒険者への依頼は多い。

「それにね、その、一回帰って来てくれたからいいけど、合わせたら十日以上会えなかったから。ユーさんだから大丈夫なのは分かってる。でもこのまま帰ってこないんじゃないかって、もう二度と会えないんじゃないかって、不安になるの……」

 そうか、俺にとっては街に戻ればリアに会える。でもリアからしたら、いつ帰ってくるか分からない俺を、ただ待つしかないのか。

 例えば、例えば俺と一緒に冒険に出るとしてどうする? 俺と一緒に戦うか? 正直接近戦闘で俺についてこれるはずがない。
 なら魔法でサポートしてもらうか? それなら大丈夫だろう。実際問題回復の出来ないキャラもいるし、戦闘キャラ三人、魔法キャラ二人、生産一人だから、魔法を使える人が増えれば、安定した戦闘が出来るんじゃないか?

 そう考えれば、リアの提案は魅力的になってくる。

 だが最大の問題がある。俺の知っている上級冒険者の魔法使いですら、回復魔法は俺より圧倒的に低い。グレートヒールではなく、ヒールしか使っているのを見た事が無い。
 それならポーションを飲んだ方が早いし、ヒールを併用へいようしたとしても、そもそも普通の魔法使いは足手まといになる。

 しかしリアのお願いを聞いてあげたい。仮にヒールしか使えなくても、複数回使えばいいだけだし、ポーションを沢山使ってもらう手もある。

 ダメならダメで諦めてもらえばいいし、上手くいけば冒険が楽になる。
 どっちに転んでも悪い話しじゃない。

「じゃあ魔法、覚えてみる?」

 難しい顔で考え込んでいた俺を見て、ダメだと言われると思っていたのだろう。俺の予想外の答えにとても驚いて、そして喜んでくれた。

「ありがとう! よろしくお願いします!」

「でも明日からだよ? 今日はもう夜だし、その、甘えたいし……」

「え? うん、私も甘えたい」

 当然じゃん? みたいな顔で言われた。いやんリアのエッチ。



 翌日になり冒険者ギルドへ顔を出した。

 昨日リアと話し合って冒険者になる事に決めたが、受付をしたけど完了していない依頼があるから、それを完了させたい、と言うので二~三日受付を続ける事になった。

 俺はというと、初日はしずかで鍛冶仕事をして、ブラスティーに頼まれていた鎧と両手剣を作って渡した。その後で自分用の斧と鎧を新調した。
 新しい斧で手持ちの金属のかたまりアイアンインゴット、鎧や斧の材料になっている物だが、それを斬ってみたら抵抗なく真っ二つになってしまった。

 まじヤヴァイよアダマタイト。

 二日目はギルドの椅子に座ってリアを眺めていた。朝一は冒険者の依頼受付が集中するから、二時間ほどてんてこ舞いだった。
 それが過ぎると少し落ち着いて仕事をしていたのだが、リアが掲示板の依頼書をもって俺の所に来た。

「あの、ユグドラさんにお願いしたい依頼があるのですが……」

 これは仕事モードのリアだ。

「俺向けの依頼?」

「えっと、そういう訳ではないんですが、ずっと残っている依頼があって、ありまして、それをユーさんにお願い、ユグドラさんにお願いできないかと」

「いつも通りにしゃべればいいと思うよ?」

「でも仕事中だし……」

「グレゴリィさんだって普通にしゃべってるじゃない。それにリアに丁寧に話されると違和感がある」

「あーうん、いつも通りにやるね。この二つの依頼なんだけど」

 そういってテーブルに依頼書を二枚並べ、向かいの椅子に座った。

「一年前から残ってる依頼なの」

「はいぃ? それってまだ有効なの?」

「依頼は取り下げられていないから、有効だよ」

「え? なに難しい依頼?」

「難易度的には中堅クラスの冒険者向けかな」

「じゃあ中堅冒険者が受ければいいんじゃないの?」

「実は中堅は数が極端に少ないの。初心者は沢山いて初心者向けの依頼は沢山回るんだけど、中堅クラスになる前に挫折したり、帰ってこなかったりで十分の一以下になっちゃうの」

「そこまで減るの? じゃあ上級・熟練冒険者なんて更に少ないんだね」

「それがね、中堅は大体が冒険者を続けて、経験を積んで上級冒険者になるの。上級・熟練冒険者はずっと続けているから数が多くて」

「砂時計みたいな形になってるのか~」

「そうそう、だから中堅クラス向けの依頼がずっと残っちゃって困ってて」

「どんな依頼なの?」

「一つはイノシシのれ討伐依頼」

「それは初心者向けじゃないの?」

「イノシシのリーダーが百戦錬磨ひゃくせんれんまのイノシシで、皮が鎧みたいに硬くて、普通の刃物は通用しないみたいよ?」

 あー聞いたことがある。縄張り争いなんかでぶつかりまくっていると、外皮が本当の鎧みたいに硬くなるって。なるほど、初心者には手に負えないし熟練者には物足りないな。

「次のは?」

「新しく街道かいどうを作るために森を切り開いてるんだけど、巨大な岩と木があるから除去してほしいって依頼」

迂回うかいできないの?」

「迂回したらさらに大きな岩と木があって……」

 うんうん、良くある話だね。

「てかそれは熟練冒険者でも難しいんじゃない?」

「それも残ってる理由かな」

「なるほど、その二つをやってくればいいんだね?」

「うん。二つの依頼の場所は遠くないけど、ユーさんなら二日間あれば終わると思う」

 ほうほう遠くないとな? 地図を見ると距離的には馬で走れば半日で回ってこれそうな距離だった。依頼を超特急で終わらせたら、今日中に帰ってこれそうな気がするな。

「うんわかった! じゃあ今日中に終わらせて帰ってくる!」

「え? いくらユーさんでも今日中には、ん……」

 しゃべるリアにキスをして、急いで出発した。

「いってきまーす」

「え? いってらっしゃーい!」

 まずはイノシシの群れを退治してやろう。
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