【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ

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家族

60 昔はやらかした

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 ギアナ様から言われた事は。

「俺が来るまで顔を絶対に出すな。はっきり言う、俺の弱点はお前だ、リト。つまりお前が俺の守れる範囲内にいて、しっかり隠れていれば絶対に俺は負けない」

 俺は頷き、ギアナ様のかっこいい所を見たかったが我慢して、馬車の中でジャガイモが入っていた箱の中にすっぽり収まった。

 金属同士の打ち鳴らされる音、男達の怒声。そして怒れる虎の低い咆哮。

「くそっ!こいつ強いぞ!!」
「ええい!数で囲め!」

 聞こえてくる声。

「飛んだ!」
「くそっ!獣人は身が軽い!」

 ぎゃあああ!!絶叫。違うギアナ様の声じゃない!

 いてぇ!いてぇよ!これもギアナ様じゃない!

「雑魚の山賊風情がっ!何十人束になったところで所詮雑魚なんだよっ!!!」

 ……ギアナ様だ……あれ?楽しそう……あれ??

「おらおら!命だけは助けてやるっつってんだ!金目の物は全部もらうからなぁ?アジトまで案内してもらおうかぁ?ああん?」

 あれ……なんか……違わない……?

 確か山道をスピードを出して走っていた俺たちは途中で、山賊に襲われた。そして、俺をジャガイモ箱に隠してギアナ様は単身、山賊の前に立ち塞がった……んだけど、あれ?

「おう、衛兵に引き渡されたくなかったら、金だよ金!あとこの辺から立ち去れ!バチュールの国からくる商人を狙うととんでもないことになって身ぐるみ剥がされるって宣伝しとけ!!」

 ぎ、ギアナ様……どっちが悪党か分かりません!ギアナさまーー!
 俺が色んな意味でドキドキしていると、優しい声が聞こえて来た。

「リト、怪我してないか?」

 ジャガイモ箱の蓋が開いて、にっこり笑うギアナ様の顔が見える。

「俺は大丈夫です!ギアナ様は?!」

 差し伸ばしてくれた手に掴まって、俺は箱からゆっくり出てくる。

「大丈夫だよ。少し返り血はついたかな?」

 金属の小手には汚れがあって、それは血を拭った後のようだった。服にも何か飛び散っているが大した量ではない。

「良かった!」

「心配かけたね」

 俺をぎゅっと抱きしめてくれるギアナ様はいつもと変わらない。

「強いんですね!」

「大事なモノを守ろうとすれば誰だって強くなるだろ?」

「結構楽しそうでしたけど?」

 聞こえてたか、と苦笑された。

「昔は結構色々やらかしたんだよ」



 旅すがら、ギアナ様のヤンチャ時代を聞けてとても楽しかった!

「商人は養父だったオヤジの跡を継いだんだ。虎の獣人の俺より強い人間だったからなぁ。よっぽど強かったぜ、オヤジは」

「良いんですか?大事な商会だったんじゃ……」

 そんな立派な人から受け継いだ店を信頼できるとは言え、人手に渡してしまった……俺のせいで。

「店は所詮店だ。こだわりなんて無かったんだ、俺もオヤジも。商人としてやっていたら出来上がっていただけのものさ」

「そういうもの、ですか?」

「店は所詮箱だ。中身が大事ってことだ」

 ギアナ様のお父様ってどんな凄い人だったんだろう!俺も会ってみたかったなぁ……!

 商隊はどんどん進み、辺りには小麦の畑が広がって来た。国境を越えると、見渡す限りの小麦畑に変わっていった。




 
 
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